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家出の理由

「で、なんでこんなことをしたんだ?怒らないからゆっくり話してくれ」


 家に帰った俺たちは秋奈を椅子に座らせて俺もその対面に腰かける。


「本当に怒らない?」


「当たり前だ。俺はお前に嘘をつくつもりはない。それになんでこんなことをしたのか純粋に気になるんだ。だから教えてくれ」


 対面に座っている秋奈の綺麗な目を見ながら淡々とそういう。

 純粋に気になる。

 なんでこんな時間に何の連絡もなく外出をしたのか。

 もしかしたら俺に落ち度があったのかもしれない。

 だとしたら俺は今後のためにも理由を聞いておかないといけない。


「えっとね、今日冬真さんが遅くなるって連絡が来たから外で食べることにしたの」


 秋奈は俯き自身の服の裾を強く握りしめながらぽつりぽつりと語り始めた。


「でね、家に帰ろうとしたときに綺麗な女の人と一緒にタクシーに乗る冬真さんが見えたの」


「ああ、あれか」


 どうやら秋奈は俺が万を送ろうとしているところを見られていたらしい。

 でも、それを見たからといってなんで秋奈が家出することになったんだ?


「でね、私が家にいると冬真さんの邪魔になっちゃうかもって思って家をでたの」


「そのあと、どうするつもりだったんだ?」


「考えてなかった。とにかく家をでないとって思った。でも、家をでても行くところが無くてどうしようもなくて。それでも多分冬真さんの邪魔をしちゃいけないと思って」


 どうやら、秋奈は妙な勘違いをしているらしい。


「えっとな、先に言っておくけど俺は万と付き合ってもないし恋愛感情も抱いてないぞ?」


「え?」


 秋奈はぽかんとした顔で素っ頓狂な声をあげた。

 どうやら俺の予想は当たっていたらしい。

 全く本当に変な場面を見られたものだ。


「だから、秋奈が気を使って家をでる必要なんかないし前も言ったけどお前がそんなに気を使う必要はないんだ。お前は俺の家にいる間はのびのびと自分のやりたい事をやってくれればいい。それが俺の一番の望みだ」


 秋奈の目を真っすぐ見つめて俺は言い切る。

 本心を言葉に乗せて一片の偽りなく。


「え、あ。え!? そうなの?私が早とちりしてただけなの?」


「まあ、そういう事だな。そもそも俺は恋人を作る気なんて全くないからな。安心してくれ」


「そうなの?」


「というか、お前も変なことを気にして何の連絡もせずにこんな時間に外出するなよ。心配したんだぞ?全く」


 こいつはどこからどう見ても美少女だ。

 そんな子がこんな時間に外に一人でいたら何か事件に巻き込まれるかもしれない。

 今後はこういう事はしないでほしいものだ。


「ごめんなさい」


「別に謝らなくてもいいさ。今度からは気を付けてくれればそれでいい。今日はもう遅いから早く風呂入って寝ろ」


「わかった。ほんとにごめんね。それとありがとう」


「いいさ。お休み秋奈」


「うん。お休み冬真さん」


 秋奈は足早に風呂に向かった。

 まあ、お休みといっても俺はまだ寝れないんだけどね。

 鼻歌を歌いながら風呂場に向かう秋奈の後姿を見送りながら俺は微笑んでいた。

 自分でもなんで微笑んでいるのかはわからない。

 でも、秋奈が無事でよかったと心から思っている。

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