誕生日前夜
「やりたいことは見つかったか?」
「う~ん。まだ見つかってないかな。ごめんね。いつまでも居候しちゃって」
「そこは別に気にしなくていい。やりたいことが見つかるまではいつまでもここにいるといいさ」
「いつまでもって。さすがにそれはだめでしょ? 冬真さんだっていつかは結婚とかするだろうしさ」
「するのかね~俺が結婚とか」
秋奈が来てから一か月が経っていた。
秋もそろそろ終わって本格的に冬が近づいてくる。
最近は少し肌寒い日が続いてきていていよいよといった感じだ。
「そういえば私そろそろ誕生日だ!」
「そうなのか?」
「あれ? 前に言ってなかったっけ?」
「いや、聞いてない気がするな」
そういえば、一度聞いたことがあったけどなんやかんや教えてもらっていなかった気がする。
「そうだっけ? 私の誕生日は明日だよ~10月の14日! これでついに私も18歳だ!」
「そうだな。これでもしお前といるのがバレても犯罪にはならなくて済むな」
「そこなの!?」
秋奈から突っ込みが飛んできたけど当たり前だろう。
今のこいつは17歳。
れっきとした未成年だ。
そんな奴と同棲してるなんてばれたら一発でアウトだ。
だが、こいつが18歳になれば一応成人扱いだからそこら辺の心配が少し無くなる。
「当たり前だろ! 俺は捕まりたくはないんだよ」
「もお~心配しすぎだって。でも、私もそろそろ本格的にやりたい事とか探さないとな~」
「おう。ぜひともそうしてくれよ。いつまでもここにいてもいいけどできればお前がやりたいことをして生きてくれたほうがこっちとしても気分がいいからな」
早くこいつが自立してくれれば俺はそれだけ早く死ぬことができる。
だからといってこいつをせかすつもりはないけどな。
「冬真さんってときどき言ってることが保護者だよね~」
「まあ、実際保護者みたいなもんだからな」
「まあ確かに!」
秋奈は何が面白いのかけらけらと一人で笑っていた。
ここ最近秋奈は笑顔を浮かべていることが多くなっていてとてもうれしく思う。
このまま昔のことなんか忘れて幸せになってもらいたいものだ。
「誕生日に何か欲しいものとかあるか?」
「いやいやいや!? もう冬真さんにはたくさんもらってるからそんなの気にしなくていいよ!」
「子供が変な気を使うなって。別に今まで買ったものは生活必需品とか暇をつぶすのに必要なものだろ? それよりもお前がもっと欲しいものとかないのか?」
「え~なんか申し訳ないよ」
「良いんだって。いつも弁当とか飯作ってもらってるしその礼だ」
「本当にないんだけどな~」
秋奈は無欲なのか遠慮をしているのか今まで生活必需品以外で何かを欲しがったことが無い。
個人的にはもっと欲を出してくれたほうが嬉しいんだけどな。
「じゃあ、いつか欲しいものができたら言ってくれ。別にものじゃなくても俺にできることなら大体のことはするから」
「うん! ありがとね」
にこっと笑みを向けてくる秋奈に少し見惚れてしまったのは言うまでもない。
「さて、そろそろ寝るか。明日は仕事だし」
「だね。私もそろそろ寝るよ。お休み冬真さん」
「お休み秋奈」




