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魔王と勇者に憧れた者  作者: ヨベ キラセス
余談編 壱
23/40

嘘吐きと、天性的な信者 2

「……こ、これって」

 俺が出したのは鶏肉だった。そこらで生息していた、鶏と思われる鳥の肉。

 それをサッと茹で、ある程度下味をつけて、そして出した。

「そうだ。まずは朝昼晩、これを食え。あ、豚とか牛とかではなく必ず鳥の奴な」

「あ、あの、これには何が」

「試練だ!」

「……わかりました!!」

 そういい、彼は肉を食べた。




「こ、これはどういう事ですかー!!」

「いいから走れ!!」

 食べ終わって今度は走る。ただ、普通に走るのはあれだったため……。


「まーてー、ゆーうーまー!!」


 昼に俺が作ったデザートを隠されてご乱心な魔王様(娘)に追われるオプションをつけていた。てかあいつ、羽はやして飛んでんだけどズルじゃないのか!?

「ははは、両方に追いつけたら隠し場所話してやるよー!」

「ひえーー!!」




「腕立て、腹筋、背筋、スクワット、それぞれ1000回終わりました!」

「え、まじ––––いやよくやった! 今度は『シャドウボクシング』だな!」

 さっきからでまかせ言っているのに、このオークは全く不思議にも思わずに自分を鍛えている。てか『シャドウボクシング』じゃないだろ、なんか蹴りとか入ってんだけど。これ反則じゃないのかな?知らんけど………。


「実に面白い事してるねユウマ」


「……心臓に悪いから横からいきなり声かけんな」

「ははは、失礼したね」

 と、横で腕を組む魔王に、俺は呆れつつ現状を話す。

「……本当に、君は面白い男だな」

「まあ、死にたがりがそうそういてたまるかって話だしな」

「全く。程々にしたまえよ」

 そういい、背を向け手をヒラヒラとして城へと入って、

「……そうそう」

 そこで一度足を止めて、

「……マオが、後ろの正面にいるよ」

 と今度こそ部屋へと入って行ったのだった。

「……マジかよ」

 そして俺は、明らか頭のあたりにヒシヒシと伝わる怒りの視線に、目を向けられずに、魔王の跡を見るだけだった。

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