盛り上がった腕相撲大会
腕相撲をするステージは地面から1mくらい高く作られ、その上にテーブルくらいの高さの台が設置されており、その上で腕相撲をするといった感じだった。
男性の部と女性の部で分かれていて、イザベルは女性の部にエントリー。
女性とは言え体格が良さそうな人ばかりで、最初は女性の部から始まり、イザベルの対戦相手の女性は彼女の1.5倍くらい大きかった。
イザベルがとても小さく見えてしまうわ。
大丈夫かしら……力の限りイザベルを応援しなきゃ。
「イザベル――!!頑張って!!!」
皆の応援が聞こえたのか、少し頷いた後、スタートの合図とともに始まる。
でもあれほど体格差があるにもかかわらず、一瞬で相手をノックアウトし、無事に一回戦は勝利!
「きゃ――イザベルやったわ!!」
「すごーい!」
私とマリアは歓喜の叫び声を上げ、ソフィアとマリーも一緒に喜んだ。
当の本人は涼しい顔をして戻ってくる。
「イザベル凄いわ!」
「恐れ入ります。さほど体力を消耗せずに済みました」
ちょっと掃除してきたみたいに言うのね……でも心なしか楽しそうに見えるわ。やっぱり日頃から鍛錬している人は、こういう時に力を試したくなるものなのかしら。
「次はゼフたちの番じゃない?」
「あ、本当ね。応援しなきゃ」
ゼフはこちらが応援する間もなく、対戦相手を一ひねりでたおし、一瞬で勝利をおさめていた。腕相撲なのに対戦相手が一回転してしまっている。
「ゼフって凄い……負ける気がしないわね、ソフィア」
「うん、ゼフ勝ってよかった」
「次はレジェク殿下よね」
私たちが固唾を飲んで見守っていると、レジェク殿下はいい勝負をしたものの惜しくも敗れてしまったのだった。
まぁ、彼は肉体派という感じではないものね。
こちらに戻って来ようとしている姿が目に入ったけれど、なんとなく腕相撲をした腕を気にしているようにも見える。
「腕を痛めたように見えるわ」
私がポツリと呟いた言葉をマリアは聞いていて、「あ、本当だ。腕相撲しそうにない人だし……ちょっと私、行ってくる!」と言って、一目散に走って行ったのだった。
彼女の聖力って傷を癒す事も出来るのかしら。
聖女って凄い。それにマリアは思った事を正直に言うだけで、困った人を放っておけないし、とても優しい女の子なのよね。
遠目からレジェク殿下の傷を治している様子を見て、思わず微笑ましく感じてしまう。
「オリビア様、次は王太子殿下が」
イザベルに言われてステージの方を確認すると、ヴィルが登場し、お相手はヴィルの二倍はありそうな巨漢だった。
こんなの勝てるわけないわよ……。
「体格差があり過ぎるわ。体重別とかはないの?」
「そのようなルールはないようです。でも殿下なら大丈夫かと思います、オリビア様の応援があれば」
え、そんなものかしら?
さり気なくイザベルにヴィルを応援してあげてほしいと言われている気がする。
私の応援があれば勝てるようにも見えないのだけれど……でもやれる事はやってあげないとね。
「分かったわ、じゃあ応援するわね。ヴィル――――!!頑張って――!!!」
何となくこちらを見たような?
次の瞬間、巨漢の大男を相手にあっという間に勝利をおさめたヴィルは、こちらに向かって嬉しそうに手を振っていたのだった。
「勝ったの?本当に?!」
「やはり殿下にはオリビア様の応援が一番効きましたね」
そんな事ってあるのかしら……あまりにも信じられない現実に呆気に取られてしまったけれど、勝利したのは喜ばしい事よね。
「では私も二回戦が始まりますので、そろそろ戻ります」
「ええ、頑張ってね、イザベル!」
「はい!」
力強く返事をしたイザベルはステージの方へ戻っていき、二回戦に参戦するとまたしても軽々と勝利。
その後もとんとん拍子に決勝まで駆け上がり、なんと優勝してしまったのだった。
「イザベル様って本当に強いんですね~」
ラスが関心の声をあげるけれど、私には強すぎて少し怖くなるくらいよ。
「強いなんてものじゃないわ。男性の部に交ざっても勝てそうよ……イザベル恐るべしね」
あの細腕のどこにそんな力が?!
そして強すぎると言えばゼフとヴィルよ……あの2人ももはや人の域ではないのかもしれない。
決勝がゼフVSヴィルだなんてっ!
あれほどの屈強な男性陣を次々に倒していくほどのポテンシャルを持つ護衛と王太子、凄すぎてギャラリーが引いてるわ。
「どうせ応援するなら前の方で応援しましょう」
「そうですね。ソフィア様ははぐれないように僕と一緒に行きましょうか」
「うん!」
ラスはソフィアに対しては本当に優しいお兄ちゃんって感じね。
二人のやり取りを微笑ましく見守りながら、最前列へと潜り込ませてもらったのだった。
「ヴィル、ゼフ!頑張って!」
「オリビア!……本気でいくぞ、ゼフ」
「承知いたしました」
今まで本気じゃなかったという事?
ヴィルの言葉を聞いて驚いていると、スタートの合図が響き渡り、2人の戦いの火ぶたが切って落とされた。
「ぐっ………………っ!」
「……………………」
ヴィルは最初から全力を出しているにも関わらず、ゼフの顔色が全く変わらずビクともしない。
これは勝負あったわね。
私がそう思った次の瞬間にゼフが本気をだし、バターンッ!!という大きな音と共にゼフの勝利が確定したのだった。
『勝者、ゼフリー!!!!』
――――ワァァァァァアアアア――――
大歓声が上がり、ゼフは屈強な男たちに担ぎ上げられてしまう。
そして腕を抑えながらしょんぼりと戻ってくるヴィル。
「お疲れ様、ヴィル。決勝まで勝ち上がるなんて凄いじゃない!」
「オリビア、君の応援があったからだ。ありがとう」
さっきまでとても落ち込んでいたようだけれど、褒めたらあっという間にご機嫌になってくれたわ。
エントリーしている顔ぶれを見て、正直ヴィルがここまで勝ち上がるとは思っていなかったので、素晴らしいんじゃないかと思う。
相手が悪かっただけよね、ゼフが超人過ぎるもの。
当の本人は猛者たちに担ぎ上げられて、しばらく戻ってくる気配はない。
「ゼフはどうしようかしら」
「………………あれはひとまずあのままにしておこう。ゼフにはやってもらいたい事もある」
「?」
2人で対戦する前に何か話したのかしら。私が何か聞こうとする前にヴィルが話を続ける。
「この国には炭鉱夫が沢山いるようではないですか、レジェク殿下。我が国としても実に興味深い。ぜひ現場を見る機会を設けていただきたいのですが」
「なに?」
さすが、ヴィル。抜け目ないわね……やっぱり気になっていたのね。
レジェク殿下はヴィルの話に表情がやや曇っているように見える。
「私からもお願いいたします。明日でもよろしいので。まだ滞在日数はありますから可能、ですわよね?」
「……え、ええ。もちろんです」
私がジッと見つめると視線を逸らすレジェク殿下の反応を見ていると、何かありそうな雰囲気がプンプンしてくるわね。
新たな資源となると、ハミルトン王国としても政治的な話をしたいところでしょうし、これまで多岐にわたって支援してきた国を差し置いて他国に優先的に取引をされては、面目も立たないというもの。
これほどまでに炭鉱夫がいるのだから、かなり現場は賑わっているに違いない。
「明日が楽しみだわ。一旦お城に戻りましょうか」
皆が頷いたので、ゼフの事はヴィルに一任するとしてお城に戻る事にした。
帰りは腕相撲大会の話でもちきりになり、イザベルは優勝賞金をエントリーした女性たちに配ってしまったらしい。
イザベルらしい。
女性たちにはとても感謝されたでしょうね。
帰りの馬車では腕相撲大会の話でもちきりになり、ヴィルはゼフがいないのをいい事に自身の活躍を嬉々として語っていたのだった。
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オリビアとヴィルヘルムや登場キャラクターが成長していく姿をじっくり書いていきたいと思っております。
彼らが歩む道を見守っていただければ幸いです。
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