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巧妙に隠されていた真実


 

 「全てを奪ったって…………その中にヴィルも入っているのね……」

 


 私とヴィルが婚約したのは8歳の時。その前の事は正直分からない……お父様が婚約をする為に動いたとは聞いているけど。


 すると突然レジーナは床の砂を掴み、私の顔めがけて投げかけてきた。



 「…………っ」



 いくつかの小石が顔にぶつかり、鈍い痛みが走る――――



 「気安く殿下を愛称で呼ぶな!」


 「レジーナ!貴様、オリビア様に向かって…………」


 「…………イザベル!」



 私はイザベルに向かって首を振った。ここで刺激してもいい事はないわ。


 

 「本当に偽善者ね………………あなたより前に出会って、殿下の遊び相手をしていたのは私よ。王妃殿下が植物を愛でるのが好きだからって、植物に精通し薬草等で儲けていた私たち家族はよく王宮に呼ばれていたし、その度に殿下と遊んでいたわ。

 王妃殿下も将来はヴィルヘルムといい仲になるといいな、と仰ってくださって………………殿下もとても優しかったし、そうなる事を疑わなかった。

 幼い頃は分からなかったわ、なぜ私が王宮に行く事が出来て、それなのに何故我が家は貧乏になっていくのか。そして何故殿下があなたと婚約して、私と遊んでくれなくなったのか…………お母様が亡くなった時に全て繋がったの、私がこんなに搾取されるのは、あなた達親子がいるせいだって」



 「はっ!単なる女の嫉妬ではないか。見苦しいぞレジーナ」



 イザベルが火に油を注ぐような事を言ってしまう。やはり激昂したレジーナはイザベルに向かって叫び出した。



 「うるさい!!慕っていた人も家族も財も全部奪われた私の気持ちなどお前たちには分からない!この女を殺す為にゆっくりと時間をかけて王妃殿下に取り入り、周りの貴族令嬢と繋がり、ブランカを唆して、男友達にも手伝ってもらってじわじわとこの女を孤立させていったのよ」


 「まさか、私に言い寄ってきた令息たちって…………」


 「うふふっ私と関係を持った令息たちよ。彼らに”あなたに気があるみたいだから、声をかけてあげたら喜ぶんじゃないかしら”って言ってあげたら喜んで飛んでいったわ。公爵令嬢とお近づきになれるんですもの、そりゃ嬉しいわよね」



 私は足元が冷えていくのを感じた。この人はそんなに前から私を消したくて動いていたというの………………



 「それでもしぶとく殿下に粘着しているし、殿下は迷惑していたのに離れようとしないから……私が彼を解放させてあげる為のお手伝いをしてあげようと思って、徐々に徐々に王妃殿下のお茶会でデラフィネを入れていったのに、あと一息というところで………………あなたは助かってしまった」



 苦々しい顔をしながら吐き捨てるように言い放つ――――私がずっと感じていた違和感。どう頑張っても私たち公爵家が排除されるように進んでいる気がする、というのはあながち間違いではなかったのかもしれない。



 「ひと思いに殺してあげようと思って、あなたが領地から帰ってきたから王妃殿下のお茶会であなたのお茶にだけデラフィネを入れたのだけど、何も起こらなかった。口をつけていたのにカップを見ても減っていないし、飲まなかったと分かって、この劇薬の事がバレていると分かったわ…………爆発騒ぎも自分で解決するし、どこまでも悪運の強い女」



 「あの爆発騒ぎの爆薬は、あなた達が作ったものなのね?」


 「…………あんなのを作るのは朝飯前よ。せっかく協力してあげたのにあなたに良いところを持っていかれるなんて、教会もおちたものよね」



 「こら、レジーナ!聖ジェノヴァ教会の事をそのように言ってはいけない。大司教は素晴らしいお方なのだ……あのお方はついに聖女様を召喚する事に成功したのだぞ!神は我々の願いを聞き入れてくださった!聖女様が力を貸してくださったおかげで、この液体を沢山作る事が出来たからなぁ。ほっほっ」


 

 なんて事を……あの爆薬のせいで罪もない民が大怪我を負ったというのに。この人達は自分達の事ばかりで、それによって巻き添えを食う人達の事はどうでもいいの?


 レジーナと子爵を交互に見やると、2人とも私利私欲にまみれた顔で笑っている。

 


 恐怖に固まる私の顔を嬉しそうに見ながら、レジーナが自身の持っているキャンドルスタンドで周りを照らし出した――――――薄暗かった周りの光景が良く見えるようになると、私は自分がどこにいたのか、ようやく理解する事になる。

 

 

 

 「見なさい、聖女様が増やしてくれたデラフィネを……」


 


 この地下室には壁一面にびっしりとデラフィネが生育されていたのだった。


 壁には何段もの木の棚があり、デラフィネの苗ポットが綺麗に整列されて置かれていて、聖女の力によって増殖したいくつもの枝葉が絡み合いながら沢山の花をつけていた……



 私はこの光景を見て、背筋が凍るような感覚を覚えてゾッとしてしまう――――――



 それと同時にマリアの事を思い浮かべた。こんな事に加担したくはなかったでしょうに。彼女がこの事実を知った時にどう思うかを考えると、とても胸が痛んだのだった。


 そんな私の苦しそうな顔をレジーナは恍惚とした表情で眺めながら、嬉しそうに語り始めた。

 

 

 「エキスはね、この花からしか取れないの。この花は本当に寒い地域の花だから、ここでも育てるのは大変で……でも聖女様の力で一発よ。凄いわよね、ふふっ」


 「…………それを大量に作ってどうするつもりだったの?私達に飲ませて終わりってわけではないでしょう……」

 

 

 

 「それについてはあなたが知る必要などないのですよ、オリビア様」



 地下室の扉をギィィッと開けながら入ってきたのは、長くて美しい髪を後ろでゆったりと束ねた美青年だった。



 


こちらの作品に興味を持って読んでくださり、ありがとうございます^^


もう少し続きますので、最後までお付き合い頂ければ幸いですm(__)m

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