嘘吐きと、天性的な信者 2
「……こ、これって」
俺が出したのは鶏肉だった。そこらで生息していた、鶏と思われる鳥の肉。
それをサッと茹で、ある程度下味をつけて、そして出した。
「そうだ。まずは朝昼晩、これを食え。あ、豚とか牛とかではなく必ず鳥の奴な」
「あ、あの、これには何が」
「試練だ!」
「……わかりました!!」
そういい、彼は肉を食べた。
「こ、これはどういう事ですかー!!」
「いいから走れ!!」
食べ終わって今度は走る。ただ、普通に走るのはあれだったため……。
「まーてー、ゆーうーまー!!」
昼に俺が作ったデザートを隠されてご乱心な魔王様(娘)に追われるオプションをつけていた。てかあいつ、羽はやして飛んでんだけどズルじゃないのか!?
「ははは、両方に追いつけたら隠し場所話してやるよー!」
「ひえーー!!」
「腕立て、腹筋、背筋、スクワット、それぞれ1000回終わりました!」
「え、まじ––––いやよくやった! 今度は『シャドウボクシング』だな!」
さっきからでまかせ言っているのに、このオークは全く不思議にも思わずに自分を鍛えている。てか『シャドウボクシング』じゃないだろ、なんか蹴りとか入ってんだけど。これ反則じゃないのかな?知らんけど………。
「実に面白い事してるねユウマ」
「……心臓に悪いから横からいきなり声かけんな」
「ははは、失礼したね」
と、横で腕を組む魔王に、俺は呆れつつ現状を話す。
「……本当に、君は面白い男だな」
「まあ、死にたがりがそうそういてたまるかって話だしな」
「全く。程々にしたまえよ」
そういい、背を向け手をヒラヒラとして城へと入って、
「……そうそう」
そこで一度足を止めて、
「……マオが、後ろの正面にいるよ」
と今度こそ部屋へと入って行ったのだった。
「……マジかよ」
そして俺は、明らか頭のあたりにヒシヒシと伝わる怒りの視線に、目を向けられずに、魔王の跡を見るだけだった。




