魔王少女×黒狼少女
「……ユウマ!」
ユウマの背後に、縛っていたはずのあの男がナイフを持って、今にも振り下ろそうとしていた。
「させないよ!」
そして邪魔なテイマーの猛攻に、自身がまだまだ弱い存在だということをようやく実感していく。
経験が足りず、あらゆる動きに対応できていない。
「ユウマ、起きて! ユウマ!!」
あまりにも無力な自分に絶望する。いま、彼は殺されそうなのに、手が伸ばせない。届かない。
「ユウマ! ユウマ!!」
愚かだった。ユウマを守って戦えると驕った自分が、結局、彼を守れていないじゃないか。
「ゆうまー!!」
ユウマの背後に、ナイフが––––
「やらせない」
_________________________________
マオが彼を叫んだと同時、僕はスルッとユウマから抜けて彼の背後のナイフを手で止めた。
「……!?」
「へ?」
驚愕する男二人と、変な声を出したマオ。
僕はそのナイフを握り砕いた。ちょうど、ユウマが僕を見るタイミングで。
「……お前、クロなのか?」
「君がそう名付けたなら僕はクロだよ?」
僕は男を回し蹴りし、男は勢いよく飛んでいく。
彼に振り向いてようやく実感したけど、目線が違っていた。
手を見たら、まるで人間のような形の中で、爪は鋭く、出し入れできるようになっている。太くも細くもできた。
足も人間みたいだった。だけどなんとなく狼の時みたいに早く走れる自信があった。
胸は………まあマオと互角かな?
「おま……マジで別人なんだけど!」
立ち上がったユウマは目線が一緒だった。それが、今の僕らの距離でもある。
僕はユウマを抱きしめた。
「ちょ、クロ!?」
「……守るよ、ユウマ」
僕は心から思うことを続ける。
「守るよ、絶対。……君を泣かせる全てを殺して、ユウマを、マオを、守るよ。…僕を救ってくれた恩返しを、一生をかけて」
「救ったって、俺、何もしてねーよ」
「ううん……君は僕の誇るご主人様だよ」
彼は少し困った顔をしたけど、今度は頭をポンポンとして、
「……だったら、女の子の前で泣く無様を晒し続けるわけにはいかないか」
僕らは離れ、ナイフの男を見る。
喉はやられたまま、ただナイフで戦うことしか考えていない。
「……僕に任せて」
そういい駆け出す。
男は大振りにナイフを振るが、明らか悪手。
僕は渾身の蹴りをぶつけると、そいつはナイフどころか腕を吹き飛ばしていた。
声が出ないからこそ叫ぶ声すらならず、そのまま僕はそいつの頭にかかと落としをくらわせた。
_________________________________
「……残るはあなただけ」
ボクは目の前の男に向ける。
まさかクロが人化するとは思わなかったが、何よりこれでユウマへの危機はさり、ボクはこの男と決着をつけないといけないようだ。
「ならもう一度テイムすれば––––」
とかざす手を蹴り飛ばそうとしたが、その前に何かに弾かれたかのようにその腕は上に跳ねた。
「なに!?」
「……僕の主人はユウマだ」
無表情なクロが、すでに男の背後に回っていた。
そして同時に、ボクとクロがなにをするか、互いに理解した。
「……いくよクロ!」
「……やるよマオ」
互いに拳を握る。そして––––
「『インパクト・ナックルウウウウ!!』」
「『コクロウケン』!」
互いの拳が輝き、瞬間で展開された防御魔法を貫通し、腹の部分を挟み撃ちこんだ。




