表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/132

<第三部最終話>船上のマリーベル / 第三部あとがき


 行きも晴れだったけれど、帰りもカラッと晴れ、昨日が嘘のように火山性微動もなく、平和な馬車の旅を満喫しながら港へと向かった。


 そして無事に港に着くと、ガイアス卿が荷物を積み込んだり、船の整備をしたり、忙しく動き回っている。


 

 「私も荷物の積み込みをお手伝いしてきます!」


 「マリー、船酔いしちゃうんだから無理しないで」


 「大丈夫です!今のところは元気ですし、ガイアス卿に全部させるのは申し訳ないので」



 マリーは全く引く気配がないので渋々行かせたけれど、もし何かあればガイアス卿が休ませてくれそうだし、見守る事にしたのだった。


 それよりも問題は――――レジェク殿下だ。



 「マリア~~~帰ってしまうのか?」


 「帰るに決まってるわよ!」


 「もう少し我が国にいてくれ!ほら、君の好きな温泉まんじゅう」


 「わぁ、美味しそう!って食べ物で釣ろうとしてもダメよ!なんで私が好きだって知ってるの?!」



 この二人は何をしているのだろう。


 なんだかお笑いコンビのようなやり取りをしているわ……生温かい目を向けている私の隣りでヴィルが必死に笑いをこらえている。



 「そんなに遠くないんだから、遊びに来ればいいでしょ?」


 「いいのか?」


 「でも国を立て直してからね!ちゃんと仕事したら遊びに来ればいいんじゃない」


 「分かった。約束する」



 マリアの言葉に素直に言う事をきくレジェク殿下も、可愛いところがあるじゃない。



 「レジェク殿下、マリアの言う通り、国の立て直しは大変でしょうが……」


 「ヴィルヘルム殿下、ご心配は無用です。私の力でもっといい国にしていきますよ」


 「トップが変わったのだから、アレクシオス陛下からの親書の内容は白紙になるの?」



 私がヴィルに尋ねると、ヴィルは意地悪な顔で笑いながら「どうかな」と言い放つ。



 「全てはレジェク殿下次第でしょう」


 「手厳しいな。あなた方が手を結びたいと思うような国を作ってみせます」


 「期待してます」

 


 ヴィルとがっちり握手をしたレジェク殿下の顔は、ここに来た時とは打って変わってスッキリとしていた。


 その表情に、何となくこの国の未来は明るいんじゃないかと思える事が嬉しい。


 あの国王のままなら人身売買の件も進展はなさそうだし、石炭の件も色々と問題だらけだったものね。


 私たちは殿下やドルレアン国の要人と挨拶を交わし、船へと乗り込んだ。


 今度この国に来た時には、全く違う国に生まれ変わっているといいな……そんな願望を抱きながら、ドルレアン国の人々が見えなくなるまで船上から手を振り続けたのだった。



 「あっという間に見えなくなっちゃったわね」


 「あっという間……」



 ソフィアは遠くを眺めながら少し寂しそうな表情をしていた。



 「近いからまた来る事が出来るわ。水遊び、楽しかったものね」


 「うん!また遊びたいっ」



 ソフィアはよほど水遊びが楽しかったのか、満面の笑みで頷いた。


 可愛い……こんな笑顔が見られるなら何度でも連れて行ってあげたくなるわ。


 ソフィアと会話して癒されていたところへ、船長室から出てきたヴィルがこちらに向かって歩いてきた。

 


 「天候も良いし、行きと同じく数時間で我が国に着くだろう」


 「良かった。色々あったけど……国王夫妻はあの後、北の塔に入れられたままなの?」



 私はレジェク殿下のご両親である国王夫妻がどうなったのか気になり、ヴィルに聞いてみた。


 

 「マリアの力を見せつけられ、茫然自失らしい。大人しく隠居生活を送るだろうな。何と言っても神の怒りを買った王族なのだからな」


 「そうそう」



 私たちの会話にマリアが突然入ってくる。


 とても得意げに。でも実際マリアのおかげだものね。


 最初に神の怒りらしきものを買っていたのは私たちだと思うのだけど、それはマリアの力のおかげでうやむやになったし、もう触れないでおこう。



 「そうよね、全てを神が決める国ですものね!本人達もだけど、国民も納得するでしょう」


 「「そうそう」」



 ヴィルとマリアが声を揃えて返事をするので、思わず吹き出してしまう。



 「あははっ!」



 私たちが笑い合っているところにフラフラとニコライ様がやってきて、イザベルの行方を聞いてきたのだった。



 「一緒に船に乗ったはずなのに、姿が見当たらないんですよね」


 「そういえば私も見ていないわ」


 「ニコライ、お前がしつこいから嫌われたのではないか?」



 ヴィルの意地悪な言葉もニコライ様ならあっさりかわしそう……だと思ったのに、少し顔色が悪くなった気がする。



 「なんだ、心当たりがあるのか?」

 

 「そ、そんな事は……」



 なんだろう、二人の間に何が……イザベルが逃げてしまうような何かがあったという事?


 気になる!


 野次馬根性的な気持ちが湧きあがっているところに、今度は物が倒れる音がしてくる。



 ――――ガタガタッ!バタンッ!!――――



 「何の音?!」



 辺りを見回すと、行きと同じようにマリーが荷物の上で倒れている姿が目に入ってくる。



 「マリー!!」



 皆が駆け寄ろうとしたところに、ガイアス卿が船長室からスッと現れた。


 そして行きと同じようにマリーを軽々と抱き上げ、こちらに歩いてくる。


 また船酔いで倒れてしまったのね……そう簡単に慣れるものでもないし、もっと気かけてあげていれば良かった。



 「マリー!大丈夫?!」


 「恐らく船酔いでしょうから下で休ませます」


 

 青い顔をしているマリーに代わって、私の言葉に答えてくれたガイアス卿……マリーの為に……優しいわね。


 

 「ありがとう、ガイアス卿」



 お礼を伝えた時、マリーの瞼がゆっくりと開いたのだった。



 「すみません、お嬢様…………あれほど言われましたのに」


 「いいのよ、マリー。気にする事ないわ。ゆっくり休んで」


 「やはり船は、慣れる事はありません、ね…………」



 そこまで話して気持ち悪いのか、また目を閉じてしまう。


 大丈夫かしら……心配する私達の前で、あまり笑わないガイアス卿が柔らかい笑みを浮かべながら「慣れてもらわなくては困る」とマリーに言い出した。


 マリーは何とか重たい瞼を開け、ガイアス卿に聞き返す。



 「なぜです?」



 私たちもガイアス卿の意図が分からず、目が点になっていた。


 マリーが船に慣れないとなぜガイアス卿が困るのかしら。


 もう船に乗る事はほとんどない――――

 

 そう思っていたのに。


 次に卿が発した言葉で、マリーの船酔いも私たちの杞憂も全て吹っ飛んでしまう。

 

  

 「私があなたに結婚を申し込もうと思っているからだ。共に船に乗れないだろう?」


 「「え」」



 今、なんと?


 マリーに結婚を申し込むって言ったの?


 ガイアス卿が?


 あまりにびっくりし過ぎてヴィルの方を向くと、ヴィルも開いた口が塞がらない状態だった。


 当の本人であるマリーは魂が飛んで行ってるような表情――――



 「「「えええええええぇぇぇぇ?!!!!」」」



 空は快晴。


 皆の絶叫が響き渡る中、船はゆっくりとハミルトン王国へ向かうのだった。

 


 第三部・完



 ~・~・~・~・~


 <あとがき>


 ここまでお読みくださり、誠にありがとうございます!!<(_ _)>

 第三部終わりました~~謎が多かった第三部でしたが、ラスクルとソフィアのところ以外は回収出来たかな?

 この第三部はマリアのターンなのでした!

 第二部まで書き終えた時、マリアちゃん、めちゃくちゃいい子なのに無理やり召喚されて、いいように利用されて、ハイ終わり、じゃ可哀想すぎる。

 という想いがあり、どうしても彼女が活躍するお話を作りたくて第三部が生まれました。

 彼女は聖女としてチート能力を持っているんですが、一瞬だけ闇落ちしそうだったんですけどオリビアが救っていたんですね~~こっちの世界のお母さん的な存在のオリビア大好きっ子です^^

 ハチャメチャなところはありますが、基本的に人が好きで大好きな人の為に動く人間という事で、彼女が聖女で良かった!

 マリアはレジェク殿下の事も色々と可哀想だと思っていて、彼の為に最後ドカーンとやった部分もありましたが、結果、殿下に執着されるようになってしまったという……アーメン。

 今のところレジェク殿下とマリアのところは殿下の一方通行です。チーン。この後はどうなるか分かりませんけど今のところは……レジェク殿下ガンバレYO!!

 マリーとガイアス卿のところはサプライズなのでした~~でも海の男と世話焼き侍女の恋、いいよね!!

 このお話のタイトルは大好きな映画の”海の上のピアニスト”っぽい感じにしてます。私の趣味全開ですみません!

 マリーは自分に無頓着なので、このぐらいグイグイこないと自分の幸せほったらかしにしちゃうから、という老婆心なのでした。

 お嬢様がご結婚なさるまで自分の幸せは!!とか言いそうなので、まだまだ結婚は先かもですね~~マリーにも幸せになってもらいたい(*´ω`*)

 

 そして第四部はソフィアのターンになります~~色々な主要キャラクターSideをお話の途中に書いてきましたが、ソフィアSideだけは今まで書いてきませんでした。

 彼女の出自はなかなか複雑で、レジストリック人とナヴァーロ人のハーフです。

 なぜハミルトン王国にいたのか、孤児になっていたのか、彼女に昔の記憶はあるのか、ラスクルとの関係など……第四部で全部明らかにする予定です。

 割と早めに分かると思います!

 多分第五部で本編完結するのではと……ぼんやりと構想は練ってあります^^

 第四部は冬の間に連載・完結させます!頑張ります!!

 30話くらい書き溜まったら連載する予定です。

 今回途中で長い間連載ストップしてしまい、大反省しております……定期連載中にそういう事がないように気を付けたいと思います!

 再開まで待っていてくださった読者の皆様には、本当に感謝感激です(涙)

 第四部までしばしお休みになりますが、また連載再開しましたら読んでいただけると嬉しいです~~(*´ω`*)


 ではでは、読者の皆様に多大なる感謝と愛を込めて。



 Tubling

 

こちらWeb版になります!


もし続きが気になったり、気に入って下されば、ブクマ、★応援、いいねなど頂けましたら励みになります(*´ω`*)

皆さまのお目に留まる機会が増えれば嬉しいです^^


オリビアとヴィルヘルムや登場キャラクターが成長していく姿をじっくり書いていきたいと思っております。

彼らが歩む道を見守っていただければ幸いです。

何卒宜しくお願い致します<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミックス第一巻予約開始!!5/29発売!!!
素晴らしく美麗な書影は解禁までもう少々お待ちください(*´ω`*)
⇩⇩ご予約はこちらから受付中⇩⇩

Amazon様

楽天ブックス様


コミカライズ配信開始しました!!
Palcy様にて先行配信中です!作画は端野洋子先生(*´ω`*)
べらぼうに面白い物語になっておりますので、ぜひ読んでみてください~~°˖✧˖°
i932395
書籍第一巻、絶賛発売中です!!
領地編と王妃殿下のお茶会閉幕まで+番外編(領地からの帰り道の出来事)1万字以上収録!購入特典SS(辺境伯令息ニコライの憂鬱)付いてます(*´ω`*)
°˖✧˖°公式HPは下記画像をクリック°˖✧˖°
i912563
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ