表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

信じて貰えないかなぁ

作者: 桐原まどか



以前、私はバス通勤していました。

道路一本隔てた向かいに、アパートがあり、ゴミ捨て場が見えました。

それはとある春の、燃えるゴミの日。

私はバスを待ちながら、本でも読むか…と、文庫本を出しました。

早朝なので、他に人もなく、静かな朝…に影。

ふと見やると、燃えるゴミ袋の前に二羽のカラス。

一羽は漆黒の身体がどこかふてぶてしいオーラを放っている感じがしました。対してもう一羽は艶々していて潤いがある感じ。

例えるなら先輩と後輩。

私は本を読むのをやめ、観察する事にしました。

まるで先輩が後輩を案内してるように見えたんです。

後輩カラスが徐ろに、ゴミ袋に嘴を差し入れる。

何が出てくるか…私もドキドキしました。ティッシュ。ティッシュ。ティッシュ。

んん?ティッシュばっかり?

そこでキレた(?)のか、後輩カラス、中身を次々と引っ張り出す。

人間で言うなら、飲み物をこぼした時に、慌ててティッシュをがーっと抜く場合があるでしょ?

あんな感じです。というか、ティッシュしか入ってない?あのゴミ袋。

そして、ヤケを起こした後輩カラスを宥めるように先輩カラスが近寄って…。

そこで、バスが来てしまったんです。

私は何となく名残惜しい気分でバスに乗り込みました。

帰り道、ゴミは綺麗に片付けられていました。アパートの方が片付けたんでしょう。


次の週。燃えるゴミの日。

私はいつも通り、バス停に立ちました。文庫本を読もうと取り出し、ふと…カラスが二羽、いたんです。

既視感。めっちゃ既視感。

私は文庫本を鞄にしまい、真剣に眺める事にしました。

先週と同じ組み合わせに見えました。

と、先輩カラスが後輩カラスにまるで指し示すように、嘴でひとつのゴミ袋をちょんちょんしました。

後輩カラスが嘴を差し入れると…果たして、生ゴミ!

と、そこでバスが定刻よりも早く来たのです。

見たかったのに…。


次の週の燃えるゴミの日、私は休みでした。

あのカラスたちはどうしたかな?

後輩は(と勝手に決めつけている)独り立ち出来たかな?と、歯磨きしながら考えました。


それ以降、カラスたちの姿は見ていません。

面白い光景だったのですが、いかんせん証拠がない為、信じて貰えるかどうか…。

後輩を指導するカラス。

面白かったな。


でも、ゴミの片付けするのは大変だったろうな…。

ああやって、脈々と餌場を教えて、繋いで行くんだろうなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まず一言。 信じますよ。カラス賢いですし。 親が同じ兄弟だったのかもしれませんし、先輩後輩だったのかもしれません。 畑や田んぼが多い田舎のカラスは平面的な認識をするので、賢さは昔のままと…
[良い点] ゴミ捨て場を漁るのは大抵未婚の若い個体ですから、先輩後輩で間違いないと思います(笑) カラスの目は ごみ袋の上からでも油分を見分けられますから、油が染み込んだティッシュだったのでしょうね(…
[良い点] カラスを先輩と後輩に見立てるという面白い発想!! その発想はなかったです!! [一言] カラスはすごく頭が良くて縄張りにうるさいので、おそらくその先輩と後輩は同じカラスだと思います☆ 実習…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ