解剖報告と町の噂
翌日の昼、県の病院から解剖報告が苦輪町に届き、林覚は王警官のコネでその副本を手に入れた。報告によると、死者は六十歳前後の老年男性で、死亡時期はおよそ二~三ヶ月前。生前は重い肺疾患や心臓病を含む複数の慢性疾患に悩まされ、極端に衰弱しており、長期間寝たきりだった可能性が高い。さらに注目すべきは、体内に不明の中薬成分が残留していたこと。死体から漂う薬気と一致するが、具体的な成分や効果はさらなる分析が必要とされていた。
林覚は旅館の小さな部屋に座り、報告書を読みながら頭の中でぼんやりとした輪郭を描き始めた。死者は長く病に伏した老人で、輪廻寺と何らかの関係があり、その薬方と中薬成分が死因の鍵を握っているかもしれない。彼は町民から情報を集めることにした。
苦輪町は狭く、林覚は町唯一の茶肆で聞き込みを始めた。すぐに成果を上げた。茶肆の主人は六十過ぎの老人で、李根生と名乗り、若い頃は赤脚医者をやっていた町の「何でも屋」だ。林覚が後山の死体について尋ねると、彼は声を潜めて言った。「外から来た人よ、深入りすんな。この町、平穏に見えて、実はいろんな秘密が隠れてる。あの死人、たぶん輪廻寺の香客だ。張文山って名前で、十何年か前はよく寺に参ってた。重い病気になって、家も落ちぶれて、数年前に突然姿を消したんだ。町じゃ外に出稼ぎに行ったって話だったが、誰が知るもんか……」
「張文山?」林覚はその名をメモし、尋ねた。「彼と輪廻寺、深い関係だったのか?」李根生は頷いた。「深いさ! 病で寝たきりになっても這って寺に行って、仏様に救いを求めてた。後には嫁が死に、娘の張小曼が一人で家を支えて、苦しい暮らしだったよ。」
林覚は診療所で会った張小曼を思い出し、推測が深まった。もし死者が張小曼の父なら、この事件はもっと複雑な人間関係に絡んでいるかもしれない。彼は李根生に礼を言い、再び輪廻寺へ向かう決意を固めた。