意外な特技
「……!?」
何か木が燃えるような臭いがして俺は飛び起きる。
まさか襲撃か、と辺りを見回すと、花畑のある木の下でマオが焚き木の上で何かやっている。よく見ると鍋をかき混ぜていた。
「…魔女の実験か?」
「違うよ! …ってユウマ起きたんだ!」
ニコニコと笑みを見せるマオと、隣には犬もじっとその鍋を見つめている。
「てか、マジで何やってんだお前?」
「料理!」
「……ワッツ?」
斜め上の答えに俺はつい英語で聞き返してしまう。
鍋の中にはいくつかの野菜があり、食堂で見覚えがある小瓶を数個持って、それを混ぜたりして、あらかじめ焼いていた豚の薄切り肉を入れ、出来たのは……
「……カレーじゃねーか」
いくつか足りないものはあるが、その味はまさしくカレーだった。だが、俺はここまでの再現は出来ていない。
「おい、これどうやったんだ?」
「あー、森の奥の『迷いの森』の霧がかかるところの付近に生えてたのを、ユウマが前にいっていた内容をもとに似た物を混ぜてみたんだ。…あ、ちゃんと味見したし、人間でも食べれる食材しか使ってないから!」
「いや……お前」
俺は感極まりマオの頭に手を乗せる。
「よく覚えてたし、お前スゲーうまそうなの作ったじゃん!」
実際、おそらくだがマオが行った場所は流石に俺が入らない領域だっただろうし、そもそも少し前に何気なく愚痴った事をこいつは忘れずに、参考もなかったはずなのに有る食材で作ってみせたのだ。
「あ、わるい」
と手を退けようとしたが、マオは手首を掴み、
「……撫でてよ」
と、ほおを赤くしながら言うのだった。
「お、おう……」
斜め上の言葉に拒否しようかと思ったが、今回のことは別に悪いことでもないし、実際それ以外の事で俺が出せるものがあるかといえば、無いのだから。
生まれてこの方、誰の頭も撫でた事ない俺は、情けないほどぎこちなく撫でていると実感するが、マオの表情は笑みを見せているので少し肩の力が抜け、だんだんとまともに撫でられるようになったと思う。
ある程度満足させた後食べたがマジでカレーで、しかも悔しいことに、なにも知らないはずの彼女が作ったとは思えないほど、人生の中で一番に美味かった。まあ、そこまでは口にしなかったけど。




