追放された長男①
【追放された長男①】12歳春
エルランド。
それが彼の名前であった。
カルマール王国アベニウス伯爵家の長男である。
髪はブルネットでこの世界の標準であるが、
目はオッドアイ。
右目は青みがかった灰色、左目は青色だった。
『おお、生まれながらにして青色の瞳を持つ子よ』
『よくやった。慶賀だ』
生家では期待で盛り上がった。
この世界では、子供の瞳は通常灰色である。
教会で『祝福』を受け魔力が発現すると、
瞳は青色に変化する。
魔力が発現しないのなら、瞳は灰色のままだ。
そして、魔力が発現するのは100人に一人ぐらいだ。
エルランドのように生まれた時から瞳が青い、
それは大変めずらしい。
先天的に魔力が発現していることを意味するからだ。
『長男が生まれながらにして青色の瞳。お世継ぎ問題は解決しましたな』
この国の貴族は、最低限、魔力の発現が必要である。
つまり、目の色が青色であることは必須であった。
『後は英才教育を施して、より立派な後継者を育成せねば』
周囲から多大な期待がかけられたエルランド。
まさしく祝福された子として、エルランドは育てられた。
エルランドもその期待にこたえるべく、
勉学や剣等の武術の修練に励んだ。
そして迎えた祝福の日。
全国の教会で12歳になる子供に祝福が授けられる。
『エルランドには何色の祝福がくるのかな?赤色か紫色か』
祝福のときには不思議な現象が起こる。
授かった職業に応じて、様々な色の光に包まれるのだ。
例えば、赤色なら武道系、神官系なら紫色といった具合だ。
祝福は、人の一生を決めると言って良い。
その祝福にそったスキルが爆発的に成長していくからだ。
例えば、剣士の祝福を授かると即座に剣スキルが発現する。
しかし、庶民的な祝福、例えば村人の祝福を得たものは、
毎日厳しい修行をしたとしても、
剣スキルを得るのに10~20年前後かかる。
剣スキルが発現しない人も稀ではない。
貴族は目の青さ、つまり魔力を帯びるのが最低条件。
教会にも多額の献金をして、優位な祝福を得ようとする。
特に、武術系、僧侶(魔法)系の祝福ならなおいい。
赤色か紫色の祝福に包まれ、目が青色になる。
これが一般的に貴族で望まれる祝福だ。
軍で活躍することがこの国では最大の栄誉となるからだ。
もちろん、頭脳も優秀であるにこしたことはないし、
実際に出世するのは頭脳の優秀なものである。
仮に軍人であっても、脳筋ではなかなか上には行けない。
が、前提として武術系か魔法系の祝福を得ることが必要だ。
なお、武術系でも魔力が発現する。
魔力による身体強化がなされるからだ。
教会では一ヶ月をかけて、この祝福の日を執り行う。
人々は教会に予約を入れる。
予約日が来たら本人とつきそいが教会に向かう。
エルランドは領主であるアベニウス伯爵家の長男である。
さすがに、伯爵専用の日が設けられた。
『エルランド、ネクタイは曲がっていませんか』
『兄上、ドキドキですね』
『お兄様、私は金色が来てほしいですわ』
『勇者とか?チェルシーよ、それは大変だぞ』
金色は特殊系の職業だ。
国の興亡を支えるような職業の色とされている。
代表的なのは勇者、聖女、賢者などだ。
『無駄口叩いていないで、教会へ行こうか』
アベニウス家はこの日のために豪華な馬車を誂えた。
同行するのはエルランドの両親、弟、妹、護衛の人々だ。
教会は白くて新しく豪奢な建物だ。
領主の館と双璧の建物である。
教会に入れるのは家族だけである。
教会で家族の見守る中、儀式が始まった。
教導師は白絹の上質な仕立ての布地に
金糸で繊細な刺繍の入った服を着ている。
教導師は他教での神父や司祭に相当する。
領地の教導師はふくよかで恰幅のいい人物であった。
満面の笑みにも慈愛がたっぷりと含まれている。
一目で富裕層出身であることがわかる。
エルランドはいよいよ教導師の前に立つ。
教導師が白くて装飾過多な杖を振るう。
すると周囲が白く光り始めた。
そして、キラキラとした星がエルランドに降りかかる。
『金色の光だ』
エルランドへの期待が膨れ上がる。
エルランドに授けられた祝福は。
『魔石』
?初めて聞く名だ。
レアな祝福であることは間違いない。
何しろ、金色の祝福だ。
アベニウス家の面々は戸惑いを覚えつつ、
それでも精一杯の笑顔でエルランドを迎え入れた。
『よくやったエルランドよ』
『金色の祝福だね』
『そうよ、私の望む色。お兄様、きっと素晴らしい祝福よ』
アベニウス家の面々は口々に祝いの言葉を投げかける。
アベニウス家にはギスギスとした人間関係はない。
エルランドは両親から愛されて育ったし、
弟や妹とも親愛の情を持って接している。
しかし、そんな幸せの日々も長く続かなかった。
15歳の誕生日の日。
父親の書斎に呼ばれたエルランドはこう告げられた。
『エルランドを廃嫡する。今後、アベニウス家の名を名乗ることは許されない。明日、この家から出て行きなさい』
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