ドルレアン国一日目
私たちが王城へと到着すると、すぐに宿泊する為の部屋へ案内された。
紹介された通訳のラスも一緒についてきて、すっかりソフィアと意気投合したのか2人で手を繋ぎながら楽しそうに城内を歩いている。
「ソフィアって、とても可愛い名前だね!」
「あ、ありがとう。私も大好きなの」
「笑った顔も可愛いな~~部屋に着いたら一緒に遊んでくれる?」
「うん!」
ここだけ空気が違うような気がするわ。
ここは天国?天使が2人?
ずっと見ていられるわね。
私が微笑ましく二人のやり取りを見ている後ろから、ゼフの圧を感じるのは気のせいかしら……というより、イザベルもヴィルも皆、彼に対して警戒しているような気がするのは気のせい?
でもソフィアに向けられている笑顔は嘘のようにも見えないのよね。
なぜだかは分からないけれど、皆が警戒しているし、私も一応深入りし過ぎないように気を付けよう。
「皆さま、こちらがご宿泊いただくお部屋になります」
そうこうしている内に私たちが宿泊す部屋の前に到着したのか、ラスが笑顔で案内してくれた部屋は、王族が宿泊するに相応しい内装に感嘆の声が出てしまう。
山の麓に建てられている強固な城の一室とは思えないような、洋風の美しい部屋。
我々が来るからわざわざ用意してくれたのだろうかと考えてしまうけれど、その辺は深く考えても仕方ないわね。
「この部屋は女性用と言った感じがするけど、もしかして隣りが男性用なのかしら?」
「いえ、そういうわけではないのですが、予定されていた人数より多いようですので、こちら三部屋で別れていただければと」
「ご、ごめんなさいね。色々とあって同行者が増えてしまったの。ほほっ」
そうよね、当初は私とヴィル2人のはずだったからこんなに大所帯になるなんて、国としても予想外よね。
私は公爵邸でのマリアとのやり取りや、船でのイザベルを思い出す。
私たちの人数を見て、急遽融通を利かせてくれたんだわ。
「では私とオリビアが同じ……」
「何を言っているの?私とオリビアが同じ部屋だって言ったじゃない」
ああ、ヴィルとマリアの仁義なき戦いがまた勃発してしまった……でもこれだけは譲れないと2人に告げる。
「誰と同じ部屋でもいいけれど、ソフィアと私はセットだから2人で寝られるベッドがある部屋でお願いね。ね、ソフィア」
「うん!」
「ではこちらのお部屋をお使いください」
私の言葉にラスが三部屋ある内の真ん中の部屋を案内してくれる。
ソフィアと二人で入ってみると、大きなキングサイズのベッドがドンッと陣取っていて、優しいオフホワイトの色合いが基調となっている室内に、即決したのだった。
ベッドもとても寝心地が良さそう……一見すると夫婦のベッドにも見えなくもないけれど、それは考えないようにしよう。
「この部屋ならソフィアと安心して眠れるわね」
「嬉しい」
こんなに喜んでくれるなんて、ソフィアを連れてきたかいがあるわ。
彼女の笑顔にラスも喜んでいるように思える。
小さな子に優しい姿を見ると、そんなに怪しい人物には思えないのだけれど――――
一緒の部屋になれなかったからなのか背後からヴィルの悲哀に満ちた目線を感じつつ、ヴィルとゼフ、イザベルとマリアが同室で、私とソフィアとマリーという部屋割になったのだった。
~・~・~・~・~
――――コンコン――――
「どうぞ」
私がソフィアとマリーと共にくつろいでいると扉がノックされ、ヴィルが颯爽と入ってくる。
「オリビア、国王への謁見の許可が下りたので、これから行こうと思う。君も来てくれると嬉しい」
「もちろんよ」
まずは国王陛下に到着の挨拶をしてこなくてはね……どんな人なのかしら。
王妃殿下の兄であり、ヴィルの伯父様でもあるお方。そしてあまり仲が良いとは言えないから、失礼な言い方をして外交問題になっても嫌だし、感情的にならないように気を付けなくては。
「オリビア様、いってらっしゃい」
「ソフィア、ありがとう」
私の天使――――ちょっぴり緊張していたのが伝わったのかしら。
可愛らしい笑顔で私の心をほぐしてくれるソフィアをぎゅうっと抱きしめ、謁見の為に部屋を後にしたのだった。
部屋の外へ出るとゼフとイザベルが待っていた。
「イザベルも一緒に来てくれるの?心強いわ」
「オリビア様をお守りする為に来ておりますので」
滅多に笑顔にならないイザベルがニコッとぎこちなく笑顔になる。
私を安心させる為に笑ってくれてるのよね。
イザベルはお友達だし護衛にはしたくないのだけれど、こうやって傍にいてくれるとやっぱり心強いわ。
「ありがとう、イザベル」
私が感謝の気持ちを返すと、頬が少し赤くなった。イザベルが照れている……可愛い……!
私が男性だったら間違いなく惚れているに違いない。無自覚恐るべし。
イザベルの隣りにいるゼフは相変わらず無口だけれど、私と目が合いペコッと挨拶をしてくれた。
2人が並んでいてくれると無敵のような気持ちになってしまうわね。
そんな事を考えながら歩いていると、ヴィルが手を握ってきて「君は私の隣りにいてくれればいいから」と笑顔で声をかけてくれる。
これは私が緊張していると思って、気遣ってくれているのかしら?
なんて返せばいいのか戸惑ってしまい、ニコッと笑顔を返す。
「大丈夫よ、ヴィル。特に話す事もないし、大人しくしているから」
そう、何もなければ大人しくしているつもり。
失礼な事を言われた場合は……大人しくしているかは分からないけれど。
私の笑みが意味深だと思ったのか、ヴィルは困惑しているように見える。
心配してくれる気持ちは有難いけれど、中身が30代なので少し緊張はするものの、国王が怖いとかはないのよね。
やっぱり国王もねっちょり系なのかしら…………そっちの方が心配かもしれない。
国王陛下のイメージをあれこれ想像している内に、とても頑丈そうで重厚な造りの扉に到着した。
扉の前にいる衛兵は槍を交差させ、まだ中に入れさせまいと構えている。
「この先は護衛の方が入る事は出来ませぬ。ヴィルヘルム王太子殿下とそのご婚約者であるオリビア様のみとなります」
「承知した。ゼフとイザベル嬢はここで待っていてくれ」
「「はっ」」
二人は声を揃えて返事をした。
イザベルも貴族令嬢なのにと思うけれど、国王陛下に謁見出来るのは陛下が許可した者のみだものね。
戦場に入るような気持ちになりながらヴィルと目配せをし、意を決して扉の中へと入っていったのだった。
~・~・~・~・~
今週は水曜日あたりにもう一話更新します~~いよいよ謁見!
よろしくお願いいたします~~!<(_ _)>
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オリビアとヴィルヘルムや登場キャラクターが成長していく姿をじっくり書いていきたいと思っております。
彼らが歩む道を見守っていただければ幸いです。
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