王国の崩壊
【王国の崩壊】
『誰か、起こったことを説明せよ』
教会内は混乱していた。
突然、城が機能を停止したのだ。
王と王の長男は平民に落とされた。
青目喪失のためだ。
『なぜ、突如として青目が消えたのだ?』
『わかりません。王家だけではありません。多くの貴族や兵士が青目を失いました』
『スキルもか?』
『全てが平民並か平民以下の戦闘力しか持ちません』
『猊下。獣人族の者共を召喚したときに起こった惨劇とのことです』
『奴らが何かをしでかしたと?』
『噂の域を出ませんが、黒狼なる奴らの守護神が獣人村に革命を起こしている、ということです』
『黒狼に呪われたか』
『はっきりとはわかりませんが』
『よろしい。獣人村には観測班を。だが、さしあたっての問題は、王の後継者だ』
教会は次期王を長男と考え、バックアップをしてきた。
しかし、その計画はご破算になった。
長男は青目を失ってしまったからだ。
ただ、こういう話し合いがもたれるのは。
実は、教会こそがこの国実質的なトップなのだ。
教会はキングメーカーであり、裏で権力を操っているのだ。
『長男がああなった今、後継者は次男・長女・次女のうちいずれか』
『次男は母親が側室です』
『次女は母親が側室ですでに亡くなっております。またスキルが発現しておりません』
『では、長女か』
『はっ。長女は魔導師であり、次期王候補としては、もっとも優秀とされておりました。ただ……』
『ただ、なんじゃ』
『性格に問題が』
◇
教会のバックアップを受け、
長女が王に即位した。
だが、性格に問題あり、とされた通り、
暴政をしき始めた。
まずは、王国親衛隊が壊滅したことを受け、
新たな軍団を創設した。
しかし、武の能力で選別するのではなく、
容姿を基準とした。
見栄えのいいものに豪華な白い武器・防具を与え、
聖騎士団ビアンヌコと改称して、
常時、女王の背後を飾った。
城もリフォームを行い、白色で統一した。
毎日ドレスを取り替え、豪華な食事を喰らった。
城の支出は青天井、
財政は大赤字になった。
だが、女王はそれを過酷な増税で賄ったのだ。
街には王室への怨嗟の声が広がった。
すでに民衆は王や貴族たちの多くが青目を失ったことを
知っている。
それだけではない。
王を守る兵士の多くもスキルを喪失している。
奴らは張り子のトラだと。
憤懣が爆発寸前にまで達していた。
女王はそんな街の雰囲気には関心がなかった。
美しい部屋、美しい護衛達、美しいドレスに料理。
これらに囲まれて毎日が有頂天だった。
女王は、前王や兄が平民になったことには
なんとも思っていなかった。
むしろ、自分が好き放題できることで歓迎していた。
だが、獣人村への嫌悪感は別物だ。
人族が獣人にコケにされた。
それには地団駄を踏む思いだ。
そこで、女王は獣人村に暗殺団を送り込んだ。
しかし、ことごとく暗殺団は捕らえられ、
暗殺団は見せしめのために城に裸でくくりつけられる。
だが、性懲りもなく女王は暗殺団を送り続けた。
怒ったエルランドたちは、
女王の教書演説に合わせて王都に向かった。
教書演説では、女王が民衆に向かって国の現状や方針を
演説する。
場所は城のバルコニー。
その前には大広場が広がっている。
広場には数多の民衆が集まった。
不穏な雰囲気が広がっている。
だが、女王はお構いなしだ。
自分を称賛するために集まったと思っている。
女王がバルコニーに現れた。
途端に大騒ぎになる大広場。
そのバルコニーにエルランドたちが現れた。
『はじめまして、女王陛下』
『何奴じゃ!』
『獣人村からやってまいりました。ああ、もう女王陛下ではありませんね。元女王陛下様』
その僅かな瞬間に女王の瞳から青色が消えていた。
『おい、見ろよ。女王の目は青色じゃないぞ』
『偽物か?』
ざわざわとした声は、
やがては怒りとなって広場を覆い尽くした。
ただでさえ、女王の無茶な振る舞いに
不満をつのらせていたのだ。
広場は暴動となった。
怒った民衆から投石が降り注いだ。
『無礼者め!妾をなんと心得おる!』
女王は目を吊り上げて怒ったが、
すでに青目を失っており、
それははっきりと王としての正統性の欠如を表していた。
『グワッ!』
投石の一つが女王の顔に醜い傷跡を残した。
女王はうずくまり、退席せざるを得ない。
しかし、平民に降格となった女王は治療してもらえない。
『何故じゃ、妾は女王なるぞ!』
『はは、なにを戯言を。鏡を御覧なさい』
女王は鏡を覗いて、気を失った。
初めて自分に何がおこったのか理解したのだ。
いや、頭では理解した。
しかし、感情がついていかない。
目が覚めてからも、周りに当たり散らした。
しかし、すでに女王としての敬意を払ってもらえない。
この国において、青目でないということは、
賤民と同義であった。
『おい、早く城から出て行け。汚らわしい』
元女王は、さっきまで部下だったものから
かような罵声を浴びせられ、再度気を失うのであった。
元女王は、傷跡が治療不可能なレベルで残されたまま、
郊外に捨ておかれた。
それを知った民衆は今までのウサを晴らすことになる。
民衆の怒りは王国中に伝播した。
王室の権威が失墜し、王国は瓦解した。
王国はかつての領がそれぞれ独立し、
王国を宣言した。
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