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オルビスの後悔


 

 「ロバートのお手伝い?……ロバートの…………」


 …………………………小説に出てきたような…………ロバートの手伝い………………あ!!


 

 「お馬のオーリー?!」


 「ははっそうです、オーリーです」


 

 お馬のオーリーとは本物の馬ではなくて、昔領地で過ごしていた時にお馬さんごっこで、私を背中に乗せてくれていたお手伝いのお兄さんの話が出てきていたはず…………まさかオーリーがこんなところにいたなんて……


 

 「領地に戻ってきたら、もうあなたはいなかったから…………どうしてここに?」


 「初めに話しておきますが、公爵家を追い出されたわけではありません。きっとロバート様は私を探してくれたと思うんです…………お嬢様が王都に移り、旦那様も移り住んでから1,2年くらいは平和でした。私はロバート様の手伝いをしながら領地の子供たちとも交流していたのです。貧しい子供も教会が面倒を見てくれていましたし、あの頃は本当に平和だった…………しかしヤコブ司祭が来てから、テレサが言っていたように教会の様子がガラッと変わり始めまして…………その…………」



 オルビスの顔が途端に曇り出す。言い出しにくそうなのを見兼ねてか、テレサが助け舟を出してくれた。



 「行き場がなくなった貧しい子供たちが、突然行方不明になる事が増えたんだよ……」



 「?!」


 

 私と殿下は顔を見合わせ、驚きを隠せなかった。これがヤコブ司祭の仕業だという確証はないにしても…………



 「貧しい子供と言っても私は多くの子供たちと交流していたので、顔を知っている子供も沢山いたのです。どこにも姿が見えなくて…………貧民街にも探しに行った事もあります。でもそこでも同じような話がされて、住人に探してほしいと…………ロバート様はとても心を痛め、旦那様は密かに衛兵を雇って領地近辺の警護を固めたり探ってくださったりしていました。私もこのままではいけないと思い、原因を探るべく動いていたんですが、教会でヤコブ司祭が…………小さな子供は役に立つと話しているのが聞こえて………………」


 

 「まさか…………人身売買?!」



 私がそう言うと、オルビスが静かに首を振り、俯いた。


 

 「分かりません。しかしその話を聞いて、子供たちが行方不明になっていく事が頭を過ぎり……私は感情的になってしまいました。今の話はどういう事かと、子供たちの行方を知っているのかと、愚かにもヤコブ司祭に詰め寄ってしまったのです…………何の証拠も裏付けもなく」


 「……バカだな。そんな事をすれば聖職者たちが黙っていない」

 「ヴィル!」


 「いいんです。本当にその通りでしたから。司祭は自分のような王都から来た敬虔な聖職者を人身売買の犯人扱いしたと激高し、私を領地から追い出すようにロバート様に詰め寄り…………旦那様が来ないと収まらない状況で……公爵家に迷惑がかかってはと、旦那様がわざわざ王都から来てくださったその日の夜に姿を消しました」


 

 なんて事………………そんな事になっていたなんて。確かに何の証拠もなく王都からの聖職者を犯人扱いしたとなっては……司教ならまだしもその上の大司教まで話が及んだらお父様でも手が付けられないかもしれない。


 

 「人身売買は我が国は法で禁止している。そのような事が行われるわけがないと、誰しもが思っているだろう。それを裏付ける相当な証拠がなければ……そこを利用されたな」



 オルビスは俯いてしまった。ここまで騒がれたら、公爵家もオルビスに何らかの処分を下さなくてはならなかったでしょうね。聖職者というのはそれくらい地位が高いというのは小説で読んだわ。



 「人身売買はかなり根が深い問題だ…………我が国では先代の国王が法を整備し、ようやく禁止に出来たがまだまだ徹底されていないのは分かっていた。私はどこが温床になっているのか、ずっと調べていたのだ…………やはり教会が一枚噛んでいるのかもしれない」



 ヴィルがそんな事をずっと調べていたなんて…………教会の力は強大だから、ちょっとやそっとじゃ裏を取る事は難しいのね。

 


 「きっと私がいなくなった事で、公爵家として処分した事になったのだと思います。旦那様が上手く事を済ませてくれたのだと。ロバート様のここでの立場も悪くしてしまって……もう公爵家には戻れませんし、かと言って行く当てもない…………領地を出ようと決意して外れまで歩いてきたら…………」


 

 「ここの人たちの存在を思い出したのね」


 「そうです。あの司祭が来て、虐げられている人や貧しい人が急速に増えたんだなと理解しました。その人たちを放って出て行く事は私には出来なくて…………幸いここにはヤコブ司祭のような人は来ませんし。貴族の方も近寄らないだろうと身を寄せ……せめてここにいる人たちが何とか暮らしていけるようにと。ここは子供たちの守る為のシェルターでもあるんですよ。何かあれば私たちで守れるように」


 「……オルビス…………あなたには礼を言っても足りないわね……ありがとう」


 

 私は改めてオルビスの迅速な対応に感謝を示した。オルビスは若干照れているが、ここの話をする時のオルビスの表情は苦しそうだった。彼にとってここの人たちはもう仲間であり、家族なんだわ。ずっと誰かが助けに来てくれるのを祈るような気持ちで待っていたのかもしれない。

 

 でもあの感じを見ると、全然公爵家に動きがなくて諦めかけていたのかも…………ロバートに教会の話をした時に気まずそうな顔をしていたし、この事件が尾を引いていたのかしら。

 

 オルビスの一件で教会と公爵家には大きな溝が出来てしまっている。その溝に入り込むかのような教会の動き…………

 


 以前のオリビアなら、王太子妃教育に忙しくて領地に来る事が出来なかったでしょうし、そのまま処刑されて公爵家が取り潰しになったのも頷けるわね。ここまで領地で教会の力が増していたら、どの道オリビアの処刑がなくても危なかったかもしれない。


 

 転生してよかったのかしら……とにかく今、私がここにいる意味を考えてこの拗れてしまった問題を何とかしなくちゃ――


 

 

こちらの作品に興味を持って読んでくださり、ありがとうございます^^


まだまだ続きますので、最後までお付き合い頂ければ幸いですm(__)m

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