オリビアとの出会い、闇堕ちしかけた時、そして聖女としての役目 ~マリアSide~
どうしても元の世界に帰る手段が見つからず、気持ちは重いままだったけれど、郷に入っては郷に従え精神で仕方なしに教会の奉仕活動の手伝いをしていた。
聖女の力も使いこなせるようになり、それなりに人の役にも立ち、周りからは聖女様と崇められる日々……でもそんなものが私が失ったものに勝てるわけがなく、時間だけが虚しく過ぎていった。
オリビアの事を最初に見たのはそんな時だったと思う。
奉仕活動の一環として、ヴィルと護衛達で王都の街中を回っていた日――――ちょうど中心部を回っていたら、突然爆発騒ぎが起こった。
私が駆けつけようとすると「聖女様に何かあれば民が動揺する!」とヴィルに言われたけれど、そんな事知っちゃことじゃないわ!と現場に駆けて行った。
目の前の人を救えなかったら、私がこの世界にいる意味すらもなくなっちゃうじゃない……!
そうして駆けつけた先にひと際美しくて、いかにも貴族令嬢という女性が消火活動を行っている姿が目に入ってくる。
「オリビア?リチャード?どうして君たちが…………」
ヴィルがその女性をオリビアと言っていて、噂の婚約者なのだと直ぐに認識する。
すっっっごい美人……ヴィルに勿体ないくらい聡明そうだし。
彼女は自身が汚れてしまう事も気にせず、自分の出来る事で鎮火しようとしていて、その姿を見て、私も自分の出来る事をやらなくてはと、初めて大きな力を使って雨雲を呼び寄せた。
一度コツをつかんでしまえば出来るもので、この力を使うのもなかなか楽しいものね。
そうして見事鎮火に成功する。
よかった……やれば出来るってこういう事よね。
そんな達成感でいっぱいだった私の目に飛び込んできたのは、馬に跨り、ヴィルに挨拶をするオリビアの姿だった。
「それでは、王太子殿下。ごきげんよう」
な、なに、今の…………漫画とかで出てくる悪役令嬢みたいな感じじゃない……?
カッッッッッコよすぎっっ!!!
颯爽と馬で駆けて行ったオリビアは、私が見た中で一番カッコいい貴族女性になったのだった。
置いていかれた時のヴィルの表情も凄く良かったのよね。
普段は王太子だから俺様で本当に可愛げがないけれど、オリビアにさよなら言われると、あんなに慌てて捨てられた犬みたいになってしまうとは。
これは揶揄い甲斐があるというもの。
私はその場に置いていかれてしまったので、後で嫌味の1つでも言ってやろうと息巻いたのだった。
オリビアとどうしても仲良くなりたくて公爵邸に突撃し、すぐに仲良くなって、あの事件があって…………聖ジェノヴァ教会は、オリビア達の活躍によって崩壊する事となった。
こう言ってはなんだけど、精々した。
勝手に召喚し、私が気付かないのをいい事に力を犯罪に利用されていたなんて。
「なんで私がこんな目に遭わないといけないのよ」
自分でポツリと呟くと、どんどん黒い気持ちが湧き上がってくる。
教会はなくなったけれど、受けた傷は大きく、許せない、悔しい、理不尽、こんな世界なくなってしまえばいいのに――――
そんな鬱々とした気持ちを抱えていた時に、オリビアにお礼を伝えたくて公爵邸へ行くと、お泊りする事に。
オリビアは自身が転生者だと言う。
自身は若くして病死、子供とももう会えなくて……そんな事…………
私は召喚された者だけど、同じ日本人として夜な夜な語り明かした時の事を思い出すと、今でも胸が温かくなる。
私の力がこれ以上利用されない為にデラフィネを全て処理してくれた話も詳しく聞いて、胸の中の黒い気持ちがスーッと解けていくような気がした。
「オリビアってお母さんみたい」
私がそう言うと、彼女は嬉しそうな、少し哀しそうな、複雑な表情を見せた。
確かに亡くなる前はお母さんだったのだけど、そうじゃなくて……なんて言うか、いつも誰かの為に動いているし、愛が大きいというか。
多分彼女がいてくれたから、こちらの世界で頑張ろうと前を向く事が出来たのだと思う。
オリビアは私を元の世界に戻したいと思ってるみたいだけど、私はだんだんとこの世界に順応してきているのか、前よりはそういう気持ちは薄れてきている。
親は心配しているだろうな……と思うと胸が痛む時はあるけれど。
せめて無事だって事を伝えられたらいいのにな~なんて。
そんなこんなで事件後のハミルトン王国では、聖ジェノヴァ教会の元信者たちが暴れる事が多くて、私が地方行脚しながら彼らの心を癒す日々を送っていた。
元々外国語科を専攻していたのも色んな国を巡りたいという気持ちだったから、この職は私に合っているかも?
「聖女様、こちらはこの土地の特産物でして」
「聖女様、この土地での資源は」
その土地に住む人々の色んな話を聞き、時には食べ物をいただいたり、お土産をもらったりと割と楽しい日々。
そんな時にヴィルとオリビアがドルレアン国に行くという話を陛下から聞く事となる。
私が地方行脚している事に感謝の意を示す為に陛下が私の願いを聞いてくれる、というありがたいお話をいただいて、応接間で話をする機会があったのだ。
「え゙、ヴィルとオリビアがドルレアン国に?!」
「そうなのです。なかなか難しい国なのですが、建国祭は我が国も行かないわけにはいかなくて」
「じゃあ、私も一緒に行きたいです!お願いはそれでいいですか?」
「え、ええ。もちろん。そんな事でいいのですか?」
陛下は驚きながら聞き返してくれたけど、私の気持ちは決まっていた。
「もちろんです!!」
ハミルトン王国以外の国に行く事が出来るのも嬉しいし、あまり良い国ではないなら、きっと私の力がオリビアの役に立つはず。
こうして無事に(?)皆と一緒にドルレアン国に行く事ができた私は、異世界で帆船に乗る事も出来てウキウキな旅を満喫していた。
そう、ドルレアン国に着いて、ラスに出会う前までは。
出迎えてくれた要人の中に通訳として交じっていた彼は、見た目は天使のようなのに彼からは良くないもの感じてしまう。
私は聖女としてこの世界に召喚されたわけだけど、自分の力には色々なものがあって、自然を操る力、植物に働きかける力、治癒する力――――中でも治癒能力の一種なのか”病気”が見えてしまう時があるのだ。
彼の中で小さな病魔が巣食っているのが見えてしまう。
いや、楽しい旅行を満喫とか言ってる場合じゃない。
一緒に王都を観光していてもラスの存在が気になって仕方ないのよね。
「あんたも、何か困った事があったら私の聖力で助けてあげなくもないわよ」
「…………大きなお世話です」
「何よ、赤くなっちゃって~~」
まだ病魔は小さなものだ……この国から帰る時くらいには、気を許してくれるかな。
ちょっとガードが固い感じがするから、多分私が病気の事を話しても逃げていきそうな感じがする。
どうして生意気な態度をしているのか分からないけれど、どうにか仲良くなって、治してあげなくちゃね!
そんな事を考えながら迎えたこの国での三日目の朝、私は皆と別行動を取る事にした。
オリビアとヴィルは炭鉱を見学に行くというので、マリーやソフィアたちと一緒に王城の前で彼らを見送る。
「行ってらっしゃい。私は今日はビシエラ山について調べてみるわね」
「マリア、ありがとう」
自然からエネルギーを感じる私は、この国に降り立ち、火山に近付くにつれて物凄いエネルギーが地中に溜まっているのを感じてしまう。
火山性微動の多さ…………レジェク殿下やこの国の民は神の鼓動だとうっとりしているけれど、それで済ませていいものではない。
温泉の時にオリビアには詳しく話さなかったけれど、私の中では確信していた。
この火山は近い内に噴火するかもしれない。
このままエネルギーが溜まり続けたら。
微動の数が明らかに多いし、きっとこのエネルギーも私しか感じる事が出来ないものなのだと思う。
そしてその力を何とか出来るのも自分しかいないかもしれないという思いもあり、オリビア達が炭鉱を見に行くという日に、別行動をさせてもらい、ビシエラ山について調べようと考えたのだった。
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次回で一旦マリアSideは終わりになります~~水曜日あたりに更新予定です!
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オリビアとヴィルヘルムや登場キャラクターが成長していく姿をじっくり書いていきたいと思っております。
彼らが歩む道を見守っていただければ幸いです。
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