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バージョン2.1の新機能

私は素早くアプリをクリックした。


WELCOME BACK!


父親になることを決心したあなた、その新たな旅路を応援します!マニトショッピングアプリのバージョン2.1が提供するさまざまな特典をご覧ください!


新しい家族を迎えるために奮闘しているあなたに!あなたの手が触れるすべての場所に奇跡を! -【新機能をチェック】


もしかしてガブリエルは、このアプリの開発者のスパイだったのだろうか?


それでなければ、どうして私がルカを養子にすることを決心したと知っていたのか。


前に検索してみた時も「アンジェルス」という福祉企業は見つからなかった。


アプリをあちこちクリックしてみた。問題なく動作していた。貯まっていたポイントもそのままだ。


アプリを一度閉じて再度確認してみても、状況は変わらなかった。


勝手に消えたり戻ってきたりするこのアプリを使い続けてもいいのだろうか?


ふと、昨日開発チームの社員が言っていた言葉が頭の中に響いた。


「いや、それが本当ならどれだけいいか。使った分だけポイントがもらえるなら、何を買ってもワンプラスワンってことじゃん?俺だったら一生誰にも言わずに使うね。」


考えてみれば、確かにその通りだった。


一体このアプリがどういう仕組みで提供されているのかは分からないが、配達は正常に処理されていて、アプリが自発的に与えてくれるポイントなのだから、良心がとがめることもなかった。


もしかしたら、変わり者の富豪の趣味かもしれない。


ほら、たまにテレビに出てくるお金持ちって、突飛な一面があるじゃないか。


お金持ちの誰かが善意でハッカーを雇い、私を含む恵まれない人々を助けようとしているのかもしれない。


「……でも、世の中にタダはないって言うし。」


アプリの紹介だけを見ると、子育てに関する福祉の一環としての支援だということだけれど。


なぜ、私にだけ?


「……ああ。」


私だけではないのかもしれない。もしかして心優しい人たちが、「マニト」という名前にふさわしく、秘密の友達のようにひとり親家庭を支援しているのでは?


一体どうしてこんなことが可能なのかは分からないが、そんなことはさておき、今の状況を頭の中で簡単に整理してみた。


一、物を買えば、その分のポイントが貯まる。私が生活費として100ドルを使えば、100ドル分の何かを追加で買えるということ。


二、それはつまり、使える生活費が実質2倍になるということ。


三、上手く消費すれば、働いて生活費を稼ぐよりも、ずっと良い結果を出せるかもしれない。


私はしばらく迷ったが、ついに結論を出した。


「使おう。」


生活費を補うだけでなく、養子縁組の手続きをするための資金も必要だった。これから子どもを育てるにも、もちろん継続的にお金がかかる。


生まれた時から金のスプーンをくわえている人もいれば、宝くじに当たる人もいる。運が良くて何をしても順調にいく人もいるけれど、私はそんな経験をしたことがない。


だから、このアプリは私と子どもに訪れた小さな幸運だと思って、使おう。


出所不明のアプリではあったが、正当な対価を支払って物品を購入する過程は、他の一般的なアプリと変わらなかった。


3年間、福祉の概念として与えられるポイントをひとまず使って、もしも後から返還を求められたら、その時に対応すればいい。


大胆になろう!親切にも向こうから支援してくれると言ってくれているじゃないか。いくら見ても注意事項もなければ、小さな字で書かれた利用規約も存在しない。


ポイントで商品を買って転売でもしない限り、特に問題になることもなさそうだった。


そう決めた私は、さっき見た通知をもう一度開いて、アプリの新機能をチェックした。


あなたの手が触れるすべての場所に奇跡を!


奇跡、か。


……まさか、ポイントが3倍になるとか?


ドキドキしながら「新機能をチェック」ボタンを押した。


Manito Shopping Ver. 2.1では、ポイントで購入した商品が購入者本人に「職人の熟練度」を提供します。


例1)調理器具を購入すると、料理がより上手にできるようになります。


例2)工具を購入すると、物を作ったり修理したりするのがより上手になります。


【TIP】良い道具を使うほど、熟練度が上昇します。もっと優れた腕前を発揮したいなら、厳選された製品だけを集めた【Editor's Pick!】タブをチェックしてください!


【注意】「職人の熟練度」は今後3年間のみ有効です。


「熟練度が上がるだなんて……………」


私は通知を正しく理解するために、何度も説明を読み返した。


つまり、ポイントで購入した物品を使えば、まるでゲーム内のバフでもかかったかのように、何をやってもより良い成果を得られるということだった。


そんなことが可能なわけがないじゃないか……?


これは富豪の領域ではなく、神の領域だ。


使った分だけポイントが貯まるのは信じられないほどの特典だが、不可能なことではなかった。


アプリを作った人の技術力とお金さえあればいい。


でも、何をしても能力値が上がるなんて?私が何をするか知っているとでも?


「そんなことが本当にできたら、まさに奇跡だね…………」


あまりにも突拍子もない話だけれど、それだけに想像の翼を広げるにはうってつけだった。


料理ができない私が、いきなりシェフのように料理を作ったり。


木材を注文して家具を作ったら、市販品よりも優れた物になったりする……そんな想像。


・家具、一度作ってみようかな。損して得取れだし。


それに、私は手先がそこそこ器用だから、使い物にならない物ができることはないだろう。DIYが既製品より安いのは当然のことだし。


ただし、ポイントで工具を買うには、まず本当のお金を使ってポイントを貯めなければならなかった。現在残っているポイントはたったの2ポイントだけだったから。


しばらく悩んだ末、私はまず適度な価格のベビーカーを購入した。


いずれにしても、子どもを連れてアパートを移動しながら仕事をするなら、ベビーカーは必須だろう。


「さて。」


眠っている子どもを一度見て、家の中をぐるりと見回した。まず一番早く手に入れたいのは、ベビーベッドだった。


まだ寝返りも打てないが、赤ちゃんが少しでも動くようになれば、ガードが必要になるだろう。


そうして、嵐のような検索が始まった。


そして、想像を超えるベビーベッドの価格を見て、私は愕然とした。


ベビーベッドを検索すると、一番最初に車の形や雲の形など、さまざまなデザインのベッドが表示されたが、価格は想像を超えていた。


特別なデザインではない普通のベビーベッドですら、思っていたよりも高価だった。


むしろ大人用の一般的なベッドの方がずっと安いくらいだった。


いや、なんでベビーベッドが大人のベッドより高いんだ……。


もちろん、需要が多い一般サイズのベッドの方が相対的に安くなるんだろう。


でも、どう考えても幼児用ベッドは、子どものためにという親心をあまりにも利用した価格設定だと思った。


私ですら、余裕があるなら可愛らしく飾られた素敵なドリームカーベッドを注文したい気持ちが山のようにあったから。


しかし、今の私の状況では、たった3年しか使えない家具に1ヶ月分の給料に相当するお金を払うことはできなかった。


問題は、組み立て式のベビーベッドですら高かったということ。


「うーん……?」


ベビーベッドを作るのってそんなに大変なことなのか?構造自体は単純そうに見えたのに。


そう考えて、もう一度猛烈に検索をしたところ、意外にも一般的なクリブ型ベビーベッドを作るのはかなり難しいということが分かった。


それでも今は、木材でも金属パイプでも、自分の希望通りに裁断して注文できるから、設計図を描いて注文し、組み立てれば何とかなるかもしれない……。


もちろん木工の知識なんて全くないからこそ生まれた、無知ゆえの自信だった。


でもやっぱり、作る能力さえあればDIYの方がずっと安く済むのは確かだった。


それなら、デザインを少しだけシンプルにしてみようか。


「そうだ、できないならできるようにすればいい。」


決意を込めて声に出し、今度は空のノートを一冊取り出して、いくつかスケッチを描き始めた。


万が一のことを考えてあまり高さのない、シンプルだけど頑丈な形にしようと、検索してキャプチャしておいた画像の中から参考になりそうなものを参考にして。


そういえば、キャスター付きの移動型ベッドもあった。


なるほど、キャスターがあればいろいろと便利そうだ。


キッチンで料理をしていても、赤ちゃんを目の届く場所に引き寄せて置けるし、掃除する時にもベッドごと移動できる。


ささっと描いているうちに、なんだか花車を思わせるようなスケッチが完成した。


しばらく眺めてから、本当に車のように片側に引いたり押したりできる取っ手を描き足したら、よりそれらしくなった。


うーん……キャスターを固定する下部には、小さな箱を追加して簡単な収納ができるようにするといいかも。


初めてだからこそ、キャスターは安全に組み立てられる既製品を購入して……。


決済完了。


簡単な設計図に合わせて木材の裁断とサンディングまでしてくれる店で木材を注文し、小さなサイズのラテックスマットも現金で注文した。


ポイントでは、「Editor's Pick!」から工具セットを注文した。


結局、最初に考えていた予算よりもずっと多くのお金を使ってしまったが、最近の家具の価格はそんなものだと言うし、仕方ない。


それに、工具はこれからもずっと使えるから。


……と自分を慰めたものの、やはり少し不安ではあった。


私、無駄遣いなんかしてないよね?うまくできるよね?


なんだか悪いことをしたような気がして、急いで管理人に数日後から働けるとメッセージを送った。


そうだ、使った分だけ稼げばいい。




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