魔王、胃を掴まれる。 1
「ユウマ〜!」
おっさんはズルズルと参謀さまに連れてかれ、俺も仕事をひとまず終えたので食堂に足を運ぶことにした。
一応人肉もあるようだが、まあ好き嫌いはいかんな、と心で言い聞かせて厨房に声をかける。
「すみません、残飯ないっすか?」
「……げ、人間の坊主か」
すごく嫌な顔されたが、奥に引っ込んで何か持って現れた。
「おら、ミノの残りもんだ」
「あっいいんすか!」
まさか今日も人肉でなかった強運に喜ぶと、シェフのオークがまた嫌そうな顔した。
「残飯で喜ぶ奴なんてお前以外見ねーよ。……あんま変なの渡すと魔王さまに殺されるからな」
「そんなことないだろ?ただの人間のガキ殺したってきっとな」
「……お前は少しは自己評価を見直せ。……ごめんだぜ、死刑は」
そして話す気も失せたとばかりにシッシッと手を振られ、俺は外へと走り出した。
城の一角、外の角で俺は原始的に火を起こす。
父に教わったサバイバルの基礎と、普段両親が料理下手で代わりに作ってたことから身についたスキルで肉を焼き、そこらで試した薬草等でできた調味料で下味をつけ、そこらで生えた草花を盛りつけたり焼いたりする。
食堂に俺の居場所はない。ほとんどの魔族は人間を嫌い、唯一の楽しみにしてた食事をよく邪魔されるからこうして外にでて食べるようになった。
まあ、虐めるくらいなら殺してくれればいいのに、と思うのだがなー。
そうこうしていると肉は焼け、俺は食事の準備を終えていた。
「さ、食べるか!……っとその前に」
終わったと同時、俺は謎の尿意に負けて林のほうに駆け出す。まあ残飯に手をつける奴なんていないだろうと思ったし、荒らされてたって食べるけど。
そんな決意と共にトイレを済ませに行った。




