魔王、胃を掴まれる。 3
「おかわり!」
……はじめに言っとくと、今日も来やがった。
しかし今回は魔族にしては親切に、俺の分まで未調理の食材を持って現れた。曰く「材料渡すから飯くれ」だと。まあ魔族にそこまで悪い印象はないから断る理由はない。むしろ一番嫌な餓死を回避させてもらえるなら俺は別に問題ないのだが、しかし俺の料理って店に出すレベルじゃないんだが………。
……それに昨日は気付かなかったが、こいつがいるとどうも俺は他魔族に邪魔されないようだ。なんか朝から見てたが、遠くから方向転換する奴がちらほらと。
そういう意味でもまあ悪くはないため普通に作ってやる。
「おかわり!」
「おい、俺の取り分まで取るなよ!」
……ぬかった。てっきり俺の分とかいうから半々と思っていたが、こいつ遠慮なく食うから俺四分の一しか食ってないんだけど。
まあ慣れてるから腹に入っただけ感謝してはいるが、もっと慈悲が欲しかった気もする。
「ご馳走様でした」
俺は手を合わせて礼をする。それを見てそいつはキョトンととした顔をしていた。
「……あ、もしかして魔族に礼をする習慣はないってやつか?」
しかしそいつは首を横に振る。そして、
「作ったのは君。僕は持ってきただけだから」
「あー、そういうことね」
何となく理解し、俺はそいつの目を見ていう。
「いいか? お前が『その程度』とは言うが、それはお前の見解だ。そもそも『ご馳走様』『いただきます』は作った者だけでなく、その食材を育てたもの、そして食材となった生物全般に––––なんだよ」
なんかだんだんとジト目度が上がっていた。いや『ジト目度』ってなんだよ?
「……なんとなくわかったけど長い」
まー、こんな長ったらしい話は俺みたいな物好きでもなければ聞きたがらないな。てか同い年くらいのガキに言っても仕方ないか。
俺は咳払いを一つする。
「……まあ、俺からすればお前は神様……いや、魔界だから『魔王様』ってくらい頭が上がりそうにない事をしたってことだよ。だから、さ」
俺は頭を下げる。
「うまかった。俺がもらえる食材って魔族だからってのもあったが、それでもそこまでいい物じゃなかったんだよ。お前に食われたのだって、それ以上に俺が納得してない味でうまいうまいなんて言わせてさ……だー! だから今度も持ってきたら感謝して超旨いやつ考えてやるから! だから今日はありがとな!」
結局長くなったが俺は心から感謝する。
話した通り、あくまで『残飯』だったやつをギリギリ口に合うようにしただけの料理だったのが、今日はこうしてまともな飯を食う事になった。それは全部、あんな料理でさえ俺を評価してくれたコイツのお陰だったし、こうして喜んで食ってくれると、久々に誰かに褒められて嬉しい。
最後に食べてもらったのが両親だから、尚更だ。
するとソイツはボーッとして、今度はボンッと音を立てるように急激に赤くなり、そしてどっかへ駆け出していた。




