いきなり召喚された先は異世界だった件 ~マリアSide~
私、笹黒真莉愛は県立商業高校に通っていて、国際コースでは外国語科を選び、将来は海外に渡って様々な活動が出来ればと考えていた。
いつもの家族との日常、いつもの通学路、いつもの学校。
そんな日々が積み重なって年を取っていくと思っていたし、疑うこともなく過ごしていたある日、突然その瞬間はやってくる。
学校からの帰り道、バスも降りて自宅に向かって歩いていると、突然足元に古代文字のような模様が地面に浮かび上がり、光り輝いた。
そしてなぜか私の足は全く動かす事が出来なくなる。
「何?!何が起こってるの?!動いて…………私の足っ!!」
自分の手を使って足を持ち上げようとするも、地面に縫い付けられているのではというくらいに動かす事が出来ない。
「どうなってるの?!ちょっと、動きなさいよ!!」
明らかに周りの人から見たら変質者だし、最悪!
そう思っていたのに……誰も私を気にする素振りもない。うそでしょ……?
私が、見えていないの?
そう思うと、途端にゾッとして背中が粟立つ。
まさかそんな……そんな事…………いやだ。
「冗談でしょう?!!」
叫んだ瞬間、目の前の景色は住宅街から真っ暗な地下室へと変わっていたのだった。
室内は狭いのか、私の「冗談でしょう?!!」という声の余韻が響き渡っている。
何、ここ…………さっきまで住宅街を歩いていたはずよ。もうすぐ自宅が見えてくるところまで歩いていたのに、一瞬で景色が変わるなんて事、ある?
それにこの周りにいる人達って、誰?変なフード被ってる人もいれば、頭のてっぺんがつるつるで……こういう頭ってトンスラって言うんだっけ。
皆ダルマティカを着ているのを見ると、聖職者なのかな……授業で習ったような事を頭で思い浮かべてみたけど、今はそれどころじゃない!
「あの…………ここってどこですか?」
どうしてこんな事を聞かなきゃいけないのか、訳が分からなかった。
でも相手の怒りを買いたくなかったので、努めて丁寧に聞いてみる。
私の質問に周りの人達はコソコソと話し合いを始める。
そういえば私の言葉ってここでは通じるの?
そんな私の心配は、人だかりの奥からやってきた一番偉い感じの美しい男性が解消してくれたのだった。
「ここは聖ジェノヴァ教会の地下室になります。ようこそこの世界においでくださいました、聖女様。あなた様をとても長い間お待ちしておりましたよ」
怖いくらい美しい男性…………こんなに綺麗な笑顔なのに目が全く笑っていないわ。
この人危ないって私の勘が言っている。
それに聖ジェノヴァ教会?
まったく聞いた事のない教会名に、物凄く嫌な予感が頭を過ぎっていく。
「あの…………日本って知ってます?」
「日本?ああ、あなた様が今までいらっしゃった国ですね。日本と言うのですか……残念ながらこの世界でそのような国はありません。我々は長い間、聖女様を召喚する術を研究してきました」
「はあ?!!!」
あまりに綺麗で晴れやかな笑顔で私にそう告げてくるので、素っ頓狂な声が出てしまう。
その後からは衝撃過ぎて、何を言われたのかあまり覚えていない…………とりあえず、ここは日本という国のない世界で、私はこの人たちに召喚されたという事だけは理解出来た。
そして私がこの国では聖女と呼ばれる人間であり、唯一無二の存在であるという事も。
それを告げられた私が喜ぶと思ったのか、目の前の美しい男性はうっとりとしながら聖女について語っている。
は???この人ア〇じゃないの?????
家族から突然引き離されて見知らぬ世界に無理矢理強制瞬間移動させられたのに、唯一無二の存在になれたからヤッター!って喜ぶ人間がどこにいるのよ。
ダメだ、この人じゃ話にならない。そう思った私は、目の前の美人さん(もはや名前なんてどうでもいい)に一つ質問をしてみる。
「ねぇ、この国で一番偉い人のところへ連れて行ってくれない?」
私の言葉に周りの聖職者たちから不満の声が出始める。
目の前の男性がきっと教会で一番地位が高い人なのよね。
その人を差し置いて、国のトップを出せと言っているのだから反発されても仕方ないとは言え、こちらも必死なのよ。
私の言葉に美人さんはニッコリと笑い、「ではあなたを国王陛下のもとへお連れいたしましょう」とだけ告げる。
相変わらず目が笑っていないから、怖いったらないわ……でも国王陛下のところへ連れて行ってくれるというのだから、それに乗っからないとね!
教会から国王陛下に会う為の衣服をもらい、それに着替えて謁見しなくてはならなくなったのだけれど、謁見の許可が下りたのが翌朝でそれまで悶々とする羽目になったのだった。
~・~・~・~・~
「あの――、ここってどこなんですか?どうして私はここに連れて来られたのでしょうか。今すぐ元の世界に帰してくれません?!」
国王陛下に謁見出来たのをいい事に、この世界に来てからの鬱憤を晴らすかのように気持ちを吐き出した。
せっかく陛下に聞いているのに、なぜか一緒に来た大司教が答え始める。
「あなたは異世界から我が国に召喚されたのです。ここで暮らし、この国の為に力の使い方を勉強して、貢献しなくてはならないのですよ」
は???この人、最初から頭のネジが飛んでいると思ってはいたけど、ここまで飛んでいたとは。
「え、どうして私がこの国の為に貢献しなくてはならないの?私はこの国に何の思い入れもないし、そちらが勝手に召喚したのでしょう?!筋が通ってません!」
なぜ私がこの国に貢献するのが当たり前みたいに話しているのだろうか。
カッコ良ければ何言ってもいいと思ってる?
私と大司教のやり取りが全く嚙み合わないと察したのか、高貴な身分っぽい男の人が、やっと話が通じそうな事を言ってくれたのだった。
「分かった。ひとまず状況を整理する必要があるから、私が世話をしましょう。ここ王宮には若い侍女も沢山いる。少しは気も和らぐでしょうから」
なんだか言いくるめられたような気がしなくもないけれど、とにかく色々な事をきちんと話せる人が必要だと思った私は、この男の人にひとまず付いて行く事を決意する。
彼はヴィルヘルムと名乗り、どうやらこの国の王太子殿下という身分らしい。
一応ロイヤルファミリーについては知っているつもりなので、彼が王子様で次期国王である事は理解する。
そして彼には相思相愛の婚約者がいるという事も。
その婚約者はオリビアという名前らしい。
貴族の女性っぽい綺麗な名前……この時の私は、オリビアとの出会いがこの世界での生き方を変えていくキッカケになるとは、思ってもいなかったのだった。
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マリアSideは恐らく3話分になります~~お付き合いいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします!<(_ _)>
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オリビアとヴィルヘルムや登場キャラクターが成長していく姿をじっくり書いていきたいと思っております。
彼らが歩む道を見守っていただければ幸いです。
何卒宜しくお願い致します<(_ _)>






