汚れ仕事
「……さて、と」
「おう、やるか?」
「そうでしょ? 流石にここからは大人の仕事みたいなものさ」
予知できてなかったわけではないが、現に何体か同胞がやられてしまった。その落としまえ、つけなければなるまい。
私は目線を合わせるように座る。
「やあやあご機嫌よう異世界の勇者諸君。……随分と面白いことしてくれたね?」
「ひっ!」
二人ほど声を上げた。まあ一人はすでに声など上がらないだろうけど。
「さて、君たちを送り込んだのがおそらく《異端審問会》で、間違い無いな?」
三人はコクコクと頷く。
「……あーだめだベン、こいつら多分知らないわ」
「だろうな。本当の信者は必ず一度は否定するからな」
「はあ……もういいや」
そう呟き、私は手を三人に向ける。
「君たちは我が子達に対して害だ。………先に地獄で待っているといい」
「……その真面目さをもう少しあの子達に見せれば好感を持たれるのにな」
ベンは呆れ半分に片付けをしながらいい、つい笑ってしまう。
「無理無理、私はこれでいいのさ。……少なくとも私は、尊敬などされたいと思わないからね」
「ほう、その心は?」
「簡単さ……あの子を魔王にさせたいわけじゃないからさ」
「……それではあの子は、マオは色々な者から狙われ続けるだけだろ?」
「大丈夫さ。そのために、私はユウマに会わせたのだからね」
そういいカツカツと歩を進める。
魔王の因果にはあらゆることがある。そして、その因果にマオを、ユウカを、巻き込むつもりはない。
この因果はこの代で、私で終わらせる。愚かだったら先代をはじめとする魔王とは違う道を選ぶため、その道をあの子達に示すため、私は汚れ役をいくらでも買える。
なあ、愛しき妻よ。私は今、ちゃんと父親できているか?




