裏山の死体
裏山への道は泥濘み、林覚は町民たちと共に足を取られながら山を登った。半山腰には確かに新しく掘り返された土があり、周囲には枯れ枝や落ち葉が散乱し、誰かが埋めたものの隠しきれなかった跡が残っていた。死体は町民が粗末な布で覆っており、林覚が慎重に布をめくると、強烈な腐臭が鼻をついた。吐き気を堪えながら、彼は死体を観察した。
死体は男性で、年齢は判別できず、顔は腐敗して原型を留めていなかった。着ていた綿入れはボロボロで、泥と血にまみれている。林覚が目を凝らすと、死体の右手が一連の念珠を握り潰すように掴んでいるのが見えた。念珠は暗赤色で、何かの木材で作られたものらしく、細かな文字が刻まれている。近づいてよく見ると、珠の一つ一つに「輪廻寺」と古風な字体で彫られていた。明らかにただの品ではない。
「輪廻寺の念珠……」林覚の心が動いた。この念珠は死体と寺を結ぶ重要な手がかりに違いない。彼はハンカチで慎重に念珠を包み、バックパックにしまい、後に詳しく調べるつもりだった。死体の周りには争ったような跡はなく、おそらく殺された後にここへ運ばれたのだろうと推測したが、死因は警察の鑑定を待つしかない。
その時、若い町民の一人が耐えきれずに口を開いた。「最近この辺、穏やかじゃねぇ。昨夜の赤子に、今朝は死体だ。輪廻寺の呪いじゃねぇか?」その言葉に、他の町民も不安げな表情を見せ、囁き合い始めた。林覚はそれを聞きながら、心の中で首を振った。呪いなど信じないが、この二つの出来事には何か繋がりがあると確信していた。