すぐには変えられない日々 1
「……ゆーまーー!」
「揺らすなバカッ! おちおち落ちるッ!!」
変わらず俺は上を掃除すると、マオが俺の梯子をぐらぐら揺らす。
「マジ、やめ、やめろ、おま、ふざけるなよ!」
「あーそーぼー、あーそーぼー!」
尚もグラグラされ、ふと、俺の手は梯子から離れていた。
「……ぎーやーーー!!!」
ゆっくりと頭が下に向かい、そして足も外れて真っ逆さまだった。
「……ご、ごめんユウマ…」
「ま、マジで死んだかと思った」
心臓が久々にかなりバクバクいっている。こんなに早くなるのは両親がダークマターを作ろうとした時並みだ。……あの日は二人の笑顔、スッゲー怖かった。
まあ結局のところ、運よく通りかかったオッサンがうまく襟首をキャッチしてくれて一命を取り留めた。
そして今の危うさを理解してか、マオは静かに座って、オドオドしながらも時々目を向けては、そらす。
「……ユウマ、君は相変わらず掃除かい?」
「ああ! やっぱり部屋の乱れは心の乱れだからな!」
「……それ、暗に私の心が乱れてるって言いたいのかい?」
「言ったら殺したくなる?」
「……相変わらずはその心もかい」
なんか呆れられたが、俺はひとまずおっことした雑巾を拾い上げ、
「んじゃ」
と去ろうとしたが、
「……離せ」
裾を、マオが掴んで離さなかった。
「はーなーせ」
「………」
「はーなーせーよ」
「………」
「……ハァ」
先ほどので強く言えないが、だからといって遊んで欲しいんだろう。
一応引っ張るが外れず、少しして俺が折れた。
「……わーったよ、せめて道具はしまわせてくれ。外で待ってろ」
「……うん!!」
ようやく離したマオは、それからスタタタッとどこかに走っていった。
「セイシュンだねー」
「分かってていってる?」
「いや全然」
ニヤニヤと笑うオッサンも連れてって欲しかった、と切に思う、珍しく快晴な朝だった。




