魔界の犬 2
「……何というか、ユウマらしいなー」
珍しく2日明けてマオが顔を表したが、なつかれた犬を見てそう口にした。
「なんだよ開口一番」
「…それよりご飯は!」
考えていたことを数秒で忘れ、マオは俺の隣に座って今か今かと俺を見る。なんか尻尾がブンブン振ってるように見えてきたのは、ここ最近この犬と一緒にいるからだろうか?
だが、俺は申し訳ない感情を持ちながら、
「…用意してない」
「…………え?」
だいぶフリーズしていたマオが最初に発したのはその一言だった。
実は数分前、俺の飯はこの犬に分けていたため本当に俺の分しか用意してなくて、2日ほど来てないしとタカを括っていたのだが……それが裏目に出た。
当然マオは、涙目で俺の肩を揺らす。
「なんでなんでなんで!!」
「ゆーらーすな馬鹿! 吐く! マジ吐くから!!」
マジで腹から登りそうになる内容物は、ギリギリで解放されて回避された。
「うっぷ……マジ勘弁してくれ」
「ゆーまーー!作ってよ!」
「分かったからちょっと待てって!」
このままじゃ今度は吐かされるまで揺らされそうなので、俺は仕方なく準備する。
「……てかお前材料持ってくるのが条件だからな?」
「ふっふーん! これを見てもそう言ってられるかしら!!」
と今度は意気揚々に何もない空間に手を突っ込んだ。……こいつ時々忘れそうになるけど魔王候補だったな。
「じゃーん!」
と高らかに取り出したのは『シャドウピッグ』だった。
「どーお? 最近そこらで繁殖されていてねー、僕頑張って取ってきたんだー!」
と、自慢げに鼻高らかに話すが……正直少し困った。
「……なに?」
マオが目を細めた。ヤベッ、ちょっとまずいスイッチ触れたかもしれない。
「いやー……お前ほんとすごいな!」
「素直に褒めた………なに隠しテイルノ?」
「失礼な」とは思ったが、その言葉を飲み込むほどの何か寒いものをマオの周りから感じて後ずさる。
すると、いつのまにかそばにいなかった犬が、それを持って現れた。
「シャドウビックピッグ……ははーん、この犬っころは僕に喧嘩を売ったんだね?」
待て、と言おうとしたがその前に、犬はフン、と鼻を鳴らしてなんか挑発していた。
「うがああああ!! だったら勝負!!」
そして二人(?)は、それぞれ森の方に向かって走って行ったのだった。




