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決行の時


 無事に委任状を持って帰ってきてくれたから、これで動ける。


 まずは私とロバートとマリーやソフィア、オルビス達皆で領地に出て、領民から教会に納めている税の納税証を集める事にした。


 一つ一つの家屋や店を回るのは一苦労だったけど、なんとか夕方になる前までにほとんどの商店や住宅から集める事が出来た。ついでに税の納税証を借りる時に今までは教会が勝手に徴収していただけで、これからは払わなくていいという話も領民に伝えた。


 その際にお父様の委任状も見せたりすると、教会に対しての怒りが収まらない領民たちは、教会に物申しに行くと言い始めたのだ。


 そこに一気に押し寄せると今日の作戦が台無しになってしまうので、一旦マナーハウスに集まってもらう事にした。

 


 「あたしらが汗水流して働いて納めた税を勝手に徴収したばかりか、自分たちの肥やしにしていたなんて!」




 前に訪れたパン屋の女主人なんかは、一生懸命公爵領の為に払っていたのに教会の懐に入ってしまっていた事に憤慨して、宥めるのに大変だった…………



 「怒るのも無理はないわ……私たちが気付くのに遅れてしまって、本当にごめんなさい。ヤコブ司祭はこれからマナーハウスに呼んで話をつけようと思っているの。あなたも来てくれると嬉しいわ」


 「もちろんですよ!一言言ってやらないと気が済まないね……そんなヤツ、とっとと追い払っちまえばいいんですよ!」



 私は苦笑いするしかなかった。本当にもっと早く気付いてあげていれば……


 そうしてマナーハウスのエントランスには多くの領民が集まり、マリーや屋敷の皆に領民を任せて、私とロバートとソフィアはお父様の委任状を持って教会に向かった。



∞∞∞∞

 

 

 その日も固く閉ざされた教会の扉は全く開く気配がない。これでは中で何が行われているか、全く分からないわね……これだけ領地が騒がしくなっていても教会の人間は誰も気づいている感じはない。


 そしてロバートとソフィアを教会前に待機させて、私は教会の裏側に回り、草むらに隠れていたヴィルにそっと近づいた。



 「…………首尾はどう?」


 「オリビア……こちらは動きはなしだ。昨日の夜から教会の裏にずっと荷馬車は止まっている。おそらくそれに乗せて行く為の荷馬車だと思うのだが……そしてこの窓から子供たちが見えるだろう?この子たちが運ばれていく子供だろうな」



 全部で3人…………服装を見ても皆貧民街の子供たちね……



 「じゃあ、いよいよね。ソフィアに伝えてくるわ」


 「……ああ頼む」



 私はヴィルの元を後にし、ロバートとソフィアのところに戻り、ソフィアには目で合図した。




~・~・~・~

 

 

 

 昨夜ヴィルが話してくれた考えはソフィアを教会に潜入させる、というものだった――


 

 「子供を売っている教会に子供が助けを求めてきたら、必ず教会内に招き入れてくれるだろう。ソフィアには一時的に囮になってもらいたいんだ……」


 「そんな事させられないわ!危険すぎて……」



 私はもちろん大反対したのだけど…………ソフィアが私の袖を引っ張り「わたし、できるよ」と言い始める。



 「ダメよ…………何があるか分からないのよ?!」



 私は動揺して、半分ヒステリックになっていたと思う……私よりもソフィアの方が冷静だった。



 「だいじょうぶ、きっと変なことはされない、とおもう……それに、オリビアさまのお役に立ちたい……」


 「………………すまない、ソフィア………………教会は子供には利用価値があると言っているから、教会で危険な目に合う事はないとは思う」


 「でも港に着いたら……!」



 港に着いたら何が起こるか分からない。それなのに教会に潜入させて囮にするなんて…………



 「いや、違うんだ。港まで乗せていくが、そのまま乗せるわけではない。教会から荷馬車に乗せるところを私とゼフで御者を押さえる。王都からの司教があのような荷馬車に乗る事はないから、司教は先に港に行っているだろうと見込み、荷馬車を押さえる事にした」


 「…………………………」



 な、なるほど………………冷静に説明されると自分の狼狽ぶりが恥ずかしくなってきた。



 「港までの道のりはゼフが御者に代わり荷馬車を引いて港まで行く、というのが私の考えなんだ。この近くの港ならアストリッド港だとは思うが……その辺は押さえた御者に聞けばいいからな。ソフィアには先に捕まっている子供たちにその事を伝えてほしい。我々が突然やってきて、御者らを倒し始めたら子供たちを更に怖がらせて混乱させてしまうからね……ゼフはその日、一日中教会内に潜入するからソフィアの事はゼフが見ていてくれる。オリビアには納得しがたいとは思うけど…………」


 

 「……ソフィアは、もう決めたの?」


 「……うん。わたし、頑張りたい」



 「………………そう…………分ったわ。その作戦でいきましょう」



 こんなにやる気を出しているソフィアを初めて見るのもあって、私は根負けしてしまった。一時的に教会に捕まってもらうだけだとしても何があるか分からないと思うと、恐怖が襲ってきてしまう…………でも皆を信じるしかない、と自分を奮い立たせたのだった。



 ~・~・~・~

 

 

 そしてソフィアに目で合図を送った私は、ロバートと教会の影に隠れながら、ソフィアの様子を見守っている。



 ソフィアは教会の扉をドンドンと叩いた…………すると教会の扉が少し開かれた。


 

 「あれがヤコブ司祭です」


 隣でこっそりロバートが解説してくれる。あの大柄な中年男性がヤコブ司祭…………見た目は普通の聖職者って感じね。特に偉そうな感じもしないし、見た目だけなら人が良さそうな感じ。



 「我が教会に何か御用ですかな?」


 「…………っおなかが空いて……うごけ……なくて………………おねがい、します…………なにか食べる物を…………」



 この時の為にソフィアにはボロボロの服を着せていた。迫真の演技だわ……泣きながら(もちろん噓泣きだけど)教会に物乞いの演技をしているソフィアに目を見張る。




 「……おお、それは大変だ…………神は迷える子羊を見捨てたりしません。さあ、こちらにお入りなさい……」





こちらの作品に興味を持って読んでくださり、ありがとうございます^^


まだまだ続きますので、最後までお付き合い頂ければ幸いですm(__)m

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