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遅くなった自己紹介



 「ロバートはその事もあったから、教会とあまり関わらないようにしてしまったのかしら…………ヤコブ司祭が激怒した時の事もあって、これ以上聖ジェノヴァ教会が出てきたら王都でのお父様の立場にも関わってしまうし」


 

 「そうだと思います。私がしてしまった事で旦那様とロバート様は……本当に大変だったのではないかと。ご迷惑をおかけしてしまって…………」


 

 オルビスはかつての事を思い出し、ますます俯いてしまった。でもだからって税を勝手に徴収していいわけではないわ。公衆浴場だってお父様が整備して皆が使えるようにしたのに立ち入り禁止にされて……ここは公爵領であり、ヤコブ司祭の物ではない。


 

 「私の方でも色々動いてみるわ。それと……あなたの事をロバートに伝えてもいい?きっと今も心配していると思うの」


 「……………………本当はこんな事をお嬢様にお願いするのは間違っているのですが……ロバート様に謝罪したいのです、勝手に姿を消した事、ご迷惑をかけた事を…………」


 

 この人は本当に真面目なのね。ロバートも真面目だし、前世の私の世界では馬鹿正直って言われてしまうタイプ……


 

 「オルビス、ロバートは迷惑だなんて思っていないと思うけど……あなたの気が済むなら好きにしたらいいと思うわ。」


 「ありがとうございます!お嬢様!」


 

 オルビスが私の両手を握り、ブンブン縦に振って喜びを爆発させてくる。


 

 するとさっきまでオルビスの話を心配そうに聞いていたテレサの顔が般若のように変わっている…………テレサ、分かりやすいわ……そういう事なのね!

 

 ふふっ……若いっていいわ~~!つい前世の30代の私が出てきてしまう。


 

 そんな事を考えていると、私とオルビスの手を殿下が引き剥がした。


 

 「……もういいだろう。あーー話はまとまったな。今日はもうここにいても出来る事はないだろうから、そろそろマナーハウスの連中も心配し始める頃だ。この辺で帰るぞ、オリビア」


 「……………………」


 

 無言の抵抗をしてみたのに気にする素振りもなく、殿下は帰ろうと席を立ってしまう。もう……せっかくここまで来て、貴重な話を聞けたのにサッサと撤収しなきゃいけないなんて。それに殿下は何しに領地に来たんだろう。来てくれてとても助かったけど、オリビアに全く興味なかったはずなのに……殿下の意図が全く分からない。

 

 でもこの国の王太子に不敬を働くわけにはいかないわよね…………


 

 「…………承知いたしました。今日はこの辺で帰る事にしましょう」

 


 「あの――……お嬢様、このお方は…………まさか……」


 

 ………………そうよね、オルビス達は王太子殿下のご尊顔を拝見した事がないんだ。あの後も暗い話が続いたし、自己紹介していなかったわ。


 

 「この偉そ…………んんっ…………このお方は我が国のヴィルヘルム・ディ・ハミルトン王太子殿下です」


 「!……やはり婚約者と言っていたのは聞き間違いではなかったのですね?!も、も、申し訳ございません!!殿下に大変なご無礼を働いてしまいっ………………」



 オルビスは土下座する勢いで、地面に頭を付けて謝罪し始めた。



 チラリと殿下の顔を見てみる。さぞや得意げな顔をしているのかと思いきや………………不愉快とは違う、ちょっと苦しそうな表情をしている。あまり嬉しそうな顔をしない事が意外……


 

 

 「……………………顔をあげるんだ。王太子など…… …… ……」


 「…………へ?」



 「…………オリビアの知り合いだから許すと言っている」



 ぶっきらぼうにそう言うと、オルビスに背を向けてしまう。


 王太子など……なんだったのかしら。あとの方が聞こえなかったわ……オルビスも聞こえていなかったみたいだし。でもオルビスが殿下の不興を買わなくて良かった!


 

 「……あ、感謝致します王太子殿下!」


 

 オルビスはまさか許してもらえると思っていなかったのか、殿下の言葉にポカーンとした後、またしても床に頭を擦り付けてひれ伏してしまう。地面に埋まってしまうような勢いね…………さすがのテレサも目を白黒させているし、周りの住人も物凄いザワザワしている。地面に突っ伏してしまう人まで出始めてしまったわ……やっぱりこの世界で王太子殿下ともなれば、神に近い存在なのね。

 

 

 こんな状況にも殿下はあまり喜んでいる顔を見せない。何となくバツが悪そうな…………とにかくこれ以上ここにいても迷惑がかかるだけね、さっさと切り上げましょう。


 

 「じゃ、じゃあオルビス、また連絡します。ロバートにも伝えておくわね!この件が解決するまで、私なりに支援させてもらうわ…………あまり目立ってもいけないから、大がかりには出来ないけど。」


 「お嬢様…………ありがとうございます!」


 

 オルビスは涙目でお礼を言ってくる。彼がそれだけここの人たちに思い入れが深い事が伝わってくる…………テレサもそんなオルビスの姿を眩しそうに見ていた。


 

 「支援はいいが、我々がここに来た事や支援する事は、しばらく司祭側に悟られないように気をつけてくれ。その方が尻尾を掴みやすい。我々が君たちの元に来ている事など夢にも思っていないだろうしな……」


 

 悪い顔をしているわ…………ここは公爵領であると共にハミルトン王国のものなのだから、自国で民を苦しめる事を好きにやられたのでは王太子殿下としても腹立たしいはずよね。

 

 この件を聞いてすぐに教会に殴り込みに行かなかったのは、ちょっと意外かも。殿下は私が思うほど直情的な人物ではない、という事かしら?そんな事を考えながら、この建物をあとにした。


 

 

こちらの作品に興味を持って読んでくださり、ありがとうございます^^


まだまだ続きますので、最後までお付き合い頂ければ幸いですm(__)m

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