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エメリの進化②

【エメリの進化2】


 エメリはさらにとんでもないことをいい始めた。


『あのね、獣人のみんななんだけど、エルランドさんやマルコみたいな黒いかたまりが体にあるのが見える』


『魔力の流れを止めているという?』


『ながれを止めているというか、ながれが悪くなってるかんじ』


『僕たちみたいにその塊を消せる?』


『たぶん、できるよ』



 これは大事になってきた。

 エメリの新しいスキルは、“祝福”そのものだ。

 獣人族の社会そのものを変革してしまう。


 黙っているか。

 しかし、獣人に新しい可能性が開かれたいま、

黙っているわけにはいかない。


 では、誰に相談するか。



『マザー、ちょっと相談事があって参りました』


 エルランドたちは検討した結果、

 マザーアニエスに相談することにした。

 これが人族ならば決して口外はしないが、

 獣人族は人が素朴だ。

 中でもマザーは知的で人品が卑しくない。



『私どもの魔力の流れを悪くするものが体の中にあると』


『ええ』


『そして、エメリはそれを消すことができると』


『はい。おそらく、皆さんの本当の姿が現れるんじゃないかと思います』


『うーむ。それはまるで“祝福”ではないですか。事が大変すぎて、私一人ではもて余すお話ですね。少しお時間をいただけますか。村の信用できる方々と相談してみます』



 後日。


『相談してみた結果ですが、とりあえず私が体験してみることにしました』


 マザーたちは、昔から不思議に思っていたという。

 人族には祝福があるのに、獣人族や亜人族たちには

 なぜ祝福がないのか。


 現状で獣人族たちには不満なことはない。

 しかし、エメリのスキルは獣人族の人そのもの、

 そして社会を大きく変える。

 少なくとも、その可能性は大きい。



『ちなみに、私は水色。僧侶系だということですが』


『はい、そうです。たぶん、魔導師だと思います』


『そうですか。では、お願いできますか』


『じゃあ、エメリ、お願いね』


『はい』


『ああ、温かい風が体を流れていますね……』


『どうですか、マザー。変化おきたましか』


『うーん、ああちょっと待って、これは?』


  氏 名 アニエス

  性 別 女

  種 族 龍人

  年 齢 28歳

  職 業 僧侶・魔導師

  スキル 光魔法、格闘術



 マザーは目の前に現れたパネルのようなものに驚く。


『これはわたしのデータ?“職業”が魔導師でスキルが光魔法とでてます』


『私どもがメニューと呼んでいるものと同じですね。祝福を授かると現れます』


『やっぱり、エメリのおこした奇跡は“祝福”そのものなんですね』


『光魔法は何が使えそうですか?』


『えっと、いろいろできそうです』


 マザーの使える光魔法は次の通り。


  灯光 光を灯す

  閃光 目眩まし

  光球 攻撃魔法

  光盾 防御魔法

  光癒 治癒魔法

  結界 結界魔法

  魔法キャンセル


『ああ、凄いですわ』


 マザーは自分で光を灯しながら、感激している。


『いかがでしょうか。前後で何か気持ちや肉体に変化は?』


『まず、肩のこりがとれたような爽快感があります。あと、単純に魔法が使えるようになって気持ちが上がってます』


『では、しばらく様子をみましょうか』


『はい。一ヶ月ほど経ちましたら、こちらに来て頂けませんでしょうか』


『了解しました』



 一ヶ月後。


『マザー、その後いかがでしょうか』


『素晴らしい気分がずっと続いています。ですので、他のファーザやマザーにもエメリの“祝福”をお願いできないかと思っております』


『他の方の了解は?』


『ええ、進んで祝福を授かりたい、という希望者ばかりです』


『わかりました。じゃあ、エメリ、お願いね』


『はい』



『おお、これが祝福か』


『まさしく、神のおこした奇跡』


『彼女は女神に違いない』


『いやいや、そういうの勘弁してください。エメリはただの人族です。神格化するのは、彼女の喜ぶところではありません』


『ああ、確かにそうですね。失礼しました。しかし、今後、この話は避けて通れないと思いますが』


『では、ブラック・ハウンド様のなされた奇跡ということにしては』


『ああ、エメリは巫女様ですね』


『いいですね』


『わふう?』


 ガルムは知らないうちに神格化されていた。

 獣人族の間ではガルムは崇められているから、問題はない。


『ガルム、神だって』


『わふ』


 ガルムもまんざらではないようだ。



『この際ですから、ガルム軍団も村の皆さんに馴染んでもらおうかと』


『ガルム軍団?』


『ええ、ガルム頼むよ』


『わふ』


 すると、数頭のヘル・ハウンドが地中から現れた。


『うわっ』


『彼らはガルムの忠実な部下です。魔物のヘル・ハウンドは目が青いですが、こいつらは目が赤いでしょ』


 ガルム軍団は目が青から赤色に変化していた。


『そういえば、目に知性がありますね。穏やかそうだし』


『はい。彼らはボディガードもひきうけてくれます。かなり強いですよ。しかも、普段は地中ですから』


『はあ、食事とかは?』


『食事は不要です。魔素が彼らの食事ですから。まあ、魔石を与えると大変喜びますが』


『魔石なんて高価なものを』


『ああ、魔石は私が大量に持っていますのでご心配なく』


『はあ。さすがはブラック・ハウンド様のご随員なだけありますね』


『はい。ブラック・ハウンド様のご加護の賜です』


 エルランドたちはガルムの従者と思われているようだ。



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