嘘吐きと、天性的な信者 1
「オッス!」
「……なんですか?」
床を磨いているとき、やけに邪魔が入る。俺いい事しているはずなんだが?
そうしながら後ろを見て、俺はすこぶる嫌な予感を感じていた。
「な、なんでそんな顔するんですか!」
「……お前、先に聞いとくけど『オーク』だよな?」
「そうです!」
なんと清々しい声に、俺は頭を抱える。
見た目は俺と同い年だが、特徴的な豚鼻のそいつはキラキラした目で俺を見ていた。
「……あのさ、この世界の奴らは同胞殺しの奴に本当に何も思わねーのか?」
「いや、あのオークは別ですから」
キッパリと言われ、俺は言い返す言葉を失って床磨きに戻る。
「悪いっすけど俺も仕事があるんで、用事があるなら後にするか、気に食わない俺を殺すかしてもらってからでいいですか?」
「なんでそうなるんですか!?」
まあ、死にたがりですから。
俺は床を磨く。無心に。
数分後、俺はビックリするほど早く終わっていた床掃除に、横で雑巾を持って笑うオークに目をやる。
「……綺麗好きって感じじゃないよな?」
「はい!自分部屋はそこまで綺麗じゃないです!!」
「いや威張って言われてもなー」
俺はしばらく考えながら掃除道具をしまう。正直このままじゃいつまでついてきそうでなんか嫌だったから。
片付け終わり、ひとまずお引き取り願うべく、俺は彼の要件をひとまず聞いてみることにしてみた。
「……舎弟?お前が、俺に?」
「そうです!」
何度聞いても頭にすんなりと入らない謎展開に、俺は今一度一から聞き返す。
「……えーとだな、俺はあのオークを倒した」
「そうです!この国にない力でドカーンって、私すごく心にガツンときました!!」
なんとも脳筋的な言葉だな。一人称『私』なのに。
「……それで、数人のオークを戦闘不能にした挙句、頭を倒したって事が、弱肉強食的に俺の立ち位置を変えるほどの凄さがあった、と?」
「そうです! さらにはあの魔王の娘のマオ様と婚約関係にあるとか!」
「その最後は出まかせだ!」
何度言えばいいんだ。
どうも最近俺はそこまで注目があるようで、あれだな、普段怖くないのに怒らせると怖い系立ち位置に置かれているようだ。いや、ただの『粉塵爆発』で、しかも完全ボロボロでよく称えるなー、ほんと。
……いや、六歳児で大人に勝てる地点で俺おかしいのか。
「……わかった。なら俺の試練に耐えられたら舎弟でもなんでもしてやるよ」
「本当ですか!!」
目の色を変えたそいつに、俺はため息と共に不適の笑みを隠した。




