女神だって恋がしたい!
皆様、初めまして。ご機嫌よう。こんにちは。
私、自分で言うのも烏滸がましいですが…金髪碧眼の痩身麗躯、才色兼備、頭脳明晰、慈母のような優しい笑みが人気の、神界でもそこそこ名の知れた──女神の一柱に、御座います。
名はテレーゼ。【転生】と【召喚】の権能を授かっております。
権能──とはなにか?……。そうですね…、あなた方人間にとっては「職業」…に、当たるでしょうか?職務上の肩書き…【身分】が<転生の女神>で、職業…神にとっての職業こそが【権能】…そのように思って結構です。あまり難しい事を言っても理解はされないでしょうからね、ええ。
…ああ、誤解無きように。神界では地上のように無職でも生きていられるほど安くはないですから。
神の世界は常に日進月歩。下からの追い上げは常で、完全実力主義。100年も経てば上位神が下位神…どころか場合によっては新神にその役職を獲って代わられる…なんて事もざらではありません。人間の…、牽いては【世界】を管理・維持&運営していかないとならないのが──我々“神々”です。
創造神が無能でも部下が優秀であればいい…なんて言って胡座を掻いていると直ぐに頭がすげ替えられるのもまた神界あるあるですわ、皆様。
神の仕事は多岐に渡ります、と言いますか…【冥界】【天界】【精霊界】【神界】【星界】【魔界】【惑星界】(※あ、皆様人間が主にいるのはここですね、地球はその内のひとつです。)──この世界と世界の狭間に【虚無界】があるのですが…そこは何もない宇宙空間…のようなモノ…いえ、人間が気軽に行ける“宇宙空間”とは違って普通人間は訪れない場所です。勿論神でもあまり訪れない場所です。
だって──何もないですから。
その空間…或いは【場所】は人間では辿り着かず、例え辿り着いても何もないから数秒と持ちません。無重力無酸素無色素…本当に何もない。
色は訪れる神によってその時の気分や体調、眠いや寒いなどの体感でも変わって一つとして同じようには視えない。──そう、視えないのです。人間の瞳には。そこはゴミ箱のようにも使われておりますし…ね?
人間だって汚れますでしょう?その時風呂に入るや、トイレに行ったりして汚れを取りますよね。
……。
……はい、そうです。狭間にある【虚無界】は…神がその身に溜まった汚れや穢れを捨てる場所…正直言って対してメリットもないが、神にとっては必要なもの…そんな位置付けですね。
何もないからこそ──存在しうる世界。
時には神の荒ぶる怒りや哀しみ、恨み辛み、嫉み…そう言った“感情”をも受け止め霧散させる…そう言った場所です。
虚無界で物が壊れても感情が壊れようとも──其処は壊れない。消えない。不変の場所。
閑話休題!
私、<転生の女神>テレーゼは癒し系美女なんですよ~?そろそろ私だって恋がしたい!
……おっと、次の方がいらっしゃいましたか。
【虚無界】は何もない所ですが、何でも受け止め許容する…それでいて一瞬後には何も残さない──“転生”を司る私としては非常に有り難い職場でしょう。
「…ようこそ、○○○○さん。あなたの魂は地球から乖離しました。……ええ、ええ。そうです…それであなたはもう地球では生きられません。──選びなさい、○○○○さん。別の世界で記憶を保持したまま生き直すか、記憶も何もかもを消して全く別の人間として生きるか。……そうですか、記憶を保持したまま…でしたらこの4つ選んでください。一つは中世ヨーロッパ風の世界で剣と魔法がある世界、一つは科学技術が発展して人々は上級民と下級民に分かれて分断された近未来地球のような世界、一つ剣も魔法もないが、精霊術のある世界、一つは中世ヨーロッパ風そのものの世界……そうですか、剣と魔法の…。」
魂が選んだ場所に魂を送ります…ああ、このとき依怙贔屓だとか特別待遇はしませんよ?神側から頼るくらいなら現地人…敬虔な信徒…、神官や巫女に神託を卸してどうにかしてもらいます。
気軽に“俺TEUEEE!”なんてやって管理している同朋に迷惑が罹るのはいけないですから。
送る世界も当然その人間の魂の色を視て、経歴を見て、死亡原因を見て最終的に判断した上で呼んでますから。
虚無界と神界、また惑星界とは流れている時間の間隔が違いますからね。…そうですね、惑星界「地球」の100年が神界の1時、神界の1時間が虚無界での1秒…ですね。大体。
またこれはあくまでも目安であって時空の風の荒れ方によってはまた若干2000年擦れたり、50年進んだりしますね。…ああ、地球に流れる偏西風…そのようなものですよ、たぶん。
いえ、転生には関係のない権能…知るわけないじゃないですか。
あなた方だって別に誰でもがひよこのオススメがぱっと分かる訳ではないでしょう?
知識で知っているだけであって原理は知りません。時空間で流れる風…それが時空の風。以上!!
原理も原因も知りませ──ん?それじゃない…??
私は豪奢なティーセットの置かれた丸テーブル、プリンセスラインの椅子に座って紅茶のカップを傾ける。
「ようこそ、○○○○さん。あなたは……女尊男卑の世界に送ります。黙りなさい、この女の敵が──ッ!そんなに女性がお好きなら、女性が敬われ反対に男が虐げられる世界でその老いさばらえたその肉体のまま転移なさい!……知りませんよ、身から出た錆びでしょうに!──ッ!……。良いからとっとと行けッ!!」ゲシッ!
…ん?優雅に茶をシバいている私と…あの“転生の間”っぽい場所で目くじらを立てて魂を蹴り上げている私…どちらが本体なのか──って?
……。
……さあ、どちらでしょうね?うふふ。
温暖色で纏めた畳10畳くらいの部屋…丸テーブルと今座っている椅子の他に朱塗りのふかふかなソファ、落ち着く調度品、絵画、壺がほどよく置かれた私室。…虚無界にある私の仕事場兼プライベートルーム。隣は寝室と風呂がありますよ、ちゃんと。
神は産まれた時から神なのです──嘘です、そんな真に受けないで下さいよ~。
正確にはキャベツ畑から産まれる──ああ、ごめんなさい!謝ります、謝りますから…ッ!!
こほん。
私、独神(※独身の神の略語)なのですよ!……知ってた。
転生の女神となって早300年…ん?それ以前は……美の女神を権能にしておりましたね、ええ。(僅か10年で下からの追い上げ食らいましたけど)
……寿退社、出来ると思ったのですがねぇ~…。はあ。男。男。男。殿方。雄。…何でも良いですから結婚したいです。…えっ、恋がしたい…とかの話しじゃなかったか…って?
……。
…言いました。確かに…!(※題名からして煩悩駄々漏れ)
美貌も頭脳も申し分ない。性格だって──×…………うん、悪くなかった…と、思う……よ?……。
子供好きだし面倒見が良い上料理も掃除も洗濯も得意。
子供神に料理を教えたり魔法を教えたり、絵本読んだり…ハープの演奏は下手な演奏家よりも上手いのに。…彼氏は居ても『結婚しよう』と言ってくれる猛者はいない──。
何故でしょう?
詐欺敬語だから?
「こんの○%※&×%※※;:°がッ!!貴様はゴキブリになって100回記憶持ち越しで死ね!このド屑が…ッ!!なーにがハーレムか!貴様がやったことは全て犯罪じゃない…ッッ!!【冥界】で既に閻魔たんの裁き受けた後なのは分かってんのよっ!こンのド腐れ男ーーッッ!!!××聖也なんて巫座袈た名前偽名にして!恥を知れッッ!!」
…この魂は自宅の地下に家に招いた女の子(全て未成年)を薬で眠らせている間に地下室に一人ずつ繋いで首輪と手枷足枷させて囲っていた。
隙を見付けて逃げ出そうとした女の子を犯しながら首を絞めて殺したり、それを見て怯える女の子をその場で犯して嫌がる女の子を無視して膣内射精するわ、公開出産と称して陣痛に苦しむ姿を撮影されるわ、SNSに挙げるわやりたい放題。取っ替え引っ替え犯してまわった挙げ句この魂に殺された女の子は1500人、最終的に地下室に囲った女の子の総数は3000人。内半数は死後出産…そのまま死んだ赤子が100人、胎児のまま亡くなったのが1400人…生きてはいるものの、×原聖也を恋人のように…また夫かご主人様のように慕っている女の子が大半で残りは茫然自失だった。
女の子達は××聖也が招いたり浚ったり口説いた女の子。前者は兎も角後者は進んでこの魂の夜の相手になっていたようだった…本当に人間の屑だ。
【冥界】…人間が地獄とか呼んでいる世界…場所。黄保比良阪、黄泉の国、三途の川の先…あの世。そう、“あの世”である。
実際は【冥府庁】と閻魔王──…“閻魔たん”含む十冥王が管理する行政機関でしかない。街はあれど利用者は鬼と冥府庁関係者のみ。
ここで魂は精査され、淘汰され、区分され、どの地獄に落ちるのか…はたまた人道…惑星界へと人間として戻るのか否かを測られるのだ。
閻魔たんの前で如何なる謀りも如何なる嘘も如何なる偽りも通じない。
“見た目がかわいい”からって油断するのはいつも三途の川を渡ったばかりの初見亡者だけである。ほんとかわいい…合法ロリ──…あ、いや…。今期の「閻魔王」は見た目小学生…でも中身は大人──と言うか大概の神は長寿であるけど。
見た目(外見)と中身が一致しないのは。
「…………………はぁ~。出会いがない…もういっそ人間の男でもいいから合コンしてこようかしら?…今度の休みに。」
このプライベートエリアにはテレーゼ以外誰もいない。
決められた時間、決められた期間を“来世”へと送る──それが【転生】の権能を司った「神」の仕事。
八百万の神と言うほど神々は多種多様であり、人間のような容姿、獣がそのまま二足歩行したような者、なんか知らないがやたらとピカピカしている存在や、反対に全身ぜんまい仕掛けと言うか…やたらと機械っぽい見た目の神もいたり、反対にスライムやドラゴンのような形をしている神もいるのだから──【転生】を権能にしている神はテレーゼ以外にもいる。それはもう腐るほどに…!
…特に【惑星界】は広いし多いですからね~。
日々生まれては消える惑星もあるくらいでして…ま、それはおいといて。
「思ったが吉日!」とも言いますし。幸い(?)にして次の休暇は20年後です!早速下界渡航許可申請出しておきましょう…!!
…………ん?
随分と気が長い…って……?
そうかしら??
寧ろ“早い”と思うけれど。
…………??
……。
ああ~~…。
“人間の”感覚では20年は「長い」んでしたね……。
いや、うっかり♪テヘッ☆ミ( v^-゜)♪
私「女神」からすれば……20年は…2日?くらいの感覚ですね。はい。
………………。
………………。
………………。
……いや、そんな呆れないで下さいよ~?あはは…。
「…合コンの結果?────フッ!」
5人の男性と約束したよ…!フフンッ♪♪\(^o^)/ワーイノシ
…いや、死んだ後の話だけどね~。(O ̄ー ̄)
「神」と「人間」の恋愛はどちらかがどちらの世界──この場合私と彼等(合コンで色好い返事をくれた大学生4人組と社長1人)は彼等の死後魂を引き上げて、改めて私の伴侶となるのかはたまた別人として輪廻転生するかを選択──。…まあ、最悪一人だけでも捕まえてみせる…っ!!
……彼等が正しく「私」を女性として愛してくれるかどうかは…。60年~80年後に分かることよ。
化身を下界(地球にしたわ)に派遣して台場で観覧車乗って昼間の東京を眺め表参道でブラブラしたわ。楽しかったー!
雷門を一緒に潜ってお参りして御守り授けて貰って~映画観たり東京湾の綺麗な夜景を眺めておしゃべりしたわ。
いや~楽しかった!彼等とのデート。……長く下界には居られないから間の記憶は彼等の中で眠らせちゃうけれど。
──次下界に化身で降りられるの…300年後だからねー。流石に人間は死んぢゃう。てか死んでるわ、普通に。
「…婚約者のようなものよ!彼等が三途の川渡って閻魔たんに審査され私の所まで来るの楽しみね」