「宿敵」をトモと呼ぶ 1
「……」
俺を始め、オッサンも、オーク親子も絶句しながら目の前の光景を見る。
俺は手で顔を覆い、ついため息が長く出てしまった。
「…誰がそんなに持って来いって言ったよ?」
それはいつもの一角に収まらず、庭に山となって積まれた豚の山だった。しかも同じのが二つ。
犬も、マオも、互いに息が荒く、マオに至ってはかなり汗をかいていた。
「……ふ、ふふふ、ふふふふふ……僕の勝利だ!」
すると犬はワワン、と鳴いた。おそらく否定だろうか?
「…そう、まだ諦めないの? ならもっと僕が捕まえてくるだけだ!」
ワワン、と意見が合ったらしい。てか俺、地味に犬の心読めてるかな?
しかしその量でまだ動こうとする二人(?)に、
「やめんか!」
俺はチョップした。
「いいかお前ら、ただ取ってくればいいってもんじゃないんだぞ? その命に感謝し、最高の料理にして食べられるところを食べ切ってこそ供養にもなるもんだ」
こいつらを座らせ、俺は命の尊さを教える。まあ魔族に不要かもしれないが。
そうして数十分話していると、ベンが現れ、
「お前ら飯だ。……ユウマ、お前本当に恐れ知らずだよな?」
「ま、死にたがりだからな」
「その一言で魔王の娘や幻獣を説教って、お前ほんとすごいな」
なんか呆れられたがまあいい。
「……まった、ベンさん今なんて言った?」
「だから命知らずだって」
「そこじゃなくて、こいつをなんて言った?」
俺は犬を指差し、そこで何か理解したベンを始め、何故かマオも苦笑いしていた。
「いやだから『幻獣』って言ったんだよ。そいつは幻の黒狼で、名称は《ヘルウルフ》で、過去千年近く存在が確認されず、絶滅すら囁かれたくらいの幻の生物だぞ?」
「…………マジ?」
その日のベンの料理の味を、俺は覚えていない。




