プチ家出
「はぁマジ疲れた」
あの後、俺はなんとか万をタクシーに乗せて万の家に送り届けた。
べろべろに酔っぱらっている万をなんとか家に送り届けてすぐに家に帰ったけど、疲労感が半端ない。
今度からは絶対に誘われても行かない。
「ただいま~ってあれ? 寝てるのか?」
家に帰ると電気はついておらず真っ暗だった。
時刻は既に9時を過ぎている。
だが、秋奈の部屋を見ても秋奈の姿は見当たらず何より靴が無かった。
何処かに外出しているのだろうか?
だとしても、こんな時間に何の連絡もないのは少しおかしい気がする。
一応もう一度スマホを確認してみるけどなんの連絡も入っていなかった。
「どこに行ったんだ?」
流石に心配になりカバンを置いてすぐに家をでる。
全くあいつはこんな時間にどこに行ったんだ?
考えても答えは出ないからまずは足を動かす。
やりたいことが見つかったなら言うだろうし、どこかに行っているなら連絡が来るはずだ。
もしかして何か事故か事件に巻き込まれたのか?
不安が胸に押し寄せてくる。
「クソっ。本当にどこに行ったんだ」
何のヒントもないためしらみつぶしに探すしかない。
もどかしさを感じながらも俺は近くを走り回った。
「お前、こんなところにこんな時間で何してんだよ」
数十分あたりを走り回ってようやく秋奈を見つけることができた。
秋奈は俺たちが初めて出会った公園のベンチに座っていた。
その様子は最初に会った時のような絶望や諦観が浮かんで見えた。
「冬真さん!? なんでここに」
「それはこっちのセリフだ。こんな時間に連絡もせずに一体何をしている。心配したんだぞ全く」
「だ、だって冬真さんが。冬真さんがぁ」
秋奈はその場で泣き出してしまった。
一体どうしたっていうんだよ全く。
「どうしたどうした。とりあえず家に帰ろう。話なら家で聞くからさ」
「うん」
泣いている秋奈を何とかしてなだめて俺は秋奈を連れて家に帰った。
帰る途中秋奈はずっと何かにおびえているような顔をしているのが気がかりだけど今聞いても教えてくれそうにないし家に帰って落ち着いてからゆっくり聞けばいいと思い道中何も聞かなかった。
(今日はなんだか厄日だな。万にはえぐい絡まれ方をされるし、秋奈はプチ家出みたいなことをするし。そろそろ過労死してしまいそうだ。)
まあ、死ねるならそれもいいかと考える俺であった。




