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海沿いを行く荷馬車


 コンテナに子供を入れて運び出そうとしていた人物は二名で、ヴィルはあっという間に二人とも気絶させていた。王太子ってやっぱり剣術や体術なんかを鍛えているのね……貧民街でのゼフの動きも凄かったけど、ヴィルも負けてはいなかったわ。


 

 そして荷馬車の御者はゼフがすでに押さえていた……こちらも超人的ね。


 御者の方はヴィルが聞きたい事があるようで、気絶させずにゼフが捕まえている。子供たちは皆私が保護し、ヴィルと御者のやり取りを見守っていた。



 「この子供たちはどこに運ぶつもりだった?」


 「…………………………」



 当然の事ながらすぐには答えてくれない…………黙秘って事ね。するとヴィルが御者のフードをはぎ取ると、御者だと思っていた人物は聖職者だった…………まさかと思い、ヴィルに倒されて縄で縛られている二名のフードもはぎ取ると、その二名も聖職者だったのだ。



 「皆聖職者か……ここまで教会が腐っているとはな…………仕方ない。始末するか」


 「え?!ちょっ……ヴィルそれは…………」



 ヴィルの言葉を聞いて私の方が動揺していると、ゼフが首元にナイフを突きつけている。すると御者は焦ってべらべらと喋り始めた。



 「あ…………わぁぁ喋ります!お許しください…………アストリッド港です!あそこに今日貨物船がやってくるので、それに乗せる予定で…………」


 「…………そうか。人を売る事は出来ても殺し合いは恐ろしいのだろう。やはりアストリッド港……」



 フリだったのね…………始末するとか言うから、子供たちの前だし本当にするのかとびっくりしてしまったわ………………やっぱりこういうのは、全然慣れない。



 「よし、お前は荷馬車をそのままアストリッド港まで動かせ。ゼフも隣に乗るから逃げられると思うなよ。他の二人は置いていく」



 ここからは荷馬車に乗ってアストリッド港に行くのね……私とヴィルは気絶している二名のフード付き外套を奪って着込んだ。顔を隠すのにちょうどいいわ。そんな事をしていると、先ほどソフィアと話していたと思われる男の子が話しかけてきた。



 「ねえ、お姉さん。さっきソフィアから聞いたけど、俺たちも一緒に行くの?」


 「え、ええ、そうしてくれると嬉しいわ」



 「よっしゃ!じゃあコンテナに入っておくよ」


 「パウロ……あそびじゃない……よ」



 ソフィアに窘められている…………いつの間に名前で呼ぶ仲になったんだろう。ソフィアより年上(8歳くらい?)に見えるこの男の子は、今の状況をあまり怖いと思っていなさそうね。むしろ楽しんでいるような……



 「俺の仲間が沢山いなくなってんだ。絶対捕まえてやりてぇから協力するんだからな!」


 「……もしかして、わざと捕まっていたの?」



 私は素朴な疑問をぶつけてみた。



 「他のメンバーは分からないけど、俺はそうだよ。連れて行かれた場所で大暴れしてやろうと思ってた。どうせあそこにいても大人まで生きていられるか分からないし……これ以上友達が減っていくのは我慢ならねぇ!」



 私は驚いて固まってしまった…………まさか子供が、決死の覚悟で一人で潜入していたなんて――――


 


 「ははっお前、なかなか気概があるじゃないか…………気に入った。ゼフに弟子入りしろ」


 「勝手に俺の人生を決めるな!」



 

 「と、とにかく港に向かいましょう!」


 

 モタモタしていたら船が出てしまうかもしてない。そう思って荷馬車に積んだコンテナに子供たちに入ってもらって、私とヴィルも乗り込んで港へと出発した。


 途中の検問では、御者が通行証を持っていて無事に通過し、荷馬車は海沿いを走りながらアストリッド港へ向けて進んで行った。ゼフが隣にぴったりとくっついていたから御者は大人しく従ってくれている。

 


 「やはり行先はアストリッド港だったか……そうなると……」


 「売られている先って、やっぱり他国なのね。そうだとしてもどの国に売られているのかしら……」


 「あそこの港は大きいから、多方面に亘って行き来出来る。今まで取引していた場所を特定するのは困難だな……でも今回に限っては乗せられる船は特定出来る。それだけでも分かれば大きな収穫だ。ついでにその船の船員も捕らえる事が出来れば、なお良いんだけどね……」



 確かに、それが出来ればかなりの情報を入手出来るかもしれない。


 辺りはすっかり日が沈み、夜になっていた。納税証明書を領民から集めた時点で夕方に近かったし、そりゃもう夜になるわよね。



 「マナーハウスの方は大丈夫かしら……」


 「そっちの方は大丈夫だろう。例え何かあったとしても公爵に私から伝えた時点で、ヤコブ司祭はこの領地にはいられなくなるだろうから」



 それもそうね…………ひとまず荷馬車を運び出す時間が稼げたし、成功したのよね。荷馬車はようやくアストリッド港の入口に着き、通行証を見せて入っていく――



 「……あそこの船に乗せて行くんです…………」



 御者は黒いバルク船のような貨物船を指さしていた。


 随分大きな貨物船…………その船には隣国のマークが刻まれていた…………あれは見た事がある。多分元のオリビアの知識だと思うけど……



 「あの船のマークはドルレアン国じゃない?確か好戦的な国よ……そこに売られているって事は……」


 「行き着く先は奴隷にされるか、戦が絶えない国だからな……戦いの駒として育てられ、使い捨てられるか……」

 


 信じられない現実を目の当たりにして、絶句してしまう。今まで売られていった子供たちはどんな運命を辿ったのだろう…………目の前の光景に信じられないでいると、何人かの聖職者がゆっくりと荷馬車に歩いてくるのが見えた。

 



こちらの作品に興味を持って読んでくださり、ありがとうございます^^


まだまだ続きますので、最後までお付き合い頂ければ幸いですm(__)m

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