城に呼び出し
【城に呼び出し】エルランド20歳秋
スタンピードに対して完勝したとの噂は
あっという間に全国に広がった。
もう一つ。
同時に、村の魔石回復薬で王女の難病を完治させた。
城ではその2つの功績に対して、
褒美を授けることになった。
褒美とは、村を独立自治区にするという
得難いものであった。
領が統率力を失っている今、
領と村との抗争を憂いた城の采配であった。
獣人村では、城に参上することにかなり迷った。
縄ではないか、との警戒心からだ。
しかし、王室自ら褒美を授けるのだ。
城からの登城依頼は断るわけにはいかない。
それに、独立自治区にするというのが本当ならば、
それに越したことはない。
差別を少しでもなくそうと、城に赴くことになった。
村長、龍人、エルランド、エメリの4人
+地中にガルムを潜ませて、城に向かう。
エメリを連れて行くことには反対意見も多かったが、
罠だったときに対抗できる最大戦力はエメリなのである。
エルランドは身バレ防止の為、目をゴーグルで覆う。
城には目が悪いからと理由付けをしつつ。
エメリもゴーグルとフードで黒目黒髪をごまかす。
◇
さて、謁見室へ。
防具は取り上げられなかったが、武器は取り上げられた。
これは仕方がない。
もっとも、防具も取り上げられるようであれば、
すぐに脱出するつもりだった。
謁見室は数百人なら簡単に収容できそうなほど広い。
正面に王と宰相、第1王子。
その脇を親衛隊。
右側と左側には上位貴族や鍛え上げられた近衛師団が並ぶ。
4人が王の前で跪く。
すると、突然4人の体が硬直した。
『馬鹿者が。獣人風情がのこのこと罠にはまりよったわ』
周囲から下卑た笑い声が。
『まったく、浅ましいものよ』
『おまえらは、人質として城に拘束する。魔石回復薬やらスタンピードで活躍したという魔導弓やらの秘密を白状してもらうぞ』
王室は、当初から獣人に褒美をとらせるつもりはなかった。
スタンピードを抑えたなどとは信用していない。
領軍を圧倒したのも信用していない。
紛争中に、たまたま運良くスタンピードが発生し、
おそらく領軍とスタンピードが相打ちをして、
村が漁夫の利を得たのであろう。と考えていた。
拘束魔法で身動きがとれない4人。
謁見室の外側には予想通り結界魔法が張り巡らされていた。
『いいか、打ち合わせ通り』
エルランドは落ち着いて3人にいう。
あらかじめ、4人には防御魔法が張り巡らされており、
城の拘束魔法があんまり効いていない。
まず、龍人の○が魔法キャンセルを使用した。
他の3人は龍人に対して魔力をつぎ込んでいく。
『ガチャン!』
大きな音とともに、
拘束魔法と部屋の結界魔法が破壊された。
『なんだと?拘束が解けただと?衛兵、4人を捕らえよ!』
龍人は逆に結界魔法を謁見室にかけた。
謁見室の中にいるものを外に出さないためだ。
『よし、エメリ、始めて』
エメリはそうエルランドから言われると、
自分の最大魔力でもって、
謁見室にいる4人以外の体内魔力の流れを止めた。
『ああ、体が……』
兵士はまず武器を落としてしまう。
そして、四つん這いになるものが続出した。
体内の魔力が止まったことにより、
体力強化スキルが使えなくなったのだ。
武器や防具の重さに耐えられない。
『何が起こっているのだ?』
謁見室にいる城側の者共は自分の防具の重さに耐えられず、
周囲をキョロキョロ見渡している。
『ああ、わたしのスキルが!』
突然、貴族の一人が喚いた。
どうやら、自分のメニューを見たらしい。
そこにあるはずの、自慢のスキルが消失していた。
『『『オレもだ!』』』
城からは動揺した声が広がる。
『おい、おまえたち、目が青色じゃなくなっているぞ!』
『は?そういうお前の目も青色じゃないぞ!』
村の4人以外、謁見室にいる者共の魔力の流れが
喪失している。
当然、魔力に頼っているスキルは使えなくなる。
そして貴族たらんとする最大かつ最低条件である目の青さ。
それがなくなってしまった。
『ああー!』
謁見室では、困惑と慟哭の入り混じった怨嗟の声が
鳴り響いた。
『おまえらか、おまえらが何かしたのか!』
『神の裁きです。あなた達はこれから平民として生きていくことになります。平伏して受け入れなさい』
『馬鹿者、獣人ごときが。ああ、元に戻さんか!』
エルランドは王のもとに行くと、蹴っ飛ばしてみた。
簡単に転がっていく。
身体強化スキルがなくなったため、
王の体が軽い。
『不届き者め!余をなんと心得るか!』
『弱すぎる。平民以下だな。平素から鍛錬を怠っていれば、そうなるよ』
大抵の貴族は毎日を怠惰に過ごしている。
魔力の底上げがなければ、体力が底辺なのが多い。
彼らは貴族の資格をなくすことになる。
魔力至上主義の国だからだ。
王はもちろん、追い出されるだろう。
兵士たちも自慢のスキルを奪われ、失職の憂き目にあう。
たとえ、剣聖であったとしても、
大抵はそこまで修練を重ねていない。
素では剣士以下の実力でしかない。
『では、みなさん。ごきげんよう』
4人はゆうゆうと謁見室から抜け出した。
そして、外に出る前に図書室に向かった。
『この不届き者め!ぐわっ』
その間、向かってくる兵士はすべて無力化される。
スキルを奪われ、武器を手から落とし、
防具の重さに耐えられずに
四つん這いになる兵士が続出した。
『おい、こいつらのそばによるな!スキルが奪われるぞ!』
当初は何のことかわからずに、
どんどんと4人に向かっていったのだが、
兵士が次々と脱落し泣き崩れるにつれ、
その意味がわかり始めた。
そのうち、兵士たちは4人を遠巻きに怖れるだけになった。
『ジ・アンタッチャブル』
4人につけられた二つ名だ。
まさしく、彼らは障害物がないがごとく
城の中を進んでいく。
4人が向かったのは図書室。
エルランドが求めたものは、
上級以上の魔法書と、王室の機密文書だ。
エルランドたちは重要文書を片っ端からもらっていく。
4人は堂々と城の正面からでた。
すると、そこに待ち受けるのは、精鋭の王国近衛軍。
だが、なんということはない。
エメリは彼ら全員の魔力を止める。
それだけで、彼らは継戦能力がなくなり、
四つん這いの醜態をさらけ出すのだ。
この日、王国近衛軍の目から青色が消える。
それは王国から城を守る兵士が消滅したことを意味する。
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