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下された処分



 「今日は色々と学べて、とても有意義な一日でしたわ。閣下にも夫人にもお世話になりました……今度お礼をさせてください」


 「そんなお気を使わなくてもいいのですよ。我々は公爵閣下にいつもお世話になっておりますし」


 「フェルナンドはいつもあなたの心配ばかりしていますからね、今日も気が気じゃなかったのではないかと……それに今朝、教会の処分についても聖ジェノヴァ教会に決定を通達しましたので、余計に心配なのでしょう」


 「え?」



 最近お父様がバタバタしている様子で、あまりゆっくり話す事が出来ていなかった。もしかしてその事でバタバタしていたのかしら…………



 「処分については昨日決まったのです。色々ありましたが……教会にとってのダメージは大きいものとなるでしょう」


 「私も昨日議会にいたので知っている。父上にしてはかなり思い切ったというか、厳しい処分になるな。当初は建国祭まで延ばす感じの雰囲気だったのにどうして突然変わったのかは分からないが……そう言えば母上も議会に来なかったな」



 陛下とお父様と王妃殿下でお話したと言っていたけど、その時に何かあったのかしら…………



 「それで、どういった処分になったのですか?」


 「…………今回の一件で、司祭と司教の2人を教会で保護する事を一時的に認める代わりに、教会が徴収していた王都の民からの税を撤廃する運びになりました。教会の大きな収入源を絶つ事になったのです」


 「え?そんな事を突然決めては教会からの反発も凄いのでは?」


 

 大事な収入源が絶たれるのは物凄い痛手だわ……人身売買をしてまで収入がほしかったくらいなのに。教会が大人しく首を縦に振るとは思えない。



 「もとはと言えば人身売買をしていた司祭と司教への処分です。しかし個人への処分を恩赦する代わりに教会として処分を受けてもらう形です。反発があろうが受け入れるしかないのですけどね。もしこの処分を断れば、教会がお金欲しさに仲間を売った形になる。陛下はどちらを選ぶかを大司教に問うたようですが、仲間を助ける事を選びました」



 うわぁ…………どちらにしても教会にとっては死活問題になりそうな二択…………でも法に反して非人道的な行為でお金を得ていたのだから処分は受けなくてはならない。選ばないわけにはいかないものね。


 今まで人身売買で得てきた利益も全て没収するかのような処分だわ。


 

 それからも伯爵は色々と説明してくれた。



 教会は貴重な税収を失い、その代わりに王家からは1/5程度の支援金が出る。公爵領で行った政策と似ているわね。民は喜ぶでしょう…………税を払わなくて良くなるのだから。教会に払っている税というのはけっこう重いはず。だからこそ民は教会に依存するようになるし、教会も奉仕する。

 その税を払わなくていいという事を国として決めたとなれば、民衆は王家に感謝し、民の心は教会から王家へ…………これは民の心を動かす為の政策でもあるのかしら。



 「陛下は市場税も引き下げ、流通を活発にする事に決めたので民の関心は一気に王家の方に傾いていきます。流通が活発になれば自然と国家への収入は潤ってきますので……そして王家から教会への支援金は我々貴族が納めている領地税を上げる事で賄われる事になりました。」


 「教会もだが、腐敗し、領地経営が困難になっている諸侯にとってみても税を上げられるのは痛いだろうな。贅を尽くして散財している貴族も沢山いる」


 「はい。腐敗している諸侯をあぶり出そうとしておられる。経営が困難になってくると……人は犯罪に手を出し始めます」



 民衆は王家に対して感謝の気持ちを持つけど、その裏で収入が減って苦しくなるような教会や諸侯は、ピリピリしてくるわ。


 

 「民にとっては嬉しい政策なので、おそらくこの前のようなオリビア嬢が民に詰め寄られるような事は、今後なくなっていくと思います。その代わり……」


 「この政策に気に入らない貴族派たちの動きに注意しなければならないのね」



 閣下は静かに頷いた。恐らくお父様が心配しているのは、きっとそういう方面での心配なんだと思う。


 今回の件は私とヴィルが教会の悪事を暴いたせいでこのような政策が行われるようになったのだから……



 それにデラフィネを手に入れるにしても財が必要になるし、今回の政策はそこを締め付ける意味もあるのかもしれない。これ以上好き勝手させない、という陛下の意思を感じるわね。


 それにしても――――



 「この政策が提案されて、よく貴族派が納得しましたね…………絶対に反対して否決されてしまうような案だと思うのですが」


 「今回ばかりは陛下の圧が凄くてね……”これからは我々が教会を支えるという政策だ。領地に聖ジェノヴァ教会の者がいる諸侯も多々いる事だし、世話になっているのだから……喜んでやる、と言うべきだろう?”と言われれば、教会と懇意にしている貴族派も賛成せざるを得なかった。きっと今頃、貴族派も教会も後悔しているでしょう、司祭と司教を大人しく処分していれば良かったと」


 「そうですわよね、その方が王家は信者から目の敵にされ、教会も収入源を失わずに済んだのに……」


 「何がそんなに父上の逆鱗に触れたのだろうか…………ここまでの事を推し進めるほどだから、余程の事があったのだろうけど」




 国王陛下って物凄く穏やかな方よね。やっぱり聖女を召喚しようとしている、というのが引き金になったのかしら…………伯爵がその事を知っているか分からないから、ここでは言わないけれど。



 それによって国を乗っ取ろうとしているだなんて聞いたら、ここまでやってでも手を打たなければって思ったのかもしれない。


 その辺は帰ったらお父様に聞いてみよう。



 今日イザベルに色々鍛えてもらったけど、伯爵閣下の話を聞いた今、ますます鍛えておいた方がいいような気がしてきたわ。


 デラフィネの件もそうだし、これから貴族の中の怪しい動きにますます注視していかなければと考えながら、ヴィルと2人で帰路についたのだった。



 

 ~・~・~・~



 

 補足ですが司祭と司教は身分剥奪、あくまで一時的に身柄を教会に保護される事を認めただけなので、教会に復帰出来るわけではないです(^^;

 こういう世界の刑は、火刑や絞首刑、斬首刑、流刑などですが、そういうのは恩赦されたという感じです~<(_ _)>


 

こちらの作品に興味を持って読んでくださり、ありがとうございます^^


まだまだ続きますので、最後までお付き合い頂ければ幸いですm(__)m

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