ウチのアネキ
『アンタ、ちょっと肉まん買ってきなさいよ』
小腹が空いたらしい我が家の暴君が小銭をオレの額に貼り付けてのたまった。
だが、コタツから出たくないのはオレも同じ!
断固拒否させてもらおう。
しかしここで問題がひとつある。
オレはガキの頃から、この邪知暴虐のアネキに逆らうことが出来なかったのだ。
つまり、オレは口だけの抵抗をした後にすごすごと近所のコンビニに向かうしかないということだ。
オレより三つ年上のアネキは、所謂オタクと呼ばれる人種だ。
新作のアニメや漫画、小説、ゲームはだいたい把握しているといっても過言ではない。
広く浅く、そして気に入ったものには異常なまでにのめりこむ。
それがウチのアネキだ。
資金や睡眠時間をどうしているかなんて……恐ろしくて訊けない。
まあ、アネキの趣味をどうこう言うつもりはない。
ただ問題なのが、必ずといっていいほどオレを巻き込むことだ。
今は何故か乙女ゲーの攻略を命じられてしまっている。
『茨の月と宵闇の少女』
恋愛もののわりに随分暗そうなタイトルのそれはアネキが途中でさじを投げたやつだ。
一週目の攻略キャラの王子がお気に召さなかったらしい。
このゲームは攻略キャラと一緒になりゆきで復活した魔王を封印する、というストーリーだ。
何だよなりゆきでって。
このゲームは魔王を封印した上で攻略キャラと結ばれないとグッドエンドにならない。
どんなに攻略キャラの好感度を上げようが、魔王の封印に失敗すればバッドエンドだ。
魔王を封印するにはフィールドやダンジョンでモンスターを狩ってレベル上げをしなければならない。
しかも、一週目の攻略キャラは王子固定。
そう、主人公とほとんど接点の無い王子固定。
魔王が復活するまでにレベルを上げようとすれば王子の好感度が上がらないし、王子を追いかけるとレベルが足りずにバッドエンド一直線。
なんでこんなに難易度上げた?
本来アネキはこういったシビアなゲームは得意なほうだ。
ただ、王子が地雷だったらしい。
そんな感じで放っておかれたゲームをオレがヤル破目になったのは、アネキが攻略サイトで変な噂を見たからだ。
曰く、魔王を倒すトゥルーエンドがあるらしい。
ただ、誰もまだそのエンディングを見ていない。
『魔王を倒してみたい。でも、王子ルートうざいからアンタやんなさいよ』
ああ、理不尽だ。
ホント、理不尽。




