ある人族の独り言
【ある人族の独り言】
私は、キリル。
人族であるが、獣人村に住んでいる。
元々は商家の生まれであった。
そして、祝福では商売人を授けられた。
当然、家族全員が大喜びした。
しかし、私は浮かなかった。
実は私は小さい頃から剣士に憧れていた。
商売人としての勉強、読み書きや計算のほか、
剣の稽古を欠かさなかった。
商売人に剣?というと首をかしげられるかもしれない。
商売人と言えども最低限の身の守りは確保すべきなのだ。
特に、行商の多い商売人は。
ただ、私の場合は剣の稽古の度が過ぎていた。
早朝6時には剣を振っていたし、
昼と夕方の夕食前、そして寝る前、必ず稽古をした。
私は剣士に憧れた。
稽古をしても、簡単には剣技は上達しない。
しかし、一生懸命やれば祝福で剣士になれるかもしれない。
だが、私に授けられたのは商売人だった。
私はがっかりした。
そのまま、領の高等学校へ進学した。
この国には、12歳になったときに進学する学校として、
魔法学院と高等学院の2つがある。
さらに、魔法学院には魔法学科と武術学科の2つがある。
魔導師系の祝福を得たら、魔法学科に進学する。
武術系の祝福を得たら、武術学科に進学する。
少なくとも、貴族や富裕層はそうだ。
私は違う。
高等学院の商業科に進学した。
そして、3年間の研鑽を積む。
だが、私は剣士を諦めきれなかった。
だから、学校の寮に入っても私は修行を続けた。
商売人の祝福を受けただけあって、商売のセンスがある。
学校に通いながら、金儲けをし始めた。
それを何に使うか。
剣士の家庭教師を雇ったのだ。
私は14歳になっていた。
来年は卒業という時点で、私は我慢がならなかった。
このまま商売人になることに。
私は両親に相談した。
もちろん、大反対された。
だが、私は生まれて初めて両親に反抗した。
私は手紙を置いて、出奔した。
私は行商をしながら、修行を続けた。
行商は順調であった。
剣はなかなか上達しなかった。
明らかに私には商売人の才能がある。
だが、剣を諦めようと思ったことはなかった。
そして、私がたどり着いたのが獣人村であった。
ここには私のような人が何人かいた。
つまり、授けられた祝福と関係なく、
自分の好きなことをしている連中だ。
剣士を目指しているものもいたし、
魔道具を製作しているものもいた。
人族の街だったら、変人扱いされる。
しかし、ここではなんにも言われなかった。
そもそも、獣人には祝福がない。
決まり事も極めてゆるい。
自分の食べるものを狩ってくるか、
もしくはそれに代わる何かをすればいい。
私の場合は、読み書きや計算が得意なので、
領との折衝を担当した。
税や法律担当だ。
といっても、仕事はさほど忙しくない。
村の倉庫の貯蔵量の管理と領への税の支払い。
毎日2・3時間程度のチェックで十分だった。
そのかわりに、村から食糧をもらえる。
不足していれば、村の周囲で麦系の穀物や果実の採取、
そして小動物の狩猟で補うことができる。
さほど難しくない。
◇
私は20歳になっていた。
奇跡が起きた。
私に剣士のスキルが芽生えたのだ!
2年ほど前のことだった。
獣人の守り神だというブラック・ハウンド様が来村した。
通称お犬様のご加護が村に降り注いだ。
急速に村の様々な事情が改善していった。
そして、まるで祝福のような奇跡を行うようになった。
今まで祝福のなかった獣人にどんどんと職業が授けられた。
それとともに、様々なスキルが発現した。
私はすでに商売人の祝福が授けられている。
そういう者にも新たな職業が追加された。
おそらく、発現条件は経験値と言われている。
修行・努力・趣味、なんでもいいのだが、
その分野にいかに関わってきたか。
それが新たな職業発現の条件なのだ。
私の場合は、もちろん剣だ。
小さい時から10数年、剣の修業を続けてきた。
その私にとうとう剣士のスキルが授けられた。
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