領主との対立
【領主との対立】
『獣人村の活況は本当なのか』
領主の館で探偵の報告を聞く領主。
『私の訪れた範囲では。まず最初に申し上げねばなりませんが、私は村に入るなり警戒されてしまったようです。絶えず村の監視がついているような気配でしたので、深くは調べることができませんでした』
『うーむ。何人かスパイを送り込んでおるが、無事に帰ってきたのはそちだけじゃ。情報を取れただけでも良しとしよう』
『ありがとうございます。私の見たところでは、食事、薬、各種魔道具、武器・防具、外壁や建物の防御など、多くの分野で人族を上回る成果を上げている模様です』
『うーむ。それがブラック・ハウンドという守り神のお陰だというのか』
『と言われております。私も現地でブラック・ハウンドなる犬をこの目で見ました。見たことのない優雅な獣でした』
『あと、獣人たちが魔法を使えるようになっているというのは本当か』
『それも、この目で見ました。取るに足らぬ魔法でしたが』
『上級魔法を使えるものもいるであろうの』
『各種魔道具や、外壁にかけられている結界・防御魔法の出来をみると、相当高位の存在が、それも複数いるであろうと推察されます』
『いろいろ不思議な点はあるが、生活魔道具は各家庭に行き渡っておるのじゃな?』
『はっきりとはわかりませんが、そのようです』
『魔石はどうしておるのじゃ』
『噂では、そばのダンジョンから魔石を採取するとのことです』
『相当な量の魔石が必要だろう。そんなに簡単に魔石が手に入るのか』
『ダンジョンにも獣人の守り神がいるそうです。その守り神が魔石を与えている模様です』
『では、領が奪取してはいいではないか』
『獣人の守り神は、人族にはタタリ神になる模様です。ある貴族がダンジョンを横取りしようとしましたが、今やその貴族は破産し爵位を喪失。一家離散しております』
『うーむ。どうにかしたいの』
『無理難題をふっかけたら、どうでしょうか。それで獣人たちが反抗するようなら、武力で討伐するつもりで』
『奴らは強いぞ』
『こちらにも損害は出るでしょう。しかし、強いと言っても近接戦闘しかできない脳筋族です。しかも、集団戦がとれない低能揃い。獣人村の人口は千人程度です。圧倒的な数をぶつければ、打ち破るのは簡単でしょう。奴隷魔法をかけて、強制的に領のために働かせたらどうでしょうか』
『そうじゃの。たかが、獣人族。人族より上になるなどあってはならんのじゃ』
『村長、領主からなんて言われたんだ』
『人頭税を10倍にするんだと』
『そんな無茶な』
『おまえら、最近儲けているというじゃないか。領主様に誠意を見せよ。だと』
『ふざけてやがる』
『まだある。砂糖を安く卸せとか、薬をただで拠出せよとか。外壁の守りも弱くせよとも言われた』
『はあ?なんで守りを弱くしなくちゃいけないんだ?』
『領への叛意ありなんだと』
『ああ、これは俺たちの反抗を誘導してるな』
『おまえもそう思うか』
『うん。あまりに非常識すぎる』
『領はどこまでやると思う?』
『そりゃ、領軍を出してくるだろう。俺たちに奴隷の首輪でもはめようとしてるんじゃないか?』
『そこまでやるつもりか』
『『『俺たちもそう思うぜ』』』
あまりの無理な要求に頭に血の上る獣人であった。
それが、獣人の反乱誘導を目的としているとしても、
領の要求に唯々諾々とするわけにはいかない。
『よし、領軍が攻めてくることを前提としてNOの意思を突きつけるぞ』
『異議なし。俺たちの尊厳にかかっているからな』
『滅ぼされても構いやしねえ。一太刀あびせるぞ』
領主にほぼ全ての要望にxをつけて送り返したところ、
その返答が大量の領軍だった。
『おお、早速のお出ましだ』
『ざっと5千人ってとこか』
『領内の防衛を手薄にしてまでこっちに兵隊送ってきたみたいですね』
『普通の兵隊さんには申し訳ないが、近づいてきたら全力でいくぞ』
領軍は村の周りを、柵で囲い始めた。
この時代、籠城戦は悪手である。
何しろ、魔法の飛び交う世界だ。
城壁は簡単に崩されるし、
そもそも城壁を飛び越えて魔法が放たれる。
一般人や家屋に被害の及ぶことを考えると、
野外戦に持ち込むのが定石である。
『領軍から開城請求が来ました』
『拒否一択でしょう』
『大丈夫か』
『村の結界防御は強固ですよ』
『何?奴らは籠城するつもりか?なんたる愚かな。よし、魔法部隊。遠距離攻撃の準備だ』
領軍の魔法部隊は特別強いわけではない。
だが、それなりの魔導師を揃え、
上級魔法のエクスパートが揃っている。
『上級魔法ファイアフレア発動!』
領軍から何発もの火魔法が村を攻撃する。
しかし、村の防御魔法はびくともしない。
『なんだと?』
『防御魔法がかなり頑強です』
『向こうには大魔導師がいるのか?』
『うわっ!』
逆に村から魔道具により攻撃を受ける。
まずは、魔法キャンセル。
防御・結界魔法をキャンセルしたところへ、遠距離攻撃。
魔導師軍は半壊してしまった。
虎の子の魔導師部隊がやられたため、
物理攻撃に頼らざるを得なかった。
大量の火矢を放つ。
全て防御魔法に防がれる。
投石機は戦場に出した途端に集中攻撃をあびて
破壊された。
分厚い鉄板板を揃え、
破城槌でもって城門を突破しようとする。
しかし、門に行き着く前にことごとく魔道具の餌食になる。
夜間に堀を埋める部隊を送り込むが、
すぐに気づかれて逆襲を受ける。
いたずらに兵員を失うのみ。
魔法攻撃も物理攻撃もダメ。
そこへ領主がやってきて、陣頭指揮を取り始めた。
領軍は遠巻きに囲み、兵糧攻めを選択する。
だが、現場が膠着したかに見えた一方、
領都では大変なことがおきていた。
陣頭指揮をとっている領主のテントでは。
『お館様、領都の兵糧庫が攻められております!』
『お館様、領都の領都が延焼してしまいました!』
『お館様、領都では大量のヘルハウンドが跋扈しており、外出さえできんようです!』
領主は頭を抱え、撤退の2文字が浮かぶ。
ふと領主が後ろをみると。
ブラックハウンドと青年。
そして、この場に場違いな可憐な少女の姿が。
驚く領主。
『誰だ?』
そう問いかけるが、あっという間に消えてしまった。
『何だったんだ?おい、誰かおるか。不審者がいるぞ!』
その声を聞きつけ、テントに駆け込んでくる警備兵。
『お館様?』
『馬鹿者、何をボーとしておるか!』
『目が……』
領主の目は青色から、本来の色である鳶色になっていた。
彼の貴族としての存在が終了した瞬間であった。
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