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魔王と勇者に憧れた者  作者: ヨベ キラセス
二部 魔狼編
36/40

叫びたい言葉は…… 3

 しばらく廊下を駆けると、見知った背中が見えた。

「あ、アニキ!」

 バクだ。そしてその向こうにさらに一人、今度は人間だった。

 よく見るとそのさらに後ろには何体か魔族がいたのだが、見た感じ味方には見えない。

「……あいつがビーストテイマーか?」

「いえ、私じゃないわ」

 女は無表情で答えたけど、その視線がマオに行った時、少しだが頬が緩んだ。

「…よかった。あなたは無事だったのね」

「…敵に心配される理由ないんだけど」

 マオは手をかざして警戒する。するとさらに口元が緩んだ女は興奮気味に言うのだった。

「いえ大切よ。あなたは私の人形さんなのだからね!」

「うわー、なんか口走ったぞこいつ」

 俺もそうだが、バクも、何よりマオさえも引いた。え、なに? あいつ頭おかしいの?

「さ、貴方達、そこのガキ殺してあの子を連れてきて」

 そう言い放つと、後ろの奴らは一斉に襲いかかってきた。が––––


「『バクエン』」


 躊躇いなくマオは魔法を放つ。辺りの魔族は一掃され、女の方はとっさに守った魔族の壁で軽傷だった。

「……あ、あなた、仲間を躊躇いなく」

「何かおかしいこと言うけどさお姉さん」

 マオは黒ずんでいく目を向けたまま、その深淵が見えそうな瞳で、

「ボクはユウマがいればいいし、ユウマだけ守れればいいの」

 そう告げる。傍らのバクは「つまりついでで守られたんですね自分……」っとなんかガクッと肩を落としていた。

「……ふ、フフフッ」

 しかし変わらずその女は抑え気味に笑って、そして––––


「私の力は『魅了』よ! さあ、私に従いなさい!」


「ダメです二人とも! あの人の目は––––」

 そんなバクの言葉が届く前に、俺とマオはその目を見ていた。

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