獣人族の村②
【獣人族の村②】17歳秋~
エルランドたちが村に到着すると、大騒ぎになった。
もちろん、ガルムのせいだ。
『ブラック・ハウンド様!』
村人が次々と叫んで地面にひれ伏していく。
王侯貴族でもここまでにはならないだろう。
ガルムはもう慣れたもので、優雅に村人の間を進んでいく。
獣人族の村は案外大きかった。
ひょっとしたら、人口は千人を越えそうに見える。
少し体裁を整えれば、街としても通用するぐらいだ。
ジーナは村でもかなり立派な館の前に来ると、
中に駆け込んでいった。
しばらくして、エルランドたちは館の中に招き入れられた。
『この度は、わが娘やその護衛を助けて頂き誠にありがとうございました』
そう礼を言うのはこの村の村長アロルド。
ジーナは村長さんの娘だった。
『こちらが、ブラック・ハウンド様。それとエルランドさん、アンヌさん、ハンスさん、エメリちゃん』
『ははー。ブラック・ハウンド様にご来村頂けるとは。伺ったところによると、奇跡の薬をお使いになられたとか。この僥倖、どうお礼申し上げて宜しいのか、正直、平静さを失いそうです。とにかく、しばらく村に滞在していただけませんでしょうか』
エルランドたちは館の離れに案内され、そこで一息ついた。
『なあ、ハンスとアンヌ。村の雰囲気どう?』
『なんだか、すごく清潔感を感じますね』
『アッシも。それにこの感じ……』
『そうなんだよ。エメリの魔力操作に似ている。なんだか暖かい風が体内を通り過ぎるようなんだよな』
『ワフウ』
ガルムも同じ気持ちのようだ。
『それと、村人たちはエメリを見ても嫌悪を示さない』
エルランドたちは村の居心地の良さに惹かれて、
しばらく滞在することにした。
『エルランドさん、村を案内しますね』
そういうのは、エルランドたちが助けた獣人の娘、
ジーナとフランカだ。
フランカはジーナ専属の護衛のようだ。
彼女たちは、人族なら最低数日は安静が必要な怪我だった。
ところが、治療した翌日には完全回復していた。
治癒力が非常に高い。
村は何族ということはなく、いろいろな獣人族がいた。
猫族、犬族、羊族、兎族……
どうやら数百年前に王国に追いやられて、
この地に封印されたようだ。
ただ、少なくともこの地では獣人の自治が約束されていた。
それと、目を引くのは獣人族の見栄えの良さだ。
いろいろな獣人族がいるのだが、
押し並べて美男・美女である。
特にジーナは目を引く美しさだ。
『噂には聞いていたけど、獣人族の美しさは素晴らしいね』
『評判以上かもしれませんね』
『目移りしそうでやんすね』
大人3人の呑気な感想をよそに、
エメリは珍しくすねていた。
『あら、どうしたの、エメリ。ひょっとして妬いてるの?』
『エメリが一番可愛いことはみんな知ってるよ?』
『そうでやすよ。獣人族のみんなもエメリをチラチラ見てるでやんすよ』
『エメリちゃん、すっごく可愛いよ?』
そう獣人族のお姉さんも褒めてくれる。
これはお世辞でもない。
確かにエメリは獣人族に引けを取らないばかりか、
この村に来てからは、光輝いてさえ見える。
『エメリはなんだかオーラが出てる気がするね』
『なんでしょう、前よりも魅力的になりましたね』
『えへへ』
ああ、機嫌がなおったらしい。よかった、よかった。
エルランドは獣人族を間近に見たことがあまりなかったが、
改めて見てみると、人族との違いはほとんどない。
特徴的なのは、いわゆる猫耳だ。
頭の上に、突起物が2つ出ている。
これが先祖の特徴を受け継いでいるのだが、
ただの飾りではない。
耳の機能プラス気配探知をここで行うのだ。
獣人によって差はあるが、範囲20m~50mの範囲で、
生き物の位置を探知特定する。
すべての獣人に備わったスキルだ。
また、瞳の色が青い。
つまり、彼らには魔力が発現している印だ。
この世界の人族・亜人・獣人・動物は、
等しく魔力を帯びると目が青くなる。
ただ、魔力の使い方は身体強化にのみ使われるようだ。
属性魔法のようなものは使えない。
彼らの武器は、まず格闘技。
それから、剣・槍・弓である。
格闘技は、格闘系の祝福を受けた人族を上回る。
その反面、遠距離攻撃は弓ぐらいで概ね不得手である。
集団戦闘も得意とは言えない。
獣人族が人族に追いやられてきた原因である。
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