魔王の娘 2
「……ん?」
そこで俺はふと何か引っかかって、落ち葉をはらう箒の手を止めた。そしてアイツの名前を復唱する。
「マオ…マオ……マオ……なんか引っかかるな」
その名前をどこかで聞いた気がする。だが思い出せない。
マオ……マオ……マオ? 俺は何かを忘れている。
………俺の…せいだ…
ノイズのようなものが走る。やっぱり何か引っかかる。俺は確かその名前を、どこかで、身近に––––
「…んで、どうするよ?」
しかしその思考はすぐに断ち切られ、俺は半開きの扉を見つけた。そこから小さいが、確かに声が聞こえる。
気にする必要はないはずだが、俺はその扉の横に立ち、耳を済ませた。
「……だから、あの魔王の娘ですよ兄貴!」
なるほど下克上か。俺はよくあるトップ争いについてだと考え、関係ないと持ち場に戻ろうとした。
「ああ、『マオ』様なら策はある」
足が止まって俺は振り返る。あいつ、今なんて言った?
俺は再び壁越しから声を拾う。
「確かに魔王の娘なだけあって力はあるがな」
なんだよ、あいつ超お偉い様の娘かよ!? 俺は今までの言動に流石に目眩がしてしまった。
いや、死刑とかは願ったりだけど、ほら、ここで言う娘って、もはや《王女》じゃん。奴隷が王女にタメ張ったって、もう目眩だけでも軽すぎるよまじで。
そりゃ俺のこと知らなくても仕方ない。確かおっさん曰く「半年近く引きこもり」だから。てかその引きこもり王女が出てくるとか、そして俺の前に来るとか普通考えないだろ? 俺間違ってないし、あいつが正せばよかったんだろ?
頭を抱え、俺は今後どう会話しようか考えていた。いや、もう会うべきじゃないよな?
「––––だから、身篭らせて喰うんだよ」
「……は?」




