魔王、胃を掴まれる。 2
最初に言っておくと、早計だった。
戻ってきた俺は久々に足を崩すほどの絶望を目の当たりにし、なんか悲しくなった。
ローブのガキが、俺の飯を平らげて幸せそうに寝っ転がってたのだ。
俺はそいつに目もくれず、あたりの料理に食い残しがないかを探したが、なんと言うことか骨しかない。流石に骨は食べれない。
ローブを着ているため種族は不明だが、まあ魔王城にいる以上『魔族』に変わらないだろう。俺はがっくしと肩を落とし、食堂を遠目で見る。
シェフがちょうど、片付けを終えて寝ているのが見えた。つまりもう食べ物はないと言っているようなもんだ。
仕方ない、俺は腹が鳴きそうだが仕事に戻ることにした。
たまに食いっぱぐれる事はあった。そう言う時は仕事して夢中になって忘れるのが一番だ。
夜、俺はまた料理した。今度はさらに食い残しを拾い集めたから、まあかなり汚いが、死ぬのは悪くはないが、餓死だけはしたくないため俺は諦めて料理してごまかすことにした。まあ口付け部分は捨てたが。
半日ぶりの料理に俺は手を合わせる。前の世界では両親に指摘するほど食事時はしっかりしてた俺はそれをしないと落ち着かなく、そして肉を喰らう。
「……塩っぱさが」
そこでふと思い出し、俺は林に駆け出した。
「いやー、この草を焼いて砕けばいい塩に」
と上機嫌で暗闇から焚き火のそばに戻った時、二度目の光景に足を崩した。
「……またかよ」
そうまた、ローブのガキが幸せそうに横になっていた。昼間再び戻ったときにはいなかったのに……。
流石に堪忍袋の尾が切れた。
「……おい」
俺はそいつの前で仁王立ちし、目を釣り上げて怒りをあらわにする。
「お前、俺の飯を朝も夜もとりやがって。餓死させる気か!」
するとそいつは座って、そして理解していないのかきょとんとした顔をしていた。
「………」
「おうおう、俺の飯はうまかったか?」
残飯食ってまで嫌がらせしたいのか? 魔族は食えればなんでもいい種族だ。
だが、そいつはニカッと笑い、
「美味しかった!」
と言った。
意外な反応に俺はたじろぐと、フードを脱いでさらに驚いた。そいつは人間の顔をしてはいたが両端から二本の小さなツノはあり、そして女だったことに。
頭を抱える俺に不思議そうに見る少女。俺は怒りもすっかり忘れてしまって、
「……もーいーや」
とシッシッと手を振った。しかし彼女は一向にその場を離れるそぶりを見せず、俺はハテナを浮かべる。
「……もう飯ねーよ。今度は食材持ってくれば食わせてやるよ」
「……逃げたりしないの?」
「はあ!?」
なんともよくわからん質問に俺は声を大にしてしまったが、
「……流石に同い年っぽい、女に逃げる馬鹿はいねーよ」
と答えた。まあ大人の男でも逃げないけど。
すると何か考え込み、そしてまた屈託のない笑みを見せた。
「それ、何?」
指を差されて目線を向けると、その方向にあるのは俺の手の中の葉っぱだった。
「……飯だけど、お前買ったろ? あの中の肉にふりかけて食えば旨いが、単体だと毒だぞ?」
いや魔族に健康面の心配があるのかは知らないが、まあ塩分摂取なしすぎはのちに響くだろうからあえて渡さない。まあそれで滅ぼせるならこの世界はヌルゲーな気がするが。
「……わかった!」
そういい、そいつはどこかへ駆けていった。
「……何だったんだよ」
俺はそう吐き捨てて道具をしまう。ああ、ここ2、3日は食えるかと思ったのに、またしばらく空腹かと心で嘆いた。




