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やりたい事



 あの後マリーは「少しお休み下さい」と寝床を整えてくれて、優しく微笑むと静かに部屋を出て行った。やはり体力が落ちていた為、少しうとうとしていると、すぐに深い眠りに落ちて行った。


 

 忙しく子育てに追われる私が見える…………これは病死する前の記憶ね……子供たちは皆可愛くて、この子たちの為ならどんなに辛くても生きていけると思っていたなぁ……流石に病気には勝てなかったけど。

 忙しい中でも誕生日にはケーキを買ってお祝いして、夏はプールにも連れて行ったし、クリスマス会したり………………その全てに夫の姿はほとんどない。仕事が忙しいとか、取引先がとか、付き合いがとか、様々な理由で家には寄り付かなかった。

 

 子供たちさえいてくれれば頑張れる。そう思っていたのに…………



 中途半端な状態でいなくなって、ごめんね



 何度も何度も謝って――――涙を流しながら目が覚める。

 

 

 「……夢…………」

 

 

 眠る前は日差しが明るかったのにいつの間にか夕暮れ時の日差しに変わっていた。

 

 やっぱり私は病死して、小説の世界に転生してしまったのね。寝落ちて目覚めてもこの世界で目覚める。転生した事実を受け入れなければと思いつつ、私はよほど子供たちへの未練が捨てきれないでいるらしい。それもそうだ……ずっと一緒にいた。どんな時も一緒で……一人で頑張る私を励ましてくれる時もあったし、喧嘩したり叱ったりする時もあったけど、子供たちの笑顔や言葉で全て吹っ飛ぶ。

 

 子供は宝、まさにそんな生活だった。

 

 宝物を失った私には、もはや何もない。これからどうやって生きていこうかな…………そんな事をぼんやり考えて窓の外を見ていた。

 

 この世界は一見平和だが、国としては廃れ始めているって書いてあったような……政治の腐敗が進み、私腹を肥やす貴族が増え、財政はどんどん逼迫していく。弱った国は他国からつけ入れられやすい。

 どこの世界も上が阿呆だと大変ね、と苦笑いが漏れる。

 

 案の定戦争を吹っ掛けられそうなところを聖女が現れて国を守ってくれたから、誰も血を流さずに済んだっていうお話なのよね。それくらい聖女の力は近隣諸国にとっても影響は絶大で、聖女が現れた国は繁栄するとも信じられている。


 まぁそんな聖女に勝てるわけはないし、早めに隠居して好きなように生きた方が処刑もされなくて済むわよね。 

 お父様はそんな事ないだろうけど、貴族の腐敗か…………小説では、公爵領でも貧しくて物乞いしている子供たちが出てきたわ。物乞いしている子供を想像しただけで胸が痛んじゃう――――


 お父様に領地について聞いてみようかしら?女が口を出すなと言われてしまうかしら……私が目覚めた時にハラハラと涙を流してくれた美しい父の姿がよみがえり、胸が温かくなる。

 

 いえ、お父様なら私の話を真剣に聞いてくれるはず。


 「その為には早く体力をつけなきゃね」


 やりたい事が見つかった気がした私は、まずは体力がなくては何も出来ないので、しっかり休み、よく食べるという基本的な事を頑張ってみる事にした。



∞∞∞∞

 


 そうこうしている内に目覚めてから4日が過ぎた頃、慌ただしく走る音が廊下から聞こえてくる。

 そして丁寧なノック音がしたと同時に部屋の扉が開かれ、マリーが慌てて入ってきた。自室のテーブルにて、お見舞いの手紙に返信を書いている最中だったのだけど、いつもなら返事をするまで入ってこないマリーなのだけど……

 

 「そんなに慌ててどうしたの?」

 不思議に思った顔をしていると、マリーは興奮した面持ちで話し始める。


 「お嬢様、落ち着いて聞いて下さいませ…………なんとこれから、王太子殿下がいらっしゃるという知らせが先ほど届きました!」


 スーーーン……………………

 

 「ふーん…………」

 マリーは興奮しているようだけど、私は全然驚きもないし、むしろ厄介者が来たなという認識しかない。何の知らせかと思いきや、すっかり白けてしまった私は「そう」とだけ返した。

 婚約者が6日ぶりに目覚めたのにすぐにお見舞いどころか4日も経ってからようやく来るとか、よほど婚約者に対する気持ちが冷めている証拠じゃないかしら。

 そんな人が来てくれて嬉しいだなんて思うわけがないし、このまま来なくても良かったのにとすら思っている。


 マリーは、そんな私の気持ちなどお構いなしに興奮気味に「今すぐ身支度を整えますね!」と鼻息を荒くしているのだった。


 


 

こちらの作品に興味を持って読んでくださり、ありがとうございます^^


まだまだ続きますので、最後までお付き合い頂ければ幸いですm(__)m

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