入学式
今日は入学式当日。
貴女は少し落ち着かない気持ちで、辺りを見回した。
(いや、見回さない。オレは床だけを見てる)
壇上では生徒会長が新入生を歓迎する挨拶をしている。
燃えるような赤い髪が一際目を引く、堂々とした佇まいの青年だ。
(確か宰相の息子だっけ?名前は……カイン)
(妹がいたよな。ええと、カト……)
物思いに耽っていた貴女は突然沸き起こった歓声に、はっと意識を引き戻される。
新入生を代表して挨拶している彼は、輝くようなアッシュブロンドのすらりとした青年だ。
テノールのよく通る声が会場を支配していく。
(この国の王太子、ユリウス殿下。文武両道で人望に厚いという設定だけど、どの辺がアネキの地雷だったんだろ?)
(確かさっきの生徒会長の妹と婚約していたはず……)
貴女が思わず見とれていると、一瞬、王子と目が合った気がした。
『き、気のせいよね?私なんかを王子殿下が気に留めるわけないもの……』
(ああ、気のせいだ。オレは前の生徒の後頭部しか見ていないからな。王子と目が合うことはない!)
入学式の興奮冷めやらぬ様子の新入生達は思い思いの言葉を交わしている。
田舎から出てきたばかりで未だ友人のいない貴女は、ひとり廊下を歩いていた。
すると、前方から歓声が沸き起こり廊下に沿って人垣が出来た。
突然開けた道に貴女が驚いていると、一際目を引く男子生徒たちがやってくるのが見えた。
『あ、あれは王子殿下。後ろのおふたりはご友人かしら?』
微笑を浮かべて新入生達の挨拶に答える王子の後ろには、長身で短い栗色の髪に黒い瞳の青年と、神経質そうな黒髪の青年がいる。
黒髪の青年はその長い前髪から覗くルビー色の目を眇めて貴女を見た。
貴女は慌てて王子一行に道をあける。
(危なっ、目、合ってないよな?)
貴女は王子たちを見送りながら、突然の邂逅に胸を高鳴らせていた。
(あれは、騎士団長の息子と魔術師長の息子だったな。)
(イベントが容赦なく進んでいくな……)
(さてと、レベル上げいくか)




