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マリアの企み



 ――――ドゴオォンンッ!!!!!ドォォン!!――――



 「きゃあぁぁ!!」「何事だ?!」「伏せて――!!」


 

 何度も繰り返される衝撃音――


 明らかに何かが神殿に衝突している……!!


 地面が揺れ、神殿内部の装飾があちこち崩れてきていた。


 太い柱にヒビが入り、ゆっくりと倒れていく。



 「危ない!!逃げて――!!!」



 ――――ズドォォォオオオン!!!!――――



 私の声などすぐにかき消されていく。


 様々な衝撃で、ここにいる皆が立っていられないので逃げようにも逃げられない……!


 そして神殿内は、阿鼻叫喚の地獄絵図になっていった――――



 「オリビア!!私に摑まるんだ!!!」


 「ヴィル!!」



 私達も当然立っていられず、2人で互いにしがみついているような状態だった。


 これは地震じゃないわ……!



 「噴火?!」


 「それしか考えられないっ!!」



 何度も襲い掛かる衝撃に、まともに会話する事もままならない。


 イザベルとニコライ様も同じ状態の中、マリアだけがその場に立ち、涼しい顔をしていた。


 彼女の体は光り輝いているので、彼女がこの状況を作っているのよね……。


 何をしようとしているのか分からないけれど、マリアを信じると決めたのだから、最後まで信じるわ……!


 神殿に衝突していた岩石は、やがて天井を突き破り、神殿内には次々と落石が降りそそいでいった。


 神殿自体もどんどん崩れていくわ……落石に逃げ惑う人々。


 私は映画のワンシーンを見ているようで、とても現実とは思えない状況に見ている事しか出来なかった。


 その間もドンッ!!!ドオンッ!!と衝撃はとどまることなく繰り返される。


 

 『皆の者!!これはこの国の王であるフィラメル国王への神の怒りに他ならない!!!よく見ていなさい!!!』


 

 マリアが声を上げた瞬間、落石は国王夫妻目掛けて落ちていく。



 「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」」



 大きな衝撃音と共に落ちて来た幾つもの岩石は、国王夫妻目掛けて落石していった。


 もはやそ誰も止めに入る事など出来ない。


 直後に衝撃は収まり、少しの微動、そして辺りは砂煙が舞い上がり、周りがよく見えない中、私とヴィルはしがみついた服や手の感触だけでお互いの生存を確かめながら声をかけ合った。



 「オリビア!大丈夫か?!ケガは?」


 「ゴホッ……私は大丈夫……それにしても、私たちの周りにほとんど落石していないわ」



 私の言葉にヴィルが辺りを見回した。



 「そのよう、だな……」



 だんだんと周りが見えるようになったので、恐る恐る国王夫妻の方へ視線を移す。


 そこには落石に囲まれて白目をむいている2人が倒れていたのだった。


 良かった、直撃はしていないようね……でも、あの落石で、どうして?


 まるで2人を避けながら囲うかのように落石しているわ。


 全てが落ち着いた時、再度マリアの声が響き渡る。


 

 『神は人の道に反する所業をした国王をお赦しにならない。この国は変わる必要があるでしょう……さもなくばまた、このような怒りを受けること、この国の民は胸に留めておきなさい!!』



 マリアが国王夫妻を指さしながら、ここにいる者達にそう告げた。


 彼女の体はまだ光り輝き、まるで神のお告げようだ。

 

 

 「「お、おぉ……聖女マリア様!!」」


 ――――オオオォォォォォォォォォッ!!!――――



 神殿内にいる人々からマリアへ、大きな歓声が起きたのだった。


 ……どういう事?


 ここにいる人々はすっかり神の怒りが国王夫妻に降り注いだと信じ切っているけれど、どう見ても全てマリアが仕組んだ事にしか見えない。


 周りをよく見渡すと、落石はイザベルとニコライ様、レジェク殿下を避けるように落ちてきていて、彼女がコントロールしていた事が窺えた。


 彼らだけじゃない、ほとんどの岩石や倒れた柱、崩れた装飾たちも全て、ここにいる人々を避けていたのだった。



 「やられたな……大した聖女だ」


 「ヴィル。やっぱりそういう事、よね?」


 「ああ」



 私たちが呆れていたところに、舌をペロッと出しながらマリアがやってきた。


 

 「ごめんね~~びっくりさせちゃって!」


 「いや、本当に……何が起こったの?」


 「実は…………」



 マリアは周りの人に聞こえないように、こっそりと耳打ちしながら教えてくれた。


 以前にビシエラ山を調べに行った時、あまりにも溜まっているエネルギーが大きいという話は聞いていた。


 そして噴火口付近のエネルギーはマリアの力で拡散させる事が出来たけれど、地中の溜まりに溜まったエネルギーはマリアの力で無くすことは無理だと悟った時、良い事を思いついたらしい。


 そのエネルギーを自分がコントロール出来ればいいのではないか、と。


 そうすれば噴火も抑えられるし、一石二鳥だと考えたらしい。



 「あの時に仕込んでいたんだ~~いつ噴火するか分からないなんて怖いし!」


 「そうは言っても実際にそれを出来るとは限らないでしょう?!」


 「すっごい頑張ったんだよ~~こんな大きな山を自分の力で包み込むのに何時間もかかっちゃって」



 包み込むって……さすがこの小説の世界でただ一人、チート能力を授かる聖女様はやる事が違う。


 スケールが違いすぎるわ。


 そりゃ教会が召喚したかったのも頷けるわね……小説のままだと誰もが聖女に惹かれ、彼女のいる国は栄えるのだから。

 

 でも小説とは少し違う目の前の彼女は、その力があるからといってお高くとまるわけでもなく、善悪をしっかり考えているから小説よりも凄い聖女かもしれない。


 マリアの素晴らしさに感動している私に、あっけらかんとした口調でとんでもない事を言い始めた。

 

 

 「エネルギーの一部を解放してみたけど、上手くいって良かった」



 可愛らしく、てへへ、と照れながら言っているけど、凄く怖い事を言っているような?!



 「火山噴火みたいに岩肌を爆発させてみたんだ~~岩が良い具合に落ちてくれたのよね」


 「ちょ、ちょっとマリア…………そういう事は力の使い方をもう少し学んでからやった方がいいかもよ?!」



 私が顔を引きつらせながら言うと、



 「なんで?」



 と返してくる。


 とぼけているわけでもなく、本当によく分かっていない表情だ……マリアを信じて任せたのに、まさかイチかバチかだったなんて!


 

 「それにオリビアが言ったじゃない!神に振り回されるなんて冗談じゃないって……私ももう本当にうんざりしてたから。そんなに神が好きなら”神の怒り”でも食らえばいいんじゃないかなって」


 「はは……」



 隣りでヴィルも顔を引きつらせながら笑っていた。


 心中お察しいたします……皆が無事で良かった。


 でもやっぱりまだ女子高生なのねって思える部分があって、少しホッとしたところもある。


 そんなマリアも可愛く思えて、彼女の頭を優しく撫でた。



 「オリビア~~オリビアってお母さんみたい!頑張ったからもっと撫でて」



 そんな事を言いながら私に抱き着いてくるマリアにヴィルがまた対抗心を燃やしている。


 私は全力でスルーしながら、マリアの頭を撫で続けた。

 


 「国王へのオリビアの叫びもスッキリしたな~~」


 「ふふっ、あははっ、叫ぶとスッキリするわね!」



 私たちは安堵し、心の底から笑ったのだった。


 さっきまで捕らえられるかと思って地獄にいるような気持ちだったのに、ホッと胸を撫でおろす。


 そこにレジェク殿下の声が響き渡った。



 「父上!母上!!」



 国王夫妻に駆け寄り、必死に声をかける殿下の姿があった。


 それを見たマリアが「あ、ヤバ……」とバツが悪そうな表情をする。


 しかし私たちの心配をよそに、殿下からはまさかの言葉が飛び出してくるのだった。



 「父上、母上、我が国の事は私にお任せください。レジェクが必ずや国を発展させ、神の御威光に沿う政治をしてみせますゆえ。皆の者、父上と母上を連れて行き、北の塔にて休ませるのだ。神の怒りを買った者だが仮にも元国王夫妻だからな……しかし塔からは出すな」


 「「は!」」



 レジェク殿下の凄さを見てしまった気がする。


 ここぞとばかりにマリアの作戦に乗り、完全に国のトップが変わろうとしていた。


 そしてひとしきり衛兵に指示を出すと、こちらに向かって足早に歩いてくる。


 マリアはやり過ぎたと思ったのか、私の後ろに隠れながら去ろうとするもレジェク殿下に呼び止められてしまう。



 「マリア、待って!!」



 マリアは恐る恐る振り返り、レジェク殿下に謝ろうとした。



 「あのー……殿下、ごめんなさい。私……」



 私たちも固唾を飲んで見守っていたけれど、どうやらそんな心配は無用だったようだ。


 殿下はマリアに駆け寄り、彼女を天高く抱き上げて喜びを露わにする。



 「きゃあぁぁぁ!!」


 「マリア、ありがとう!!君が女神だったなんて知らなかった!」


 「私だって知らないわよぉぉぉ!!どういうこと?!」



 殿下は完全に心酔している様子。


 高い高いをされている子供のように天高く抱き上げられたマリアは「下ろしてぇぇぇぇ」と叫び、地面に下ろされた時にはゲッソリとしていたのだった。



 「マリア、良かったわね。殿下が怒ってなくて……ふふっ、ふふふっ」


 「他人事だと思って!」



 私は笑いを堪えるのに必死だった……だって殿下が、マリアからくっついて離れないから。


 その後、仕切り直しの式典やパーティーは場所を移してレジェク殿下が引き継ぎ、しっかりと王族としての役目を担い、建国祭一日目の後半はつつがなく終わりを迎えた。


 部屋に戻るとマリーやソフィアがとても心配していたけれど、私たちの無事な姿を見て安心し、最後の温泉を皆で堪能して眠りに就いた。


 私たちのこの国での役目もようやく終わりを迎える――――翌日、早朝から身支度を済ませ、帰りの船に乗る為に皆で港へと向かったのだった。


 

 ~・~・~・~・~


 第三部、あと一話になります!

 第三部最終話のあとには、あとがきも書いて載せてますので、そちらも読んでいただければ幸いです~~(*´ω`*)

 次話もドタバタですが、最後までよろしくお願いいたします!<(_ _)>

こちらWeb版になります!


もし続きが気になったり、気に入って下されば、ブクマ、★応援、いいねなど頂けましたら励みになります(*´ω`*)

皆さまのお目に留まる機会が増えれば嬉しいです^^


オリビアとヴィルヘルムや登場キャラクターが成長していく姿をじっくり書いていきたいと思っております。

彼らが歩む道を見守っていただければ幸いです。

何卒宜しくお願い致します<(_ _)>

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