女難
「おやおや、大変だったようだねー」
「おせーよおっさん」
三人一応息はあり、バクを起こして縛り上げて置いたあたりで魔王が帰ってきた。
「ったく、この城セキュリティどうなってんだよ」
「ははは、耳が痛いねー」
呑気に話しやがってと思っていた時、クロがヒョコヒョコって現れた。表情は変わらないが、なんか、なんとなく喜怒哀楽がわかりやすい気がする。そして今は少しソワソワしていた。
「おや、これはあのヘルウルフかい?」
「おう。クロって言うんだ!」
「へー、名前をつけたんだねー」
「……なんか引っかかる言い方だな。なんか知って––––なんだよ」
クイクイっと袖を惹かれて振り返ると、なんか犬耳がピコピコって動いていた。
「……あー、そのだな」
なにを要求されているのかはわかっていた。だが、冷静に考えると流石にちょっとなー……。
くいっ。
「…いや、まー、そのなー」
くいっ。
「あーえーその」
「ユウマがここまで困るのは初めて見たなー」
そりゃ困るさ。だってその要求は……思春期手前とはいえちょっとなー。
「ゆーうーまー!」
「おうなんだ!」
逃げるようにして振り向いた俺は、さらに面倒だと理解した。
「あのねー、ボク、撫でて欲しいなーって」
「……は?」
「いやさー、ボク今日頑張ったじゃん! だーかーら、撫でてよー!」
とすりすりっと頬を当ててくるマオに俺はとっさに避けてしまった。
情けない。同い年のガキになに考えてんだ俺。
「ねーねー」
くいっ。
両方からの要求に、俺は––––
「よしバク! これから城三周だ!」
「わかりましたアニキ!!」
こういう時素直なバクに感謝して、俺は全力で走った。
結局のところ、狼と魔王にただの走りで勝てるわけはなかったが、俺たちはただ、走ったのだった。




