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死にたがりの矛盾 4
「…く、くくく……小僧、お前本当に勝てると思ってるのか?」
明らか勝ちを確信したオークは笑いを抑えきれずにいる。
そりゃ無い。俺は普通に体全体の悲鳴を押し殺して立っている。すでに立つことだって苦しいし、手に持つのはナイフ一本だし、粉塵爆発みたいな科学対抗ができないし。
だが、刺し違えるくらいなら可能性がある。俺はあえてそれに賭けるしかない。
「……はは、ないと思うならやってみろよ」
やっぱり死を覚悟していればこの痛みなど障害にならない。俺はそのまま駆け、距離を詰める。
「ははは! 馬鹿が!!」
しかし距離があっても届く相手の攻撃は早く、トラウマか火球ではなく氷柱。
俺はギリギリ頰に掠める程度に最小限の動きで避ける。だが、また氷柱が飛ぶかもしれない。
体勢が崩れる。
だが、まだ切り札はある。
刺し違える、とは言ったが、俺はそれをポケットから取り出す。
「…よかった。飛んだ拍子に落としてなくて」
握るのは拳銃。それを奴の頭に構えて即発砲した––––。
……俺は同時に、氷柱を体に受けた。