すぐには変えられない日々 2
「……どーもー」
「…おう、坊主か」
食堂に入るとオークのシェフ『ベン』が厨房から姿を現す。
俺は正直同族を殺したことでさらに悪い印象を与えて、もう何ももらえないかもと思ったが、普通に、むしろ厨房に上がる事を許してさえくれた。
「……おじさんは、俺を恨んでないのか?」
また板で料理を刻みながら、俺は後ろで仕込みをするベンに尋ねた。しかし返事はなかった。
「いや、さ。俺、おじさんの知り合いかもしれないひと……オークを殺したんだし」
「別に『ひと』でもいい。いちいち言葉を気にするな」
俺は驚き振り返ると、仕込みを終えたベンが椅子に座って一服しながら俺を見る。
「……確かにお前のいう通り、実のところ腐れ縁だ。……だが、正直あいつはいずれ報いを受けるとは思っていた。あいつはそういう奴で、俺からすれば人間と大差ないぐらい気分が悪い奴でもあったさ」
「そう、なのか」
「ああ。だから気にするな坊主。……それより、お前が今使っているのはなんだ?」
「あ、これは––––」
そこから一切話題に『アイツ』の事は入らず、料理にて意気投合した俺とベンは、これからも厨房で互いの技術を高める事を約束して出た。
あの人は……ベンは料理にすごく真面目に向き合うひとで、そんな人に認められたと思うと、俺は嬉しくなってしまった。まあスキップとかしてはいないけど。




