呪われたダンジョン②
【呪われたダンジョン②】
ただ、いつまでもスパイに対処するのも面倒臭い。
そこで、村では罠を張ることにした。
『ダンジョンから魔石が産出される』
との噂を流したのである。
ダンジョンとは、獣人村が管理をまかされている
村のそばのダンジョンのことだ。
村に来たらすぐに気づくが、魔道具が多すぎる。
では、動力源となる魔石はどうしているのか、
という疑問がわく。
その疑問に答えるために噂を流したのだ。
ただし、こういう警戒をして。
『このダンジョンは獣人族の守り神がいる。
獣人族以外が不用意に近づくと、呪われる』
欲に走ったある貴族が、このダンジョンに目をつけた。
ここはロゼッタ領のエリア内と思われているのだが、
この欲深い貴族の支配地との境界線が曖昧であった。
こういう場所は、よく揉めるのである。
貴族はならず者を集め、ダンジョンに突入させた。
無論、ダンジョンに魔石などない。
『あのダンジョンが呪われているなんて噂はウソですぜ』
ならず者は欲深い貴族の館に戻ってこう答えた。
『だが、魔石はないのだろ?』
『ご主人様。まだまだダンジョンには秘密がありそうです。ここはじっくりと調べてはいかがかと』
貴族の命を受けたならず者が村にやってきた。
『貴様たちは嘘を流布して、ダンジョンの財産を独り占めしようとしている。それは許すべきではない。これからは、公益のために我らがラミエス様の専有下に置く』
何が公益なのかはわからないが、そう高言した。
このエリアは、獣人族の自治エリアであるが、
広く見れば、ロゼッタ領主の土地だ。
ラミエスという貴族がそう主張するのは
お門違い以前に大問題なのだが。
『いや、あのダンジョンには呪いがかかっているのは本当です。ただ、遅延型の呪いです。決して近づかないように』
お仕置き時間である。
まずは、大量のガルム軍団をその貴族の館に出没させる。
ただ、攻撃するわけではない。
存在を朧気にさせた黒狼たちが
ゆらゆらと館を往来するのみである。
『お館様、怪異現象が!』
『掃討せよ!』
攻撃しようとすると、黒狼たちは地中に戻ってしまう。
攻撃が止むと再び黒狼たちは現れる。
あらゆる場所に黒狼はいた。
庭、玄関、エントランス、応接室、居間、居室、食堂、
台所、倉庫、風呂、トイレ……
怖がってどんどんと使用人がやめていく。
貴族が目をさますと、ベッドの周りで大量の黒狼が
じっと貴族を見つめている、ということも度々あった。
『これは獣人村の仕業に違いありません』
いてもたってもいられない貴族は、獣人村に乗り込んだ。
『貴様ら、獣人の癖に、高貴なる吾輩になんということをしでかしているのだ!あの黒狼たちを引き上げさせよ!そして、魔石をバケツに100杯もってくるんだ!』
『ああ、ラミエス様。あのダンジョンに手を出してはいけないと、あれほど警告したのに。祟神はゆっくりと呪いを振りまいていきます。私どもはどうしようもできません』
貴族は、顔を真赤にした。
横にいた従者が驚いた顔をして叫んだ。
『ラミエス様、目の色が赤くなっています!』
貴族は目から青色が失われた。
貴族の本来の目の色である赤色が異彩を放つ。
『なんだと?おい、獣人ども。なにをしたんだ!』
『ですから、呪いは止まらないのですって。私どもではなんとも。ああ、お付きの皆さんも一刻も早く離れたほうがいいですよ。呪いは移ります』
もちろん、村にきた貴族の魔力の流れをせき止めたのだ。
『エメリ、お願いがあるんだ。いま、狂った貴族が村でわめいているよね。このままだと危険だから、彼の魔力の流れをせき止めてくれないかな』
『わかりました。村を守るんですね』
『そうだよ。ありがとう』
という会話がなされたのである。
青い目を失った貴族はすぐに引退せざるを得なかった。
青い目は貴族たる最低条件である。
爵位を長男に引き継がせるのがやっとであった。
呪われた、という噂がたち、使用人は全員やめてしまった。
補充しようにも、全く人がよりつかない。
この貴族家は領経営どころではなくなってしまった。
事のいきさつを聞いたラミエス領領主が
欲深き貴族に抗議する前に、
貴族は破産し、爵位を失うことになった。
また、呪われたダンジョンの噂は全国に広がった。
夏の定番ホラーとして、子どもたちばかりではなく、
お茶会などの噂話として人の口に残っていくことになる。
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