スタンピード
【スタンピード】
獣人村は縦陣の寄り合い村である。
かつては広い地域に分布していた獣人たちであるが、
人族との争いの結果、段々と棲家をなくし、
この狭いエリアに押し込められたという経緯がある。
メリットは、森の恵みが豊富。
危険な森に入る必要があるが、
獣が多く果実も多くなっている。
森の周辺は、麦系の植物が雑草化しており、
食うには困らない。
デメリットも当然ある。
最大なのは、定期的にスタンピードがおこることだ。
スタンピードは森や洞穴の魔素量が増えて、
魔物が異常発生し、
最終的に周囲に向けて集団大暴走を起こすことである。
魔物の数は数千~数万に達する。
人的被害も多く、作物をことごとく食い荒らされたり
踏み潰されたりするので、飢饉災害がひどい。
『森に入った者たちからですが、このところ急速に魔物の数が増えてきたように感じるとの報告が相次いでいます』
『魔素の濃度はどうなっている?』
『魔素に弱いものを連れて行くと、森の周囲で魔素酔にかかるようです』
魔素酔は魔素に耐性のないものがかかる症状で、
車酔いに似ている。
吐き気、頭痛、目眩などが主な症状だ。
『魔素が森から溢れ出していると見るべきか。しばらくは森に入るのは禁止だな。食料の備蓄確認、武器・防具や外壁の点検を急ごう』
普段から、麦系の植物を中心に食料備蓄は
数カ月分を確保している。
武器・防具や外壁についても、増強が続いており、
準備は万端といえる。
◇
さて、そんな会話のなされた数日後。
森から、1頭の魔物が顔を出した。
それを手始めに、続々と魔物が森から飛び出してきた。
一体、どれほどの数がいるのだろう。
狂ったような魔物たちが延々と森から湧いてくる。
『スタンピード、始まりました』
『農作業など外壁の外にでている人たちを収納後、門を閉めよ。村には警報を鳴らし、撃退の準備だ』
外壁の屋上には幅2~3mの平地がある。
そこに、村人はずらりと並んだ。
『村に到達するのは、30分後と予想されます』
『よし、結界・防御魔法担当に魔石が渡っているか確認。合わせて、迎撃準備。同じく、魔石の確認』
遠くに土煙が見える。
その下には大量の魔物が、怒涛のごとく騒ぎまくって
こちらに向かってくる。
『第1波、200m程度にまで近づいたら、魔法とバリスタ斉射するぞ。その後、撃ち漏らした魔物を魔導弓で迎撃』
『了解!』
いよいよ、魔物の群れが村に近づいて生きた。
『魔法・バリスタ、斉射!』
指揮官の号令とともに、
魔物の群れに向かって一斉に攻撃が繰り出された。
数秒後、着弾し、噴煙が立ち上る。
すぐあとに、轟音、暴風、地響きが順番に村にやってきた。
『第1陣、9割が消失、すぐに魔導弓の用意、各自狙いをつけたら発射!魔法とバリスタ部隊、第2波攻撃の準備せよ!』
こうして、波状攻撃してくる魔物の群に対して村から
波状撃がなされた。
ほぼ全ては村に近づく前に討伐されていく。
しかし、稀に外壁にたどり着く魔物もいるが、
外壁の結界にぶつかって喚いたり、失神したりしている。
『見ろ、ワイバーンの群れがやってくるぞ!』
上空には10数体のワイバーンが。
ワイバーンは亜龍の一種で、
前肢が翼となっていて空を飛べる。
この世界では地上での攻撃が主体で、空からの攻撃に弱い。
『対空用バリスタ、及び対空用魔法弓、準備せよ!』
対空用バリスタは3台あり、
それぞれに5体の魔導弓兵がつきそって、
3つの班を形成している。
対空用魔法弓は、弓矢に追跡装置がついている。
魔力消費が大きいため、ここぞというときにのみ使われる。
『よくひきつけて狙えよ。第1班、右の5頭を攻撃。第2班、中央の7頭を攻撃。第3班、左の4頭を攻撃。極力狙いの重複を避け、掛け声を掛けながら攻撃するように』
ワイバーンが200mほどにまで近づいてきた。
まず対空用バリスタ発射。
次弾を準備する間に、魔導兵がワイバーンを狙い撃ちする。
猛攻撃にも関わらず、村に近づいてきたワイバーンは、
結界を突破できずに結界に頭からつっこんで
脳震盪を起こし、次々と墜落していく。
落ちたところを魔導弓兵が集中攻撃して殲滅していく。
戦闘は、1時間でほぼ終了した。
9割以上の魔物は、霧となって消えていった。
残りの数%の魔物は逐次各個撃破されていき、
一部は森に逃げ帰っていく。
『大勝利だ!』
指揮官は拳を天につきあげ、快哉を叫ぶ。
それにつられて周りの人達も大歓声をあげる。
こちらの人的被害はゼロ。完勝である。
しかし、畑は散々に踏みにじられたので、
次期収穫はほぼゼロとなった。
『備蓄があるし、当村は小麦生産だけに依存しているわけじゃありませんから。森の獣や果実は潰されたわけではありません。森の周囲の雑穀もいざとなれば食べられないわけではありません』
逆に、領都は。
獣人村との争いで疲弊していた上での魔物の暴威。
猖獗を極めるといった体で、
散々な混乱を領都にもたらしていた。
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