魔界の犬 1
「………」
……拝啓、親愛なる父と母へ。魔界に来て多分半年、それなりに快適な暮らしをしています。
どうしてか人間で異邦人な俺に、魔族の王である『魔王』が親戚の叔父さんみたいに優しくしてくれます。すごくうざく感じる時があります。
さらには最近、その娘である『マオ』と言う女の子がよく俺の掃除の邪魔をします。せめてタックルして登場するところは直して欲しいと思っていますし、そもそもあまり話しかけないでほしいし、俺の食べ物つまみ食わないでほしいし––––
そして日に日に俺の周りに魔族の人達が声をかけてくれるようになりました。まあ大半は今なお俺を邪魔とする存在ばかりですが、最近ではシェフの息子『バク』と言う細マッチョになってしまったオークと仲がいいです。……なんか、日に日に強くなってるし、裏で俺を持ち上げる立場にあるって噂で、ちょっと、いやかなり困ってきました。
そんなこんなありますが、今日もなんとか生きています。最近生きる理由もでき、まだ二人のところに行けないけれど、どうか見守っていてくれると嬉しいです。
あと最近………ペットができました。
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「……」
今日も曇天だが、この世界的には晴れなので俺はいい点を無理やり見つけながら元気に肉を焼いて………いたんだ。
……………。
「……そろそろ焼けるかなー」
何気に初めて、俺はあの有名な『漫画肉』を再現している。狩りゲーよろしく、回して。
「…じょーずに焼けましたー!!」
と天に掲げてみる。あ、ちょっと面白いかもしれない。
…………。
ひとまず皿に乗せる。ちなみに今日の肉は俺が猪っぽい奴から狩った肉。ま、俺も日々進化しているのさ! ……九死一生だけど。
…………。
「いっただっきまー…………すって一人で食べ切れないから食うか?」
と、先ほどからじーっと座ってみている黒い犬に、俺は肉を前に置いてやる。何というか、遠くから見ると影みたいな犬は、しかし少し唸って警戒される。
そいつは俺が離れた時に食べた。どうも警戒しているようだが、俺、多分負けるぞ?
「……うまいか?」
そいつは犬みたいな見た目だった。てかまんま犬だった。
そいつは「わん!」と一吠えしまた食べる。
あまりにがっついて食べるため、なんかかわいそうに思えて俺は自分の分を半分に切って、その片方をまたその犬にやる。意外にもそいつは俺を見て少し困ったような顔をしたので、
「気にすんな。俺がまた取ってきて勝手に食べるから食え」
と皿まで近づく。
てっきり噛むか逃げるかすると思ったが、それは静かに座って、俺が置き終わるのを待って食べた。
「……鶴の恩返しか、わらしべ長者か?」
夜、そいつはオークじゃない方の大きな黒豚を咥えて引きずりながら現れた。




