炭鉱での事故
大変お待たせしてしまって申し訳ございません!!<(_ _)>
ようやく第三部最終章再開いたします~~ここからはなるべく毎日更新していく予定ですので^^
そして毎度の事ながら最終章は怒涛の展開になります!
最後までお付き合いいただければ幸いです~~よろしくお願いいたします!!(*´ω`*)
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「こうやって外で食べるのも良いものですね」
レジェク殿下が微笑みなが食べ物を頬張っている。
王太子だからこういった事は苦手かとも思ったけれど、心配はなさそうね。
「殿下は初めて?」
「ええ、このように敷物を敷いて皆で食べるというのは、初めての試みです。普段食べているようなモノもなぜだか美味しく感じてしまうものですね」
王太子という地位は傍から見れば羨ましいものかもしれないけれど、同時に窮屈な場面も多々あるように見える。
一般人が経験するような事も制限されてしまうし……こういった楽しみ方を知らないという事は、ある意味可哀想だなと感じてしまったり。
ヴィルなんかは領地に来た時とか、かなりハッスルしてたもの。
当の本人はレジェク殿下に「なかなか良いものなんですよ」と得意げに言い始めた。
「そうですね、とても良いものだと思います」
殿下は本当に感動しているのか、素直に認めて嬉しそうにマリーのお手製弁当をモクモク食べている。
あら、可愛いところもあるじゃない。
私はソフィアの食事の手伝いをしながら、皆との会話を楽しみ、あっという間に楽しいランチの時間は過ぎ去っていったのだった。
「ん~~沢山食べたわね!」
マリーの料理って本当に美味しいのよね。
しっかり堪能した私の隣でマリアが「お腹、苦しい……」と言いながらお腹を抱え、辛そうにしている。
パクパク食べていたのは知っていたけれど、やっぱり食べ過ぎていたのね……声をかけてあげれば良かったかしら。
私が彼女の背中をさすってあげていると、マリアの体が突然ビクッと反応し、体を起こした。
「みんな、伏せて!!」
「え?」
「早く!!」
物凄い緊張感が漂う声だったので、ソフィアを抱えて地面にうずくまると、ほとんど同時に何かが墜落したかのような爆発音が響き渡った。
――――ドオオォォォォンッッッ!!!!!――――
「………………ッ!!」
ソフィアを怖がらせたくはなかったので、声を出さないように我慢しながら彼女を抱きしめる。
小さな体が震えているわ……安心させるように背中をさすってあげると、少し落ち着いてきた様子だった。
「これは何の音?!」
一度だけ大きな爆発音が聞こえたあとは地鳴りが続くだけだったので、原因は何かと声をあげると、遠くから男性が走ってきて「炭鉱で事故が起こった――!!」と叫んでいるのが聞こえてきた。
マリアは体を起こし、何が原因か教えてくれる。
「多分ガスが発生してしまったんじゃないかしら。山は遠いし、地震でもない……今もガスの気配を感じる。この辺は森林や川が多いから炭鉱がそこかしこにあるわ。そうよね?ラス」
「ええ、少し歩きますが近くに何か所かありますよ。さすが聖女様だなぁ」
ラスの言葉にマリアは「冗談言ってる場合じゃないの」とツッコんでいた。
「そんなに沢山、炭鉱があるの?」
私がレジェク殿下の方を見ると、殿下は気まずそうに頷く。
でもそんな事よりもおかしな事は、湖にいる人々があまり慌てていないという事。
皆、口々に「また?」「すぐにおさまるでしょ」「うるさいなー」などと他人事のような口調で話しているのだ。
「どういう事?事故が起きたなら人命救助に向かわなくてはならないでしょう?!どうしてこんなに……」
「それは…………」
私の問いにも殿下からは全く歯切れが悪い言葉しか返ってこない。
もういい加減しびれを切らした私は、みずから動く事にしたのだった。
「分かったわ、この国の人が動かないなら私が行きます」
「オリビア!」
ヴィルが慌てて止めようとしたけれど、私の決意は固いのよ。すぐ近くで事故が起きているのに誰も救助に向かわないなんて。
「危ない事はしないわ。ただ怪我人がいたら放っておけないから」
それにレジェク殿下の様子を見る限り、嫌な予感しかしない。早く確かめなければ――――
「オリビアが行くなら私も行く!!」
「私もお供します」
マリアとイザベルが声を上げてくれる。
友達ってありがたいわね……マリアは治癒も使えるし、一緒に来てくれたらとても助かる。
「レジェク殿下、何も言えないなら案内くらいはしてくれるわよね?王太子ですもの、場所くらいは分かっているはずでしょうし」
「え、ええ……」
思い切り睨みを利かせて炭鉱の場所を聞くと、やはり歯切れの悪い返事しか返ってこない。
そうよ、これほど皆が無関心なのだからすぐに気付くべきだった。
「炭鉱で働かされているのは、ほとんどがこの国の者ではないのね?」
「………………っ!」
図星だったのか言葉がない様子だった。
ソフィアの事はマリーとゼフに任せ、残りのメンバーで炭鉱まで案内してもらっている間に殿下からこの国の話を聞く事が出来た。
炭鉱開発を始めたのは10年ほど前からで、ようやく軌道に乗り始めたのは2、3年ほど前から。
ヴィルは幼少期から人身売買について調査していたと言っていたけれど、ハミルトン王国で人身売買が禁止されてもこれだけ横行しているという事は、我が国以外からも沢山の人々が連れて来られ、働かされているのだろう。
国王の決定は神の意志で絶対、分かっていてもどうにも出来ない……レジェク殿下も大変な立場ね。
「神の意志、神の鼓動…………うんざりね……」
「本当!神が怖くて聖女なんてやってられないもの」
マリアが明るくあっけらかんと言い放つので、思わずクスッと笑ってしまう。
「国賓として招いた方々にこんな事をさせたとなっては……」
私たちが急いで向かっている間もレジェク殿下はブツブツとぼやきが止まらない様子だった。
だんだんと腹立たしくなってきてひと言物申すべきかしらと思っていると、マリアが殿下の前に立ちはだかり、私の言いたかった事を代弁してくれたのだった。
「何よ、国の威信に関わるとでもいいたいわけ?それともパパ(国王)に怒られるのが怖いって言うの?」
「……わ、わたしはっ」
「他国から連れて来たとは言え、自国の民が苦しんでいるのに放っておく方が国の威信に関わるわよ。神だの、パパだの、くだらない。そんなものより、あなたはこの状況でどうするべきだと思ったのよ!!」
マリアの剣幕に皆が足を止め、静まり返った。
きっとそれはマリアがこの世界に来てから、ずっと大事にしていた気持ちなのだと思う。
マリアに問いかけられたレジェク殿下は、俯いていた顔を上げ、ポツリと呟く。
「このまま放っておくべきじゃないと思っています」
「そうこなくっちゃ!よし、じゃあ向かうわよ」
「はい」
そこからはブツブツとぼやく事もなく顔を上げ、迷わず炭鉱へと向かっていく殿下の背中は、前よりちょっぴり頼もしくなったような気がしたのだった。
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オリビアとヴィルヘルムや登場キャラクターが成長していく姿をじっくり書いていきたいと思っております。
彼らが歩む道を見守っていただければ幸いです。
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